表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

中学女子の盗聴物語

 中学1年のときでした。

 

 なんか、最近はあまりそんなことないようなのですが、わたくしの時代は部活の先輩ってヒトラーみたいな存在だったんですよ。

 先輩の数だけヒトラーがいるような、そんな時代でした。


 特に、女子の上下関係はおっかないんです。

 大奥とかドラマのなかだけの話じゃないし、大昔の話でもないんですよ。

 

 ほんの四半世紀近くまえでも、そんなノリの上下関係はあったんです。

 しかも、中学生でです。

 その年の3月までは小学生で、上下関係なんて先生とかの大人に対してだけしか考えもしなかった子どもたちが、4月になったと同時にたった1歳2歳しか違わない同じ中学生に対して、ヒトラーのような恐怖を抱かなければならないわけです。


 

 部活なんて、1年は先輩たちより早くに行かなきゃならないから、朝練とか超早起きで、学校の門が開くのを待ってたりしていたんです。6時ちょうどくらいに用務員のおじさんが門の鍵を開けてくれるので、それにあわせて登校するんですよ。

 

 そういうのって、運動部だけだろうって思っていたから、自分の部でもそうなのだと知ったときには、超ショックでした。


 

 で、わたくしは吹奏楽部だったので、男女混合で室内練習なわけです。

 部室の音楽室は3階の廊下の突き当たりにありまして、1年生は廊下に横一列に並んで練習しているわけです。


 するとそこに、先輩たちがやってきて、1年生が横一列で練習している廊下を音楽室へ向かって歩いていくわけですよ。


 

 するとあれです。

 


 挨拶。


 

 目の前を通り過ぎて行く先輩たち一人一人に「おはようございます」って言わなきゃならないわけです。まぁそりゃね、単なる朝の挨拶なら人間として当たり前の礼儀ですからね。

 いくら素行の悪いわたくしだって、それに対しては文句もないんです。(実際にわたくしが挨拶するかは別としてね。笑)



 でも、うちの部の挨拶は尋常じゃないんですよ。

 

 一人につき1回じゃないのよ!

 視界から消え去るまで「おはようございます」の連呼なわけです。


 米つきバッタみたいにペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコとね。

 

 

 しかも先輩たちはあとからあとからどんどんやってくるわけで。


 

 わかるでしょ?



 練習なんてしないでペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコペコしているだけなんですよ。



 ああそうか、だから朝6時とかに学校に行って、7時15分にならないとやってこない先輩たちが来るまえに練習するわけですね。(爆)


 

 もうね、学校内ならまだしも、これが休日に街中とかで先輩に会ってみちゃった日にはあなた!!


 大変なもんですよ。


 わたくしの住んでいたあたりじゃ、休日っていえばJR大宮駅周辺でショッピングとかが主流の中学女子ですからね。

 マックシェイク片手に、南銀をブラブラしているところに、先輩になんか出会ってしまったら、マックシェイクがこぼれる勢いでペコペコですよ。(マックシェイクがこぼれるってかなりなもんですよ! 爆)



 いつだったかなんか、映画館で出会っちゃってさぁ。

 映画館のロビーでペコペコペコペコよ。恥ずかしいったらありゃしない。



 わたくしはもう、そんなアホらしいことはやってられないし、ペコペコが上手くなるために吹奏楽部に入ったわけでもないので、ある作戦を決行しました。



 廊下の突き当たりにある音楽室ですが、その真向かい、つまり逆の突き当たりには美術室がありました。


 美術室は美術部が部室にしていたんですが、美術部なんてのは名ばかりで、アニメオタク同好会だったわけですよ。(笑)


 ミンキーモモ派とクリーミーマミ派とにわかれていまして、わたくしはクリーミーマミ派だったわけですが、そんなことはどうでもいいですね。(笑)



 アニメオタク同好会は朝練なんてやっていないので、勝手に職員室に行って美術室の鍵を持ってきて、勝手に開けてなかに入って、そこで練習することにしたんです。



 だいたい廊下ってのは、音が思いっきり反響するし、いろんな楽器の子たちが横一列に並んで練習しているから、自分の音なんてちゃんと聞こえないし、集中できないんですよ。



 ペコペコ大名行列の刑に処せられているほかの1年生たちを尻目に、とっても集中できる静かな美術室で練習しつづけていましてね。



 ほかの1年生なんかよりも、ずっと上達が早くって、顧問の先生にもほめられたりして、やったぜベイビー! ってなもんで、調子に乗ってずっと美術室で朝練していたんですがね。



