オープニング:食品衛生を語る!
(軽快で少しミステリアスなテーマ曲が流れ、スタジオが明るくなる。中央には、可憐な雰囲気ながらも芯の強さを感じさせる司会のあすかが、にこやかに立っている。彼女の後ろには「歴史バトルロワイヤル」のロゴが輝いている。コの字型に配置されたテーブルには、すでに4人の歴史上の人物が、それぞれの時代の装いで、やや緊張した面持ちで座っている。)
あすか:「時空を超え、歴史の扉が今、開かれる!皆さま、ごきげんよう!この瞬間、この場所にしかない物語と出会う時間、『歴史バトルロワイヤル』へようこそ!あなたの時空案内人、あすかです!」(ぺこりとお辞儀をする)
あすか:「いやはや、今宵もスタジオには、教科書から飛び出してきたような…いえ、正真正銘、ご本人たちが時空を超えてお集まりです!なんだか、毎回ゲストの皆さまには『また無理やり連れてこられて…』みたいな顔をされるんですけど、これも歴史と現代を繋ぐ大切な使命ですから!ねっ?」
(ゲストたちに同意を求めるように笑顔を向けるが、反応は様々)
あすか:「…さて、そんな豪華ゲストたちと今夜、熱く!深く!切り込むテーマは…こちら!」
(背後のモニターに「食品衛生」の文字が映し出される)
あすか:「そう、『食品衛生』です!…って聞くと、ちょっと地味?いえいえ、とんでもない!私たちの『食べる』という根源的な営み、その安全を守るための、長くて、時には悲劇的なドラマがここにはあるんです。最近もねぇ…ニュースを見てると、お腹が痛くなる前に、心が痛くなるような話が多いですよね?有名なレストランで集団食中毒が起きたり、汁物の中に死んだ生き物が入っていたり、アルバイトの方がSNSで…うーん、なんともはや…な動画をアップしちゃったり。美味しいものを安心して食べたい、ただそれだけなのに、どうしてこんな問題が繰り返されるんでしょう?」
あすか:「そこで!今日は、この『食の安全』という大問題に、歴史上の偉人たちはどう向き合ってきたのか?その知恵と経験、そして、もしかしたら苦い教訓も?たっぷりとお話を伺っていきましょう!」
あすか:「では、時空を超えてお集まりいただいた、勇気あるゲストをご紹介します!まずは、この方なくして現代の衛生観念は語れません!目に見えない小さな小さな敵、微生物の正体を暴き、ワインや牛乳を腐敗から救った科学界の巨星!近代細菌学の父、ルイ・パストゥールさんです!」
(パストゥール、厳格そうな表情を少しだけ崩し、小さく頷く。隣のゼンメルワイスが尊敬の眼差しを向けている。)
パストゥール:「ふむ。紹介、感謝する。司会の女子、いささか軽薄な印象も受けるが、まあ良いだろう。私が来たからには、この議論、科学的真理に基づいて進めさせてもらう」
あすか:「わー、ありがとうございます!パストゥール博士のおかげで、美味しいワインが飲めるんですから、感謝しかありません!でも、科学的真理も大切ですけど、議論が白熱しすぎて酸っぱくならないよう、お手柔らかにお願いしますね?」(パストゥール、少し眉をひそめる)
あすか:「さあ、お次は、この日本から!江戸の世に彗星の如く現れ、幕政を立て直した名君!『米将軍』の異名を持ち、目安箱を置いて民の声に耳を傾けた、徳川八代将軍、吉宗公です!」
(吉宗、どっしりと構え、威厳のある表情で会場を見渡す。その隣のメアリーは少し身を縮こませている。)
吉宗:「うむ。徳川吉宗である。異な空間に呼ばれたものよな。して、案内役の女子、なかなか威勢が良いではないか。…ほう、米将軍とは呼ばれておったか。しかし、『暴れん坊』とは聞き捨てならぬぞ?」(少し冗談めかしてあすかを見る)
あすか:「あ、失礼いたしました!つい、幼い頃に見た時代劇のイメージが…!でも、目安箱なんて、現代の政治にもぜひ導入してほしい制度ですよね!きっと、食品に関する意見もたくさん届くはず!」
吉宗:「ふむ。民の声を聞くは、為政者の務めじゃ。食の問題は、いつの世も民の暮らしの根幹に関わるからのう」
