文化祭編 1
さて、前回の終わりで、宿直室にエッチな本があったことが先生にバレてしまいました。
誰が宿直室にエッチな本を持ち込んだのかは、話題にあがりません。(そりゃそうね、どうせ男の先生のしわざなのだろうから。笑)
宿直室に勝手に入って、エッチな本を持ち出したのは誰かと言うのが、先生たちが突き止めるべき仕事となったわけです。
誰かって言えば、そりゃまぁ……わたくし?(爆)
写真を売っていたのが写真部だというのはすぐに発覚します。
このときすでに売買は行われていなかったわけですが、買った生徒の口の軽さから、犯行グループはすぐにわかり、写真部で関与していた生徒たちが呼び出され、そこからエッチ本を持ち出したのが、学校探索隊だとバレて、わたくしたちも呼び出され、みっちりと怒られました。
印刷室に一人づつ呼ばれて、例の「ケツを出せ」です。
わたくしのお尻は真っ赤に腫れあがり「痔になったらお嫁に行けない! 先生責任とってよね」と言ったら、「おまえみたいな悪い女はタイプじゃない」って言われました。(笑)
そんなこんなで、宿直室には鍵が取り付けられましてね。
自由に出入りできなくなったわけですが、わたくしが二年生になったある日のこと。
文化祭でクラスの出し物がビデオ映画の上映になったんです。
実行委員みたいのが数名選出されまして、わたくしもその一人に立候補。
クラスを半分にわけまして、二つのグループでそれぞれ映画を撮影して、それを文化祭当日に交互に上映するといった感じです。
こういうときのクラスのグループ分けというのは、だいたいみんな同じだと思いますが、仲良し同士が集まるものですよね。
でもってたいがいは、不良グループとそれ以外みたいな感じに分類されるものです。
わたくしは、けっこうな不良少女だったのにも関わらず、交友関係は不良じゃない生徒が多かったんです。(写真部とか生徒会とか吹奏楽部とかに縁がありましたからね)
そんなわけで、半分に別れたわたくしのグループに、あからさまな不良はいませんでした。
グループのリーダー格は、写真部のトモ君。
このトモ君、【中学女子の盗聴物語】にて、わたくしにマイクロレコーダーを貸してくれた命の恩人でございます。(笑)
トモ君は、監督、カメラマン、編集、その他総指揮。
わたくしは、シナリオ担当。(あと、口出し担当と、揉め事担当。笑)
あとほかに、吹奏楽部で一緒の活発でハキハキしたカナちゃん(♀)が助監督。
内気で気弱な美術部のシン君(♂)と、ロック大好きバスケ部のオグ君(♂)が、撮影スタッフ。(ていうか雑用? 笑)
この五人が中心でわたくしの書いたシナリオを主体に映画が作成されることとなったわけです。
最初はトモ君の持っていた8ミリカメラを使おうかと思ったのですが、フィルム代がとんでもないので、ハンディカムに。
ですが当時、ハンディカムを持っている人ってほとんどいませんで、わたくしのクラスでハンディカムを持っていた生徒は一人だけ。
先生が自腹を切ってハンディカムを購入し、生徒のハンディカムは、その生徒がもう一つのグループにいた子だったので、そちらで使用。わたくしのグループでは先生の最新式ハンディカムを使うこととなりました。
じつはこの二つのグループ。とっても仲が悪かったんです。
当初は全員で一つの作品を作る予定だったのですが、実行委員の提案に反発ばっかりする人たちが出てきて、話がぜんぜんまとまらなくってですね。
それで、その反発分子たちを別のグループの中心者にしたってわけです。
ですので、グループ間で協力したりとかはまったくなく、なにを作っているのかすら秘密にし合う関係だったんです。
反発分子たちは、さらなる提案として、ただたんに交互に上映するのじゃなく、どっちの作品が面白かったか、アンケートを取ろうと言い出したのです。
つまり、文化祭でわたくしたちのクラスを訪れてくれた人たちからアンケートを取り、どっちの評価が高いか白黒つけようぜってことです。
こうなると、負けるわけにはいかないわ! って血がたぎるわたくし。(笑)
トモ君と一緒に作戦会議です。
まず、シナリオを作る前に、相手がなにをするのか調べようってことになります。
盗聴大作戦をやってのけるわたくしとトモ君ですから、潜入調査なんて容易いものです。
反発分子のグループの子を買収して、スパイに仕立てあげ、情報漏洩作戦の開始です。(笑)
反発分子たちはどうやら、映画ロッキーのパロディをやる模様。
役者はほとんどがグループの中心核である反発分子の不良たちで、制作からなにからほとんどすべて彼ら反発分子で行い、大道具の制作とかだけにそれ以外のメンバーが参加するといった感じでした。
撮影は校外で行われるようで、試合会場だけは教室を使うということ。
リングは机を並べた上に装飾を施す程度で、グローブもトランクスも、紙を使った手製になるという話を、スパイから入手。
わたくしは考えました。
こっちもどうせ、お金をかけた撮影はできないし、素人が作るハリボテセットじゃ、リアリティが出せないのは向こうと同じ。
勝負は作品のストーリーと、もう一つ。
文化祭ってのは生徒が楽しむもの。観に来た生徒が出演している生徒の演技を観て、笑うってのが大きなポイントなんじゃないか?
