クリスマス☃
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
【ジョーダンside】
気付けば、まったりとした空間だ。
至るところで寛いでいる大人達。
ちょうどいい間隔に配置されたイスが、和やかな時間に添えていた。
「よく考えてやがる。イスに置かれたクッションとひざ掛け。」
「テーブルもそうね。子供の絵と、コサージュがとっても可愛いわ。」
まさに大人の、それも子を持つ親のデート演出だった。
「ココにジュリアス君達がいなかったら、イチャイチャしたわね。」
ユーリアがそう言って、指を差した先には……
まだ子供のいないカップルが巾着袋を見つめて、ニコニコを微笑み合っている。
「なんかああいうのを見ると、懐かしいな。」
「そうね。マリスを産む前の私達だわ。」
そう言ってほのぼのとした空気が流れていた。
「でもマリスはどうなのかしら?」
「なにがだ?」
「ウ~ン…… マリスにとってジュリアス君は……」
「兄ちゃんだな……」
「「………………」」
どうするつもりだ、ジュリアス。
俺は自分で言って、この後の展開に頭を悩ませた。
「ジュリアス君におまかせという事でいいわよね?」
俺を見て確認するユーリア、俺は素直にうなずく。
変にしゃしゃり出て、拗らせるのは良くないからな。
辺りもほのぼのとした雰囲気で、のんびりとしている。
そろそろ家に帰る頃合いだな。
「親父……」
ジュリアスがタイミング良く声をかける。
コイツにはマリスに関して、いろいろと言いたい事があるが……
今日は我慢しないとな…… 俺も場の空気は読む。
「おう、ジュリアスありがとう。最高な気分だよ。お前の抱負もわかった。待ってるよ。」
俺がそう言うと、ジュリアスはニヤリとほほ笑んだ。
そのニヤリにいろいろと思う所があるが、我慢だ。
今日はとにかく我慢だ、ジョーダン。
「ところで地上での望みって何だ?」
俺がそんな事を言うと、「帰る事」と言われた。
つまり、リコの町へ帰る事……
なるほど…… こりゃまた厄介だな。
俺は憐みを含んだ目を見せたが…… ニヤリと笑いやがる。
つまり叶える自信がある表れだった。
「それより親父、メッセージカード貰っただろう?」
ジュリアスに言われて、俺はそうだと思い出した。
****************
カラ~~ン コロ~~ン …♪
カラ~~ン コロ~~ン ……♪
教会の鐘の音が聞こえる。
イブの夜が終わり、本格的な冬の到来、引きこもりの時期だ。
「マリスちゃん、おはようございます。」
メイヤーちゃんの声をかけられた。
他にもポツポツと起きて上がる子供達。
「おはよう、メイヤーちゃん。」
私もあくびをしながら、ごあいさつ。
ホントぐっすりと眠ったの。
夢を見た記憶はありません。
「教会の朝は冷たいよね。」
「うん、ヒヤ~~とするね。」
朝の澄んだ空気は、心地いいが寒さには負ける。
今日から本格的な冬の寒さが到来する。
冷たい雪解け水で、お顔を洗うマリス達。
「ざむい~~~!、づめだい~~~!!」
禊みたいな扱いだから仕方がないけれど………
「ヒュエ~~~~~~!!」
たくさんの子供達は、アワワワ……といいながら、手を突っ込むのだ。
”コレが終われば、暖かい蒸しタオル。”
”コレが終われば、暖かい蒸しタオル。”
そう思いながら気合を入れて、手を突っ込み……
「ウギャアアアア!づめだい~~~!!」
それがクリスマスの日のいつもの風景。
「何で雪解け水なの?」
「昨日降った雪は、神様と共に降りた立った雪だから特別なのよ。」
「あの雪は神像の手に集まったモノなの。」
なるほど…… でも冷たいの。
「私達も子供の頃、何故温めないのかと思ったわ。」