あすか:「そして…この方をご紹介する時は、いつも少し胸が詰まります。たった一人、医学界の古い常識に敢然と立ち向かい、『手を洗う』ことの重要性を、その身をもって証明しようとした…しかし、時代は彼を受け入れなかった。ハンガリーの悲劇の医師、イグナーツ・ゼンメルワイス先生です」
(ゼンメルワイス、固い表情のまま、深く息を吐く。その瞳には、当時の苦悩が滲んでいるように見える。パストゥールが彼に同情的な視線を送る。)
ゼンメルワイス:「…司会、感謝する。私がここで話すことに、どれほどの意味があるのか…正直、まだ分からない。だが、もし私の経験が、未来の悲劇を一つでも減らす助けになるのなら…」
あすか:「先生、その勇気と信念、私たちは決して忘れません。今日こそ、溜め込んできた想いを、存分にぶつけてください!…ただ、先生、情熱も大切ですけど、周りがドン引きするほど一直線になっちゃうところも…あ、いえ、失礼しました!尊敬しております!」(ゼンメルワイス、少し驚いた顔をする)
あすか:「そして、最後にご紹介するのは…歴史の教科書には、少し違う形で名前が残ってしまったかもしれません。アイルランドから新大陸アメリカへ渡り、料理人として懸命に生きた一人の女性。しかし、図らずも『チフスのメアリー』と呼ばれ、社会から隔離されることになった…メアリー・マローンさんです」
(メアリー、俯いていた顔を少し上げる。その表情には不安と、わずかな反抗心のようなものが浮かんでいる。他の三人が、それぞれ異なる感情のこもった視線を彼女に向ける。)
メアリー:「……」(小さく頷くが、声は出さない)
あすか:「メアリーさん、ようこそおいでくださいました。今日は、新聞や記録に残された『チフスのメアリー』ではなく、あなた自身の言葉を聞かせてくださいね。ここは安全な場所です。私たちみんな、あなたの声に耳を傾ける準備はできていますから」(優しく語りかける)
メアリー:(あすかの言葉に、少しだけ表情が和らぐ)「…ありがとう。でも、何を話せばいいのか…私だって、好きで病気を運んだわけじゃないのに…」
あすか:「ええ、もちろんですとも。その想い、しっかり受け止めます。さあ、役者は揃いました!それぞれの時代、それぞれの立場で『食品衛生』と向き合ってきた四人の偉人たち。まずは、このテーマについて、皆さまが今、何を感じていらっしゃるか、第一声をお聞かせいただけますでしょうか?パストゥールさんからお願いします!」
パストゥール:「よろしい。繰り返すが、衛生とは、科学!目に見えぬ微生物こそが、腐敗と病の元凶なのだ!これを理解せずして、食の安全など断じてあり得ん!経験や勘に頼る時代は終わったのだ!」(断言する)
吉宗:「ふむ。パスツール殿の言う『科学』とやらは興味深いが、わしはこう考える。民の腹を満たし、健やかに暮らせることこそが、為政者の最も重要な務めじゃ。されど、疫病もまた民を苦しめる恐ろしきもの。その両立をどう図るか…そこが肝要であろう」(落ち着いた口調で語る)
ゼンメルワイス:「(声を震わせながら)…皆さんにお聞きしたい!無知と、旧態依然とした慣習が、どれほど多くの尊い命を奪ってきたか、ご存知か!?衛生とは、命を守るための最低限の、そして絶対的な義務なのだ!それを怠ることは、殺人にも等しい!」(拳を握りしめる)
メアリー:「(おずおずと、しかし芯のある声で)…衛生が大事なのは、私だって分かっているつもりよ。料理人ですもの。でも…でもね、それが人の生活や、ささやかな幸せ、そして…尊厳よりも大事だなんて、私には思えないわ。なぜ、私だけが…?」(問いかけるように、他の対談者を見渡す)
あすか:「…ありがとうございます。早くも、それぞれの立場からの熱い想いが伝わってきましたね。科学、政治、医療現場、そして個人の叫び…。この異なる視点が、今宵、どんな化学反応を起こすのか?さあ、『食卓の掟!歴史バトルロワイヤル~時空を超えた食品衛生サミット~』、いよいよ開戦です!」
(オープニングテーマ曲が再び流れ、CMへ…という雰囲気で一旦区切る)