クリスマスイブ☃ 8
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
外を眺めると雪は相変わらず積もっているが、比較的過ごしやすい夜だ。
「今日はホントに穏やか冬の夜ですね。」
レミオが微笑みながら、彼も外を眺める。
遠くを見ると、ジュリアスがいるだろう広場の光が見えた。
商店街もイルミネーションで彩りを添えられ、今年のクリスマス素晴らしいモノになった。
「ジョーダン、ホント今年は最高のクリスマスイブね。マリスちゃんに感謝だ。」
仲のいい近所の者達がそう言って、飲んでいるカップにカチンと鳴らした。
”マリスちゃんに乾杯”と言葉を添えて……
「来年は全世界が、この様なクリスマスイブを迎える事でしょう。」
「だろうな。それと同時に、エコ魔石も拡販するだろう。」
「一番いい形で収まったな。ジョーダン、世界は魅了されるよ。この光の世界に……」
歌い継がれていた、覚醒者のクリスマスソング。
憧れ懐かしみ、少しずつ増え続ける、魅了するかの世界。
「コレがクリスマスの、満点の輝きなのですね。地上の星々たち……この目で実際に見る事が出来ました。」
そう喜び俺達を見るレミオ。
「どうですか?この感謝の気持ちを込めて、健やかな地上の天使達に贈るのは?」
つまり近くにいる神に、子供の願いを祈るという事だった。
いつもは帰り道に各家庭で行う事を、今回は皆で団体で行う。
「そうだな。そろそろおしまいの時間だ。行こうか。」
提案の時間帯もちょうどいい頃合い。
今年は何かと忙しかったから、家でゆっくりと過ごしたい。
皆でぞろぞろと歩きながら、冬の夜空を眺める。
騒げば教会の子供達が起きてしまうから、心持コソコソした気分だった。
「なあ…… 孤児院の入り口が明るいな。」
「そうだな…… ありゃカイじゃねぇか?何してんだアイツは?」
「まったく…… まさかこんな日にも、メイヤーの尻追っかけてるのかい!」
カイの母親が怒りを顕わにしている。
「イヤそうじゃなさそうですよ。だってあそこにいるのは…… 」
そうジュリの友達の子も、その辺をウロウロとしていた。
もちろんそれ以外もチラホラと同世代の子が、孤児院の入り口を出入りしている。
そして俺達の存在に気づき、手を振って招いていた。
「なんだありゃ?いよいよもって訳わかんねぇな?」
メイヤーちゃんの父親が首を捻る。
それを横目に見ながら、俺は嫌な予感がムクムクと湧きだった。
「ねぇ…… ジョーダン?」
ユーリアも勘が冴え渡っているようだ。
この流れはたぶん、うちの娘が関係しているだろう。
「レミオ…… これはマリス案件か?」
俺がレミオに聞くと、フフフ……と笑うばかりで返事はない。
だが確実にそうなんだろうという事はわかった。
入口近くなると、カイロとメッセージカードを渡される。
そして中の案内について行くと………
壁に子供達の絵が飾られている部屋へ通される。
大きく手を繋ぎ、回りに色鮮やかな絵が描かれている。
それとは別に、まだまだ鉛筆握りたての小さな子ら絵も飾られていた。
「あの雪ダルマのライトは、マリスちゃんとメイヤーちゃん作ですよ。」
シスターマリアンヌが、笑いながら教えてくれた。
「とっても素敵でしょう。子供らが企画したのよ。夢の様な空間ね♪」
テーブルには、笑顔のランプ。そこに添えられた言葉「皆が笑顔」。
他のテーブルにも「皆が幸せ」と、拙い文字で添えてある。
何ともほのぼのとしながら、心暖まる空間。
外の冷たさなど忘れ、心の中からポッと暖かくなるようだ。
中央のテーブルにはホットワインと、簡単なつまみが添えられている。
この世代の考えた、俺達大人へのおもてなしだ。
ちょうどジュリアスを見つけた俺は、ヤツを捕まえる事にした。
「よう!なかなか粋な歓迎パーティーだな?このつまみもお前らが考えたのか?」
そう聞いて見ると、とてもイヤそうな顔をしてジュリを指差す。
つまり…… こいつら脳筋は考えつくはずがない。
「だろうな…… お前もこんな洒落た感じを意識向けろよ。」
俺は自分のイタイ記憶を思い出し、一応先輩として忠告した。
こんな所に、男の甲斐性を理解されるのだ。
「ジョーダンさん、暖まりますよ。ユーリアさんもハイどうぞ。」
ジュリがホットワインを渡し、庭へ行くように伝える。
庭の近くに行くと、カイロを手渡される。
ホント至れり尽くせりとはこの事だろう。
「ジョーダン、何だか恥ずかしいわね。」
「まあな…… 」
「フフフ、ジュリアス君世代に、デートのお膳立てして貰った気分だわ。」
全くのその通り……子供のいる前でイチャイチャ出来る訳もなく、でもその場の雰囲気はまさにソレ。
庭に出れば更に何とも言えない幻想的な世界が拡がっていた。
今までのクリスマスイルミネーションが動ならば、ここはまるで静の世界だろう。
しっとりとした冬の空と聖夜を彩る相応しい柔らかな光。
ジュリアス世代の子らが、しっとりしたクリスマスソングを奏でていた。
「まるで世界樹のようね……… 」
庭に中央に位置する木は、たくさんの光の粒に彩られていた。
木の根元には、たくさんの光の群れ…… そこに沢山の大人が行き、涙する者達がいる。
「ジョーダン、あれはマリスの絵じゃないかしら?」
木に向かって歩いていると、通路に置かれた行燈に指を差すユーリア。
近づいて見れば、「おとうさん、おかあさん、いつもありがとう。ふたりのこどもでしあわせなの。」と書かれていた。
オイオイ!参ったな。さすがの俺も泣きそう……でも隣の……
「私も貴女が娘で幸せよ、マリス。」
ユーリア号泣!だよな……おかげで俺の涙は引っ込んだ。
グスグス言うユーリアを連れて、木の処へ行けば……
ピンクの鮮やかな花束が幹を飾り、幹の下に大きめの筒型のライトに文字が書かれていた。
そこに集う様に、子供達の手作りライトがたくさん置かれている。
「ジョーダン、とても可愛いわね。」
グスグス鼻を鳴らし、指を差し、微笑むユーリア。
木に飾られた光の巾着袋。それがこの木を世界樹の様に彩っていたのだ。
巾着には、子供の手形と名前と歳が添えられている。
たくさんの大人達が自分の子供の手形を探す為、あっちこっちと歩いていた。
「フフフ、マリスの手形もあるのかしら?」
「ジュリアスのもあるのかな。」(笑)
そう言ってウロウロと探していると、
「ジョーダンさん、ジュリアス君の抱負を読んだか?」
いったい何を言ってんだ?
