エントリーNo2、模型でMAP作りたいテツノリーさん
「次の神、どうぞ!」
イライラしながら叫んだ俺の声に答えて、何も無かった真っ白な空間に大きな扉が現れた。
艶の無い黒地の上に重厚な金の装飾を施した扉が、ガラリと横に開く。引き戸かよ。
「我が名はテツノリー。現在管理している他の世界では『移動』を司っている。新しく作る世界をまるごと担当できると聞いてエントリーした」
例え悪意が無くても、運の悪い俺を変な異世界に送り込んでドタバタする様を見て楽しもうなんで、面白い玩具扱いする神の話なんか聞く気も無い。じゃんじゃん却下してやると思っていたのだが。
こつの自己紹介聞く限りでは、俺が移住したいって思う世界を提示できた神は、その世界の担当者になれるって事か。出世の為のプレゼンテーションでもあるのかな。神の世界も大変だ。
「余計な事言わずにさっさと君の設計した世界をアピールしてごらんよ?」
「はい!スミマセンデシタ超時空ゴッド創造神様!」
俺の後ろの方で腕組んでニヤニヤしている自称創造神が急かす。どうでもいいがゴッドと神ってかぶってるけどいいのか。
「えー。我が提案する世界はズバリ!『快適さを満喫できる』できる世界です!」
このテツノリーさんがその後熱く熱く語った所によると。
・世界は魔法無し・モンスター無しの平和な世界です!
・技術力は地球に近づけ、19世紀から20世紀前後の科学力を持っているのでトール君も安心!
・なにより素晴らしいのは公害が無い事!クリーンな世界をお楽しみください!
うん、ここまでは良い事だと思う。チート無双で勇者するよりのんびり不運の無い生活したいし。
「ファンタジーの世界って不便なんですよ!そのほどほどの不便さがイイって言う転生者もいるんでしょうが、やはり世界の端から端まで移動できる手段が無いと。
内陸地に居ながら新鮮な魚食べたり!米とか味噌の味が恋しくなったらいつでも買えたり!そういう便利さって、交通手段が発展していないといけないわけです」
便利な生活は良い。日本が引きこもって暮らしながらでも寿司食ってピザ取ってっていう生活できるのも、数々の電化製品と優れた流通があるおかげだと思うし。
「でも、道路。あれはいけません。化石燃料で車を走らせるとか、あれはどんな広い世界でもいつかは環境悪化で、便利さを不快さが追い抜きます。
そこで電車!道路とか車とかの存在しない歴史で街中、いや世界中に線路を張り巡らせます!神の力で火災も起きないし怪獣も来ないし、商業区とか居住区とかも適当でいいんで線路の周りは公園だらけにしましょう!」
それ、シム・○ティじゃねぇか。
「そしてトール君には『乗り放題』『撮影し放題』というチート能力を差し上げます!さぁここに用意した模型であなたの住む街を作って下さい!大丈夫!電車の運行ダイヤはこの管理神テツノリーが最高のバランスで作りますから!」
口から泡飛ばしながら叫ぶテツノリー。だめだ、こいつただの鉄道大好きさんだ。
グッと腹に力を込めて否定の意志を口から吐きだす。
『要りません』
ボッ!と通過する電車の風圧を浴びたかのように髪の毛が一気になびくテツノリーさん。
「なんで?!黄色い電車にも乗れるし、113系毎日眺めたりロマンスカーで小旅行楽しんだりもできるんだよ?!」
「電車に興味無いので」
後ろから一歩前に出てきたスーパー創造神が、どこからともなく降りてきた紐を引っ張る。
「はい、ボッシュート」
お約束通り、テツノリーさんの足元にパカリと穴があいて『なんで?!』の顔のまま真下に消えた。
「あいつ、剣と魔法のファンタジー世界に大陸横断鉄道作らせようとした前科があるんだ。蒸気期間飛び越えてその為に電気普及させる気だったらしい」
なんでそんな奴に移動とか司らせてんだ。大丈夫かファンタジー世界。
しかし、世界観は神が決めてアピール。俺にくれるチート能力も向こうで決める。それなのにMAPは模型で作ろうとか言い出すってのはなんなんだ。
最初に居た可愛くない非ロリは設定カードを並べてたけど。全部は神側で決められないのか?俺に少しは選ばせないといけないとか?
うーん、いまいちわからん。というか、俺このプレゼン大会の説明ロクに受けてないんだけど。