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藤原涼  作者: m@ho
6/13

熱海と引き継ぎ


電車を降りて市ヶ谷駅の改札を出た時携帯を取り出した。

「誠さん、涼です。最近、お父さんは誰かともめてたりしませんでしたか? トラブルに巻き込まれたりとか」

「トラブルは聞いてないんだよね」

「勇さんも聞いていないですかね?」

「さっき勇が起きた時に聞いたんだけど、熱海の別荘隣地との問題ぐらいとは。でも20年だからねえ」徳田さんから聞いていた話だ。

不動産の将来性について話したていた時だ。


「熱海は時代とともに浮き沈みが激しくて、温泉があるから東京からさくっと行けるんだけど、急斜面な所が難点かな。祖父の時代に源泉を掘った一面がそのまま別荘として残していて、一山手付かずな場所があるんだよ。バブル時代からもそのままになっている」

「どのような場所なんですか?」

「2万平米の伊豆山の一部でね4億ぐらいかな?隣地の家が昔から少しづつ境界線を動かすので、測量をちゃんとして公図に残したんだ」

「それなら安心ですね」

「その後の話があって、そこの息子が、昔の地籍はもっと広くて地図に残っていると言うんだ。」

「昔の公図がいい加減な場所もあると聞いたことがあります。特に地方は。」

「争う事は望まないんだけどね。いい加減にしておくわけにはいけないので橋本弁護士に任せてるんだ。」

「そのような隣人ならしっかりしといたほうがいいですね。」


市ヶ谷駅の人通りは時間が早いからか通常より多く、涼が端で電話している姿が溶け込んでいる。「熱海の件は、橋本弁護士に確認しておきます」

「藤原さん、うちの事に力添えしてくれて大変ありがとう。しかし、本業に迷惑かけるならいつでも中断していいからね。」

「いえ、すみません。自分の為にも正したくて。ご心配にはおよびません。恩師の恩に報いたい感じでしょうか」

 電話口から笑い声が漏れるぐらいであった。

「まあ、会社を万が一クビになったらうちの財団に専念してくれたらいいしね。」久々に笑った二人のような気がした

自宅に戻る涼。

会社が契約している寮は市ヶ谷駅から300mほど離れたところある利便性がよく、清潔にしてくれている。

入り口のコンシェルジュが出迎えてくれる。

「おかえりなさい」

会釈して入る涼「ただいま」

ホテルのようにはいかないが、誰もいないより挨拶してくれるだけでも安心感がある。

1階中央はリビングスペースで読書や朝食スペースになっている。横を通り過ぎてエレベーターに乗り5階を押す。

5階の廊下が外階段になっているため、皇居側の景色が広がる自室に入る。

カードキーで入る涼。部屋の中は1dkだが、十分な大きさである。

荷物を置き、椅子に腰掛け、電話をかける。

「橋本先生、藤原です。お忙しいところすみません。1点教えて頂きたいのですが、熱海の争いってどうなっているのでしょうか?」

「あそこも財団所有になりましたね。隣地の人は主張はしてますが、訴訟を起こしていません。訴訟を引き受ける弁護士を探すことの方が大変だと思います。熱海市の地籍調査事業も終わっていますし、何度も地積調査してますしね。根拠のない地図を基に主張しているだけですから。」

「争い事は熱海以外ありますか?」

「私の知る限り熱海の土地だけだと思います。」

「ありがとうございます」電話を切り、シャワーを浴びに浴室へ向かう。

 

「おはようございます」

 新橋支店の隣接する駐車場で涼以外に伊藤さん、下村預金課長が来ていた。

「3人になったから開けようか。」

 支店の裏口から3人入る。

「どうだった? 個人店舗だと可愛い新人が入っているんじゃないか?」伊藤先輩は若手で飲みに行こうと言うが、飲みニケーションは時代遅れですと言っても、聞き耳を持たない。

「ですから」「飲みは時代遅れと言うが、独身同士の出会いは必要。と言う事でよろしくね。」溜息ついて席に着く。パソコンの電源を入れ、外出準備をする。

 自分のカバンを湿らした雑巾で拭く。

『今日もよろしくな』カバンに心で感謝するのがルーチンである。

 パソコンでメールを確認していると、背後から支店長と皆が挨拶する声が聞こえた。

「おはようございます」「おはよう藤原さん、よければ今からでも聞こう。」

「ありがとうございます」

 応接にて支店長に一連の事を報告する。

「わかった。人生が一変したと思うが、よく考えてみろ。確か連続を取っていないよな」連続休暇は年度を通して必ず取らないといけないのは金融庁のルールである。

「はい、出来れば1週間休みをいただきたいのです」

「仕事の引き継ぎに支障がなければ休んでいいぞ。伊藤は手を余らしているからちょうどいい」全部お見通しのようだ。

 1時間で1週間分の引き継ぎを行い、伊藤先輩の負担を減らす為に用事のある顧客には今日行く予定にした。大きな籠の愛車もフル活動だ。


 夕方、帰社する涼。下村課長が前方から来たので「戻りました」とお辞儀する涼

「お疲れさん、1週間よく休め」すれ違いざまに涼の肩を軽く叩き出納の方へ向かった。

 自席に向かう涼。伊藤先輩は既に戻っていた。口の悪い先輩であるが、支店から付与された目標には全て100%以上を獲得する優秀な営業マンで、涼は伊藤さんのスキルを得ようと帯同を試みるのだが、全く分からない。

 涼との違いがあるのかさえもわからず、飄々と契約を取ってくる。さすが国立出という感じで頭の回転が早すぎる、融資に関する稟議書の提出も早い。

「藤原の引継書だけど、簡潔にできてるな。ただ、キーマンがわからないので、備考欄にわかるだけ入れといて」「ありがとうございます」

 預金課、融資課へ引き渡す書類を分類し、それぞれ専用ファイルへ入れる。カバンを金庫にしまう。『一週間お別れだけど、またな』


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