「あの筒型のライトに、来年この町を出る若者たちの抱負が書かれているんだ。」
そのライトの周りには、たくさんの大人達が集い、泣く者、微笑む者、困った顔をする者など、様々な反応を見せていた。
”オイオイ…… ジュリアスの抱負って何だ?”
俺はヤツの書いた、抱負とやらが心底恐ろしい。
散々ごねて、やっと学園の行く事になったのだ。
その経緯がある分その抱負なるモノが、読んで精神苦痛を伴いやしないかと不安。
「ジョーダン、とりあえず見るわよ。」
ユーリアもその事から、不安そうな顔をしている。
筒状のライトは4つ、その何処かにジュリアスの抱負が書かれている。
眺めて行くと、一人一人個性ある抱負が書かれていた。
「とりあえずめちゃくちゃ強くなる。なって偉くなる。以上!カイ」
「…………… 大丈夫か?」
「カイ君だから、大丈夫よ。」
俺は違った意味の不安を抱えた。マジやって行けるのかだろうか、地上で?
「世界をアッと驚かせて魅せる。最高の光輝くモノを創る。ジュリ」
「まあ。ジュリだからな………」
「光り物大好きだもの、ジュリさん。」
とりあえずジュリは強いからな、いろんな意味で大丈夫そうだ。
それ以外もまあ、個性が良く出た抱負が書かれていた。
そしてついにジュリアスの抱負をみつけた。
「自分の望みを叶え、必ずリコの町へ帰る。ジュリアス」
「………なあ、アイツの望みってなんだ?」
俺はポツリと呟いた。アイツの望み?
「地上での望みよね?」
ユーリアから言われ、そうだろうと俺が言うと、
「私知らないわ。地上のジュリアスを。」
そう俺達は、マリスの兄ジュリアスしか知らない。
とにかく、リコに戻って来るのは確かのようだ。
「ジュリアス君、リコへ帰って来るのね。帰って来たらご馳走を作らなきゃ。」
泣き笑いの様な顔のユーリアを見て、俺も何となく可笑しくて堪らなかった。
アイツらしいと言えばアイツらしい。
基本がまったくぶれていないのだ。
「俺の家はこのリコと思っている。俺が帰る所はここだ。」
地上に戻り学園に行くように説得した時も、行きたくない。
学習内容はもう終わっているから、行く必要がないと、ごねてごねてホントに……
「兄上が物分かりの良い奴と言っていたが、ウソだったなぁ。」
「そうね。とっても面倒だったわね。」
二人で遠い目をして、顔を見合わせ微笑んだ。
そして気付く……
「こんな所にマリスの手形があるわ。」
「ホントだな。ジュリアスの近くか…… 」
何ともまあ…… らしいと言えばらしい事。
片方は将来への抱負、もう片方は成長途中の小さな手形……
何とも可愛らしい子供らなのだろうか。
「私達もこんな時期があったのよね。」
「そうだな。あったんだよな。」
遠く未来を見据える目を、今は近くを見据える目へと変わった、大人達。
「あの子達、ずっとあのままなのかしら?」
「うん?どういうことだ?」
「ジュリアス君、マリスを囲っているわよ。」
「ハア?!」
戦闘系が早く雌を決める話は聞いた事があるが、マリスはまだ7歳だぞ!
「マリス覚醒者だから、性の自覚が早いでしょ。だからジュリアス君の嗅覚に、引っかかっちゃったのね。」
ウフフフ…… とユーリアはほほ笑むが冗談じゃない!
という事は俺達、かなり早い子離れにならないか?
「絶対100歳までは持たせるぞ。」
「ウフフ、出来るかしら?」
ユーリアは笑うけれど、俺はかなり真剣だった。
結婚へと動き出すのは平均年齢100歳~
それまで子は、親達の領分だからな、ウン!
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




