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私達はいつだって正解を探してる  作者: 黛ちまた


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014.焦る理由は想像するだけで山ほど

 喜美子と唯山の三人で、パエリアが美味しいと噂のスペイン料理のお店に入る。時間がかかるからパエリアは最初に頼んでおく。

 

 とりあえず乾杯をしてから、気になっていたことを喜美子に聞く。

 

「喜美子、今日どうして来てくれたの?」

「私の第六感シックスセンスが今日行けと命じたっていうのは嘘だけど、早い段階で光太郎に釘を刺しておきたかったんだよねぇ」

「オレと鉢合わせる前に会っておく必要はあるだろうって話を三人でしていたんだ」

 

 三人って誰なのさ。喜美子と唯山と紗里?

 

「早々に来るとは思ってたのよねぇ。関係ない奴から凛子と連絡が取れないって光太郎から連絡きてるんだけどって、大きなお世話な連絡が来てたからさー」

 

 返す返すも、新しい連絡先を広めなくてよかった……。

 

「迷惑かけまくってごめん」

「迷惑かけてきてんのはあっちで、凛子は被害者でしょ」

 

 そうだけど、助けられまくっているのは間違いないと思う!

 

「親も出張ってくるだろうな、あの様子じゃ」


 呆れ顔の唯山に喜美子も頷く。想像するだけで頭痛がする。

 

「週末にでもうちに来い」

「そうしなよ」

 

 ねぇ二人とも。妙齢の男女がいきなり同棲っていうか同居っていう状況に、もうちょっと抵抗感持ってくれませんかね?

 

「会社の人も上手く巻き込んだほうがいいわよ。現代人はストレスためこんでるから、光太郎と阿津子のことを遠慮なく叩いてくれるわよ」

 

 遠慮なくって……。

 咽喉が渇いていたのか、くいくいっとグラスの中のシードルを飲み干し、喜美子はベルモットをオーダーする。

 

「変な巻き込みかたすると恨み買うからね、被害者になりきっちゃうのよ、こっちは。あっちは人様に言えないことのオンパレードなんだから。皆のストレス発散にもなってむしろ感謝されるかもよ?」

 

 感謝はないだろうけど……どちらにしろ結婚が駄目になったことはオープンにしたんだし、こじれてると伝えるのはまぁありなのかも。

 

「全部片付いたら、うちの会社のメンバーとの合コンとか設定するのもありじゃない?」

「うちもいいぞ」

 

 あー、それは感謝されそう。喜美子はプライム上場企業勤めだし、唯山は外資だし。外資は大変だって聞く。よく勤められてるなって思うよ。

 

「忙しくってなんだかんだ飲み会も口だけになりがちだけど、きっかけ作りには持ってこいよねー」

 

 きっかけと言われるとなんとも微妙な気持ちになるけど、誰かの役に立つならいいのかな、いいということにしよう、うん。

 

「オレはその過程の中で凛子と関係を築いていくと」

「唯山、前から凛子のこと気に入ってたもんねぇ」

 

 ケラケラと笑う喜美子。

 なにそれ初耳だけど?!

 

「気にはなってたな、確かに」

 

 色んな女性との交際を経験した結果行き着いたこだわりのことね……喜んでいいんだか悪いんだか……。

 

「自分の苦手なところも良いっていってくれてる言葉ぐらい、素直に受け取っておきなさいよー」

 

 ポジティブ!

