湯気の向こうの 未来…アンパンマンがいなくなった国
✦湯気の向こうの未来 ― アンパンマンがいなくなった国
---
インドネシアの子どもらぁがな、
笑顔で昼を迎えよるんじゃ。
政府が「無償給食」ゆう制度を始めて、
お金がのうても温いご飯が食べられるようになった。
けど現場じゃ、鍋の湯気の向こうで調理員さんがため息ついとる。
トラックは遅れるし、材料はギリギリ。
それでも誰かが言うんよ。
「この一皿で子どもが笑うなら、それでええんよ」て。
---
一方、日本。
豊かな国のはずなのに、給食センターが次々つぶれとる。
でも、誰もその事実を知らん。
ご飯は二口、唐揚げは一個、スープは薄い。
牛乳の紙パックがついとるだけ。
子どもが「おかわりしたい!」言うても、もうできんのんじゃ。
アンケートでは60%の親が「給食費は今のままでええ」と答えた。
つまり――親もお金がない。
キチキチで、生きとるだけで精一杯なんよ。
---
昔はちがった。
昭和の給食には“命の味”があった。
脱脂粉乳、肝油、クジラの竜田揚げ。
確かに美味しいもんじゃなかったけど、
アルマイトの器から立ちのぼる湯気に、
「ありがとう」の匂いがしとった。
透明の砂糖水に浮かぶフルーツポンチの日が、
最高のごちそうじゃった。
平成には工夫が加わり、栄養も味も花咲いた。
けど令和の今、1食150円で「本物を作れ」言われとる。
そんなもん、できるわけがない。
センターの人がよう言うんよ。
「この値段じゃ米も油も買えん。
教育委員会に言うても“値上げするな”の一点張り。
もうやっとれん」と。
だから――つぶれる。
---
しかも、無償化してる自治体ほど量が少ない。
安かろう、悪かろう、体に悪かろう。
子どもたちはお腹も心もスカスカで家に帰ってくる。
「腹減った、腹減った」言うてな。
それを見ても、親はスマホを見とる。
――これが、令和の食卓じゃ。
---
化学調味料は便利じゃ。
200分の1のコストで“旨味”を作れる。
でも、それは“偽りの味”じゃ。
本物の料理人が「作れ」と言われても、
カタカナの添加物でごまかすしかない。
知らん間に、子どもの体も脳も、
化学で支配されとるかもしれんのじゃ。
10年後、そんな子が大人になったら――
心の空洞を埋めるようにスマホに溺れ、
怒りっぽく、眠れず、考える力を失う。
笑顔の裏で、何かが壊れとる国になるかもしれん。
子どもは親の鏡じゃけぇな。
---
けどのう、世界を見たら
うまくやっとる国もあるんじゃ。
フィンランドじゃ、給食は“教育”の一部。
子どもらが配膳も片付けもして、
「食べることは生きること」ゆうて学びよる。
ブラジルじゃ、地元の農家と学校が手を組んで、
“地産地消”で心と野菜を一緒に育てとる。
ケニアでは、母ちゃんらが鍋を握っとる。
“Food4Education”っちゅう仕組みで、
家庭のぬくもりがそのまま給食になっとるんじゃ。
---
なぁ、考えてみぃ。
うまくやっとる国があるゆうことは、
日本にもできんはずがないんよ。
安さや効率ばっかり追いかけても、
愛の味は戻ってこん。
「この一皿に、愛はあるんか?」
――それが、本当の問いなんじゃ。
---
わしはな、67になって初めて気づいたんよ。
料理っちゅうのは誰かのためやのうて、
自分を整えるためにするもんじゃ。
スーパーの惣菜は高いし、まずいし、
もう“食べ物”やのうて“商品”なんじゃ。
だから、わしは自分で作るようになった。
玄米、生卵、めかぶ、納豆。
サブメニューはバナナ、低脂肪牛乳、豚肉、焼き魚。
野菜はファイトケミカルをようけ摂るために、
人参・玉ねぎ・じゃがいもを炊き込みご飯にしてじっくり煮込む。
すると、ご飯の中に野菜の旨味が染みて、
香りまでやさしくなる。
しかも玄米と大麦のベータグルカンで腸が元気になり、
“腸脳相関”で脳まで活性化する。
善玉菌が喜んで働き、気持ちが明るくなる。
---
血圧も血流も毎日チェック。
スマートウォッチが心拍も体温も教えてくれる。
チョコザップで軽く汗を流して、
血管年齢も見えるようになった。
食べた日と食べん日の違いを見ると、
「整う」ゆうのは外見やなくて、
心と腸がつながることなんじゃと分かった。
---
もしボケずに生き抜けたら、
それは“愛を込めて食べることが、人を若くする”証拠になる…
わしはそのことを若い人に伝えたい思うて、
『作家になろう』に書き始めたんじゃ。
小説なんて書いたことないけど、
気持ちで書いとるんよ。
---
給食の問題は、ただの学校の話やない。
“国の心”の話なんじゃ。
愛のない給食が、愛のない社会を作る。
愛のある食卓が、愛のある未来を作る。
孫を見れば分かる。
給食食べて腹減った言うのは、おかしい話じゃろ。
スマホでゲームしとる暇があったら、
まず子どもの顔を見ようや。
ほんまに、それだけでええ。
---
なぁ若い人よ、
今日ぐらいは台所に立ってみぃ。
包丁の音と、湯気の匂いが、
きっとあんたの心まで温めてくれるけぇ。
子は親の鏡じゃて。
じゃけぇ、まず自分の食卓を変えてみよう。