「でも毎年毎年……クリスマスの朝から神像の手に積もった雪を頂く時、確かに白さが違うのよ。」
「それに気づくとやっぱり特別な雪なのよ。だからがんばるのよ!」
「それに耐えれば強い子よ。無病息災!」
そうなのです。この雪で身を清めると、無病息災………
もちろんそれでも病気になるけどね。悪化しないという事らしい。
ホカホカの蒸しタオルで、ホオ~~~とため息をつく私達。
この瞬間がとっても幸せなのだ。
”何とも言えない気持ち良さ………♪”
かじかんだ指に、ホカホカの蒸しタオルの暖かさが気持ちいい。
そしてシスター達が、魔法で頭を暖めてくれるのだ。
”冬の朝のドライヤー、気持ちいい……。エコ魔石で作ろう。”
ホコホコしながら、マリスは考えるのだった。
食堂へ向かうと暖かいパンプキンシチューと、焼き立てパン。
そしてホカホカのベリージュースが添えられている。
「さあ皆おあがりなさい。おかわりもありますからね。」
皆で食べる朝食は、毎年とっても賑やかで楽しい。
甘酸っぱいベリージュースを、フーフーして飲むマリス。
「やっぱり教会のベリージュースは美味しいの♪」
「うん、お家のベリージュースと違うよね♪」
教会のホットベリージュースは、甘酸っぱいと濃厚さ、そしてほんのりまろやかな甘みがあるのだ。
「ボク、教会のベリージュース好き。」
「私も好きよ。身体あったまるもん。」
お友達も皆笑顔で飲んでいる。
そんな子供達を嬉し気な顔で見ている、神父様とシスター達。
それ以外の料理もとても美味しく、身体が暖まる。
トロリとしたホカホカのシチューに、焼き立てパンを付けて食べる。
そのまま焼き立てパンを、ムシャムシャ食べる子もいる。
「焼き立てパンにバター、幸せの味なの♪」
マリスはバターの溶ける味にご満悦だった。
「皆さん、食べながら聞いてね。昨日はいろいろとお疲れ様でした。」
シスターマリアンヌが、ニコニコ笑顔で話す。
「昨日の夜はホントにとっても素敵なものでした。大人達は皆とても喜び感動していました。私からもありがとう。お家でもお話があるでしょう。皆様に幸せあらんことを祈りますわ。」
とっても嬉しそうに楽しそうに話す、シスターマリアンヌ。
その様子からメッセージキャンドルナイトが、成功した事を確信する。
子供達はそれが分かった瞬間、
「「「「「ヤッタ~~~!!」」」」」
大喜び♪自分達の目で見れなかったけれど、お兄ちゃんおねえちゃん達に聞こう。
子供達は満面の微笑みを浮かべた。
その後シスター達から、自分達の手形の巾着袋を貰った。
中には美味しい飴玉とカードが一枚。
リコの町はとこもかしこも幸せで、満ち溢れているのだった。
****************
【ジュリアスside】
家族みんなでマリスを迎えに教会へ向かう。
昨夜降り積もった雪に、足を埋めながらザックザックと前へ進む。
「そういえばさ、カイがファンスキーしたいって言ってたよ。」
俺は親父に伝えた。たぶん今年の冬はそんな奴らが増えるだろう。
「ああ、だぶんそうだろうな。お前のは特別製だぞ。」
親父はニヤリと笑い俺に言った。
なんでもマリスのこだわり使用らしい。
「アレは別に魔石がなくても楽しめるぞ。あれば更に加速がついて、すげー事になる。」
つまり………
「魔石ナシなら、手に入り易いのか?」
「そういうこった。その分おもしろ型もある様だ。」
親父は気になる事を言って、母さんと話し始めた。
「その帽子はマリス用か?」
「そうよ♪ついでにメイヤーちゃんにもつくったの。」
母さんの手には、耳のついたフワフワの帽子。
「可愛いでしょ♪コレがスヌードと一体型なのよ。あの子達もこの冬、外遊びが増えそうでしょ。」
