第3話 異世界での一日
とりあえず、まずはサシャの店の手伝いをする事になった
サシャの店は、昼は食堂、夜はプラス宿屋をしているそうだ
そして、今は昼の食堂を開いている
俺がフロアで、サシャがキッチンとカウンターだ
まぁ、俺の仕事探しはその後って事だ
それに、サシャには世話になったからな
「ユキマサさん~サボって無いで、ちゃんと働いてくださいね~」
おっと、注意されないように気をつけないとな
「それと、3番テーブルに料理運んでから、1番テーブルの片付けをよろしくお願いします!!」
「了解!!」
「サボったら罰金バッキンガムですからね!!」
いや、罰金バッキンガムってなんだよ!?
この世界には、バッキンガム宮殿は無いだろ!?
俺はそんな事を思いつつも、仕事もとい手伝いをしていた
そして、昼の1番繁盛している時――――――
―――――――――あの2人はやってきた
1人は筋肉質で大柄
火を付ければ髪を肩まで伸ばした醜男
片手剣を腰につけていた
もう1人は、チビだがやはり筋肉質
頭は磨けば光りそうな見事なハゲ男
こちらは背中に大剣を背負っていた
異世界だからヤクザでは無く、違う奴らなのだろうが……どちらにせよ物騒な奴らだ
その2人は千鳥足で店内に入ってくると、カウンター席にどっかり腰を下ろし大声で喚き始める
「おい姉ちゃん!!エールを俺様とこいつの分頼むわ!!」
「あぁん!?おい、このバルバリ様の事をこいつ呼ばわりしなかったか!?」
「そんなの知るかよ!!おい、姉ちゃん!!酒はまだか酒は!!」
「た、只今お持ちしますので、しょ、少々お待ちください!!」
2人の催促に慌てて返事を返すサシャ
……うるさい……酒臭い野郎どもだな……
営業妨害ってのを知らないのかよ!!
料理を運びながら内心怒っていると、客のナイショの話が聞こえてきた
「またあいつ等かよ……」
「え?またって?」
「おい、知らないのかよ?ハゲのグレンと醜男バルバリの2人組みだよ。最初はバルバリ1人だったんだけど、数日前からグレンを自分の酒盛りにつき合わせたら……あのざまだよ」
「じゃあ、誰かあいつ等になんか言わないのか?」
「できたらしてるさ。いくら言っても聞きやしねぇ!!しまいには殴ってくるしよ……強いんだよ……冒険者だし……」
「……お前……勇気あるな……」
ふ~ん、そういう事か……むかつくぜ!!
そんな風にますます苛立ちながら料理をテーブルに置いていると、酔っ払い達がまた何か騒ぎ出す
「マズイ!!このバルバリ様になんてのを飲ませるんだ!!」
「も、申し訳ございません!!」
「申し訳程度で済むか、バカ!!グレン様にこんなのを飲ませた事を後悔させてやる!!」
そういってハゲの方は大剣に、醜男は片手剣に手をかける
その瞬間、俺はキレた
俺はハゲ達へ近づくと、右手で醜男の髪を、左手でハゲの……髪は無いから襟首を掴み―――――
「後悔するのはお前らの方だ!!」
―――――店の外へ投げ飛ばした
「ぶっ!?」
「な、何しやがる!!」
「……さっきからうっせんだよ、この酔っ払いどもが!!」
「酔っ払い?!」
「誰が酔っ払いだこの若造が!!このバルバリ様が酔っ払いのはずが無いだろ!!」
俺はスゥーと息を吸い、一気に捲くし立てる
「いいや、お前等はれっきとした酔っ払いだ!!そんな事よりお前等、どうして追い出されたか分るか?営業妨害だよ営業妨害。つまり、あんた等は邪魔なんだ。消えろ!!」
俺が言い終わると、ハゲの方はうなだれ醜男の方は肩を落として震えだした
あ~スッキリした
ここまで言えば大人しくするだろ
俺がそう思ってると、醜男の方がいきなり俺に向かって殴りかかってきた
「うるせえ!!誰が邪魔者だ!!死ね!!」
俺の顔面をめがけて飛んできた拳を、俺は片手で受け止めた
「お、冒険者だけあってなかなか力るじゃねぇか」
「この!!くそっ!!う、動かねぇ?!」
俺は、何とかして動かそうともがいてる醜男の眉間をつつき気絶させる
「よし、これに懲りたらもう泥酔してくるんじゃねぇぞ。分ったか?」
「……了解した」
ハゲは、地面に伸びている醜男の両足を掴み引きずって立ち去ろうとして、立ち止まり俺に話しかける
「一言良いか?俺らは雑魚かもしれないが冒険者だ。一般人よりは強いし、お前みたいな若造には負けはしない。お前は何者なんだ?」
「……ただの手伝いだ。それ以上も以下でもない」
「そうか……迷惑かけたな」
ハゲはさっきまでの様子が嘘みたいに、大人しく立ち去っていった
「ユキマサさん!!」
店の中からサシャが出てきて、俺の目に前に駆け足で来た
「ありがとうございました!!おかげで助かりました!!」
「おう」
まぁ、俺が勝手にキレただけだから、礼なんていらないんだけどな
「けれど……あの人達、お金払ってないんですよ……」
「……それで?」
「はい。ユキマサさんが追い出したんですから、代わりに払ってくださいね」
「えっと……さっきのでチャラには―――」
「なりませんよ」
とニッコリ笑うサシャ
あぁ、早く仕事を見つけないとな……
俺はこの時しみじみと思ったのだった