というわけで、こっちは役者の選出に命を賭けました。
なにをどうしたかって言えば、演技が上手いとかは全く無視で、校内での知名度が高い生徒、異性に人気がある生徒、生徒会に所属していて、顔が知れている生徒、普段は真面目で目立たないのに、こんなことしちゃうの? ってギャップを作れる生徒、などなど。集客できる要素がある生徒を選出。
普段、真面目な子には笑いを生む役を与え、普段ふざけてばっかのお調子者キャラの子には真面目な役をといった具合に、ギャップだけを考えて配役。
さらに、観る人が知らないところで撮影するよりも、知っているところがたくさん登場したほうが面白いだろうと考え、撮影はすべて校内に限定。
職員室を多大に利用して、先生たちをたくさん写して友情出演させちゃおうって作戦にしました。先生たちのカメラを向けられたときの普段とのギャップもまた、笑いを取る要素としては大きいと考えたからです。
この作戦により作品のシナリオも決まり、校内をくまなく探索することを目的にした冒険ものになったわけで、役者にだっさいハリボテを着させて笑いを取るために、モンスターが登場するファンタジーになったわけです。
時間が20分くらいというショートフィルムだったこともあり、内容はいたってシンプル。
学校内で宝の地図を見つけた主人公がクラスメイトとともに、その宝を見つけるべく学校中を探索し、悪いモンスターを倒していくという、冒険ファンタジーです。
そしてこっちの目玉は、悪いモンスターのボス。
ボスには、体育教師で普段はとってもおっかない、剣道段持ちの先生を選出。
タフを気取ったおっかない先生が「うおー! やられたー!」って棒読みセリフでのたうちまわれば、笑いをもらうのは必至です。(笑)
もちろん、女子に人気のある生徒に主人公をやらせて、キスシーンを導入し(もちろん本当にはしませんよ)、女子の嫉妬を生むことも忘れません。(これは実際、かなりウケました。笑)
文化祭は9月後半。
撮影は夏休み中に行われることとなり、みんな部活との調整をつけながら学校に集まり、ワイワイ楽しく撮影が進みました。
夏休み中に撮影をするのには理由があります。
校内での撮影となるため、夏休みなら人が少なく撮影しやすい点。
それともう一つ、反発分子グループに情報を与えないためです。(ニヤリ)
予定通り、撮影は夏休み中にほぼ終了し、二学期からはアフレコと編集作業、職員室での先生たちの撮影くらいになりました。
そしてこの編集作業をするために、学校の視聴覚室を利用する予定だったのです。
視聴覚室には、編集に適したジョグダイヤルでコマ送りできるビデオデッキがいくつもあり、それを使って映像を繋ぎ合わせたいというトモ君の希望があったからです。さらに、アフレコをしなければならないわけで、外部の音をシャットアウトできる視聴覚室はまさに最適な環境でした。
ですがここで、問題発生。
反発分子たちが視聴覚室を先に独占してしまったのです。
わたくしたちのグループは不平を先生に申し出ましたが、けっきょくは編集用にビデオデッキを貸してもらえただけで、視聴覚室は使えませんでした。
そこでわたくしはまた考えます。
別の部屋が必要だなと……。(ニヤリ)
かくして、担任にお願いして手に入れたわたくしたちグループの編集室。
それが、例の宿直室だったんです。(ムフフ)
ここでまた、魅惑の宿直室で魅惑の事件が……。