  

 ミニトマト、モッツァレラ、生ハムのピンチョスとエビとマッシュルームのアヒージョがテーブルに置かれる。いい匂いに刺激されておなかが反応する。あぁ、ガーリックってなんでこんなにいい匂いなんだろう。

 トマトの酸味とチーズのクリーミーさ、生ハムの塩気が美味しい。食べ過ぎちゃいそう。

 唯山が無言でアヒージョを皿に取り分け、私と喜美子の前に置く。

 

「ありがと」

「凛子のおまけでも嬉しくってよ」

「悪いな、おまけで」

 

 テンポよく進む会話に、自然と笑みが浮かぶ。

 

「そこそこの請求額だが、それを渋るのは元々払う気がなかったからか、勿体無いと思ったか、もっと金がかかることでも起きたか」

「案外、思ったより早くに社内の人間にバレたのかもねー」

 

 喜美子の言葉に、私と唯山が同時にあぁー、とハモる。

 

「サークルメンバー以外からも連絡きてるってことは、なんか勘づかれて、式への不参加を言われでもしたんじゃないのか?」

「それもありそう」

 

 結婚式間近で新婦と連絡が取れないなんて、と不審に思われてもおかしくないもんね。

 

「上司のスピーチでエピソードを聞かれて、新婦が変わったことがバレちゃったとか、枚挙にいとまがないもんね」

 

 パッと会話に上った内容からしても、光太郎が思った以上に早く行動に移した理由を察するに余りある。

 

「分からないけど、払うもの払うのが一番良いと思うんだよね。もうしでかしちゃったんだから」

 

 あの日の二人の態度からして、ごっめーんで済むと思ってたのは明らかだったし。ごめんで済むわけないのに、やっぱり考えが浅すぎると思う。

 

「裁判にでもなったら解雇だねー」

「和解すればそうはならないだろうが、民事とはいえ裁判記録は残るな」

 

 アヒージョを味わいながら、迷惑を最小限にしつつ、早急に解決する方法を考えてみる。二人が払うもの払ってくれればそれでいいのに。減額はしてあげないけど。

 

「在宅にしても近所迷惑になりそうだよね」

「凛子のお母さんなら上手いことやるわよ。刺激に飢えた近隣の主婦友を味方につけて」

 

 そうかも。我が母ながら強いもんなぁ。

 

「見つけたら即通報! 翌日に情報共有! なーんて言ってもらったら皆楽しく監視してくれそうよね」

 

 それはそれでどうなのかなって思っちゃうんだけど。

 

「ピンチ時に、唯山でも誰でもいいけど、助けてくれた人と結婚しました、なーんて後日談で昼ドラみたいな話を聞かされたら、まぁーっ! って大興奮。凛子の旦那様はご近所に温かく迎えられるって寸法よ」

「そこはオレにしておいてくれ」

 

 想像力たくましすぎない?

 でも、助けてくれた人とご縁ができてーなんて聞かされたら、祝福してくれそう。私なら祝福しちゃう。

 

「冗談抜きで、唯山の所に避難しておくといいわよ」

「喜美子の所じゃないんだ」

 

 そこはうちに、ではないんだ。

 

「唯山のマンション、コンシェルジュいるもの」

「わぁ……」

 

 やたら勧めるのにはそんな理由もあったのね……。

 

「部屋も余ってるし、在宅に切り替えさせてもらってうちに来るといい。昼飯も用意しておくし、なんだったらお揃いの弁当を用意とか」

 

 イキイキしつつちょっと照れた顔で言う唯山。

 この人、本当に料理好きなんだな……。

 

「卵焼きは甘いのは許さない派か?」

「甘いのも好きだけど、真剣に聞くの、それ?」

「大事なことだ。凛子の嗜好を早々に把握して、胃袋を掴まないとな」

 

 昨今は男子も言うのか、そのセリフ……と少しだけ現実逃避。

 今もパタタス・ブラバスを皿によそって渡してくれた。甲斐甲斐しい、この人甲斐甲斐しすぎて衝撃なんだけど。

 

「自分でよそうから大丈夫だから」

「よそいたいんだ。世話がしたい。今までは我慢してたが、この前オープンにしたからな、やりたい放題だ」

 

 やりたい放題の使い方がおかしいことに気付いて。

 酔っ払っているのか、喜美子はケラケラと笑ってる。

 ブラバスソースのかかったローストポテトが美味しい。アリオリソースは少しだけ。

 

「引っ越しは家族に相談する」

「分かった。妹に懇願しておく」

 

 そうだった、繋がってた!!

 

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