 ある日美術の先生に見つかりましてね。(当たり前ですね。笑)



 そのまま職員室に連れていかれて、吹奏楽の顧問の先生にもこっぴどく怒られて、わたくしのパートのパートリーダーと、部長も呼び出されて、けっこう大変な騒ぎになったんですよ。



 で、「なんで勝手に美術室に入ったんだ」って先生たちに言われましてね。


「だって、朝から廊下に横一列に並んで、米つきバッタみたいに大名行列が通り過ぎるまでペコペコペコペコペコペコペコペコしていなきゃならないんですよ? それで朝練の時間なんて終わっちゃうんですよ? 先輩たちが朝練終わって自分たちのクラスに戻るときも、また同じようにペコペコペコペコしてなきゃならないんですよ? それじゃぜんぜん練習にならないからって、1年はみんな朝6時に学校に来ているんですよ? 先生それ知ってます?」って言ってやったんです。(なんでもはっきり言っちゃう子だったんです。若かったんですね。笑)



 たぶん、顧問の先生は知っていたんでしょうが、他の先生にも聞こえるように職員室中に響く大きな声で言ってやったもんだから、建前だろうけど「それはけしからん!」ってことになって、米つきバッタ禁止令が出たんです。(爆)



 そこまでは、まぁ良かったんですけどね。



 それが気に入らない3年生たちが、緊急部会を開きましてね。

 ほら、自分たちの威厳に関わるし、それまでやってきたことを先生に怒られた腹いせもあったんだと思います。



 放課後の部活の時間、音楽室に部員全員集合で、1年生全員前に並ばされまして。

 その日は、合奏がない日だったんです。

 合奏がないと、顧問の先生は部室に来ないので、そんな時に限って弱いものいじめの部会ってのは開催されてきていたんですよ。



「どういうことだよ!」とか、「自分たちの立場をわきまえろよ!」とかって、怖い女子の先輩たちから罵られまくるわけです。


 当時、わたくしのいた吹奏楽部は男女比が9:1くらいでしょうか。圧倒的に女子のほうが多かったわけです。

 吹奏楽部に入るような男子は秀才くんばかりだったので、おっかない女子には逆らえず、3年の男子が「そんなに怒らなくてもいいんじゃないか」なんて、気弱に言おうものなら、般若の面でもかぶったかのような3年女子が譜面台を投げつけるような、そんな状況だったんです。


 

 そのおっかない部会は下校時刻まで続きまして、1年の女子とか最初からずっと泣きっぱなしだし、問題の発端になったわたくしなんて、部員全員からにらまれてしまって「やれやれだぜ」ってなもんでした。


 

 で、先生がなんて言おうがこれまで通り米つきバッタでいろよと言うことで強制的に話がまとまってですね。


 部会も終わり、解散ってなったあとで、わたくしだけもう一回、美術の先生に誤りに行くことになりまして。

 部長と副部長に引き連れられて職員室へ。


 

 想像してみてくださればわかると思うのですが、美術の先生ってのは、普通の教員とは違って、ちょっと風変わりだったりするじゃないですか。

 あんまり体制的じゃなかったりね。



 米つきバッタ問題も、そんなのしないほうがいいって意見を言ってくれたのはその先生だったんですよ。


 

 うちの顧問の先生もそこにやってきたので、ああちょうどいいやと思って、ブレザーのポケットからマイクロカセットレコーダーを取り出しまして、再生してあげたわけですよ。

 

 

 え? なにをって?