黄色のウサギ耳がマリス、ピンクの猫耳がメイヤーちゃん。
母さんは付けた所は想像しているのか、とっても楽しそうな顔をしていた。
教会へ行くと、たくさんの人たちで賑わう。
カラ~~ン…… コロ~~ン……
カラ~~ン…… コロ~~ン……
いつもは12時の鐘が、11時……
そろそろ教会から地上の天使達が現れる時間だ。
最近のリコの町はいい天気が続いている。
今日も快晴の蒼い空が、めずらしく見えている。
「今日は神様もご機嫌なようで、顔を出してるな。」
「ホントね。いつもなら寒い冬の雲に覆われているのにね。」
そんな話があちらこちら聞こえてくる。
本格的な冬の到来にはめずらしく快晴の青空。
教会からは子供達が、続々と出入口から出てきた。
手には手形の巾着袋を持っている。
”どうやらしっかり渡してくれたようだな。”
飴玉はジュリが作った特別製。
小さい子供には、お友達の指人形。
「ただいま~~~♪」
マリスが満面の笑みを湛えてやって来る。
そしてそのまま母さんに抱き着いた。
「お母さん、メッセージカード読んだの。マリスとっても幸せよ。お父さんもありがとう。」
そう言って親父にも抱き着いている。
親父もにやけ切った顔で、マリスを抱きしめ返していた。
そして……
「お兄ちゃん、ありがとう。とっても素敵なプレゼントなの。」
俺達世代が考えた事は、親から子へのメッセージカードを渡す事。
常日頃言えない事を伝える、メッセージカード。
俺達世代はメッセンジャーとなる事だった。
"アナタの未来に幸あらん事を願い、いつも貴女を見守っている。”
他の家族もメッセージを受け取り、子供の喜ぶ声が聞こえる。
それは孤児院の子達も同じこと、シスターや神父、町の人達からのメッセージが届いているだろう。
「さあ、家へ帰ろう。のんびりと今日は過ごそう。」
「あら!私はファンスキーとキックボードに乗った所を見てみたいわ。」
そう言ってマリスの頭にウサギ帽子をかぶせる。
スヌードと一体型の為、すごく暖かそうだ。
黄色のうさ耳がご愛嬌。
「ヌクヌクなの〜♪」
「マリスちゃん可愛い♪」
ちょうどいいところに、メイヤーちゃん。
母さんは、メイヤーちゃんにもピンクの猫耳帽子をかぶせた。
「メイヤーちゃんも可愛いの♪」
「すっごく暖かいね。」
二人ともニコニコ笑顔で笑い合っていた。
ほのぼのとした幸せな空間、どこもかしこも幸せそう。
そんな中、カイが走ってやってくる。
「今インカゴールデンが、凄い事になってるぞ。」
そこに見えるのは、眩いばかりの黄金の塊。
太陽の輝きと同じ眩い光で輝いている。
「インカゴールデン、稀に視る貴石じゃないか!!」
なぜそうなるのか?
いくら太陽の光が照らそうと、いつもは普通のお山なのだ。
たけど一生に一度見れるか見れないかの確率で、お山が起こす奇蹟。
太陽の黄金石。
「お山が金ピカに、輝いてる、眩しいの!」
マリスは大興奮!もちろん他の子供達も同じだった。
年配の人達は手を合わせ、祈りを捧げている。
「神様も昨夜は楽しんだのだろう。粋な計らいをするもんだ。」
親父は清々しい笑顔で言うと……
周りの人達も確かになぁと笑い納得をする。
この奇跡の出来事は、後世へ伝わるだろう。
貴石の山インカゴールデン、子供達の起こした奇蹟として………
「メイヤーちゃん、この飴玉ジュリ姉のだって。」
「普通の飴玉じゃないね。」
「「「ウギャアアアア!!」」」
やっぱり普通の飴玉じゃないの……
今日のリコの町もとても賑やかな一日になりそうだ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
後日の番外編をちょこちょこ投稿します。