 そんなのおっかない部会の一部始終をに決まっているじゃないですか。(爆)



 部長は男子でしてね。

 副部長は女子でした。


 そのマイクロレコーダーには、副部長が大映ドラマに出てくる不良少女みたいにドスのきいた声でわめいていたり、譜面台蹴っ飛ばしていたり、それ見て泣いている1年生の声とか、まぁまぁ落ち着きなよとか情けないこと言っている部長の声とか、みんな録音されているわけです。


 わたくしがたぶん、先輩たちをにらみつけていたんでしょう。

「なんだよその目は!! ぶっ飛ばずぞ!!」って叫んでる副部長の声が流れたところで、レコーダーを止めましてね。


「なんだこれは!」ってうちの顧問の先生が言うもんだから、「週刊誌にでも売りますか?」って言ったら、美術の先生は大笑しちゃって「よくやるなぁ」って。(爆)


 で、顧問の先生は「おまえらこんなことをやっていたのか」って部長と副部長をしかりだして、副部長が大泣きしちゃって大変でした。(笑)



 そのマイクロテープは、顧問の先生が没取するとかわけのわからないことを言い出したので、「ふざけんじゃないわよ!!」って怒鳴って帰ったんです。


 

 じつはこの作戦を発案してくれたのは、同じクラスの男子で、マイクロレコーダーもその男子のものでした。


 彼は写真部で、ナイトライダーが大好きで、メカに詳しい人で、父親が大手銀行の支店長でお金持ちだったこともあって、カメラもレコーダーもたくさん持っていましてね。


 そこそこいい男だったんですが、ただちょっと変態でして。

 休み時間とかに女子の会話とかをそれで録音したりしていたんですよ。(盗聴じゃんか! 笑)


 夏休みに、文化祭の打ち合わせでその子の家に行ったときに、それをわたくしが発見したんです。(男子の部屋って興味津々だったから、あっちこっちひっかきまわしてたんです。爆)

 それで、一緒にいた同じクラスの女子と「言うこと聞かないと先生に言うわよ」って、こっそり脅しておいたことがあったんですよ。(ひでぇ。笑)


 そんなこともあってわたくし、写真部の部室にもその子にくっついて出入りしてましてね。

 ほら、暗室とかって見たことないから、興味津々だったんです。


 そしたら今度は、写真部の暗室に校内で撮影した女子の盗撮写真のネガがあるのも発見しまして。(なんという学校じゃ!)


 それは本当に衝撃的でした。

 体操着姿の女子の写真とかがいっぱいあるんですよ。当時ってブルマだったからね、わかるでしょ?(犯罪ですから、真似しないようにしてくださいね) 



 まぁそんなこんなで、写真部はわたくしの言いなりでございました。(笑)



 で、後日。

 うちの副部長のさしがねで、本当に大映ドラマみたいな展開になったんですよ。



 下校途中に、3年の不良グループの男子が何人もわたくしを取り囲みましてね。


 

 でも、こんなときもひるんじゃ負けよ! なんて思っていたわたくしは、そのときは大声で叫んで近所のパン屋さんに駆け込んで、なんとか難を逃れたんです。

 

 べつのときにまた同じようなことになって、そのときはけっこう大変でしたが、それもやはりマイクロカセットに助けられましてね。


 それは本当に警察沙汰になりかけたんだけど、警察沙汰になんかなったら、また報復されるんじゃないかと思ったので、うまいことその子たちの親に連絡するだけで済ませてもらったんです。

 

 それでも報復されるんじゃないかと、怖かったんですが、なんとわたくしが牛耳っていた写真部の卒業生に、その不良グループの仲間がいましてね。


 わたくしへの報復はそのおかげでまったくなくなったんです。(持つべきものは写真部の奴隷男子です。笑)



 なにもなくどころか、その後あれやこれやとやんちゃなわたくしが巻き起こした騒ぎの数々も、彼ら不良グループが穏便に取り仕切ってくれたりしちゃって、けっこうやりたい放題でした。(どうもすいませんでした。爆)



 ところで、盗撮だの盗聴だのと、なんたる中学校だよって思っているでしょうが、この中学校はもっととんでもないこともあったんですよ。



 それもあれよ。

 生徒会室で。


 

 生徒会室って、6畳くらいの小さな部屋だったんです。

 わたくし、2年のときは生徒会に仲良しの男子がいたので、けっこう入り浸っていたんですよ。


 

 ある日、いつもと変わらずに部活をさぼって生徒会室に遊びに行ったら、男子の生徒会長と副会長が、もう一人の女子の副会長に……。



 あぁ、これ以上は乙女の口からは言えません!(どこ!? どこに乙女!? 爆)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