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18/22

クリスマスイブ☃ 8

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 




 外を眺めると雪は相変わらず積もっているが、比較的過ごしやすい夜だ。


「今日はホントに穏やか冬の夜ですね。」


 レミオが微笑みながら、彼も外を眺める。

 遠くを見ると、ジュリアスがいるだろう広場の光が見えた。

 商店街もイルミネーションで彩りを添えられ、今年のクリスマス素晴らしいモノになった。


「ジョーダン、ホント今年は最高のクリスマスイブね。マリスちゃんに感謝だ。」


 仲のいい近所の者達がそう言って、飲んでいるカップにカチンと鳴らした。

 ”マリスちゃんに乾杯”と言葉を添えて……


「来年は全世界が、この様なクリスマスイブを迎える事でしょう。」


「だろうな。それと同時に、エコ魔石も拡販するだろう。」


「一番いい形で収まったな。ジョーダン、世界は魅了されるよ。この光の世界に……」


 歌い継がれていた、覚醒者のクリスマスソング。

 憧れ懐かしみ、少しずつ増え続ける、魅了するかの世界。


「コレがクリスマスの、満点の輝きなのですね。地上の星々たち……この目で実際に見る事が出来ました。」


 そう喜び俺達を見るレミオ。


「どうですか?この感謝の気持ちを込めて、健やかな地上の天使達に贈るのは?」


 つまり近くにいる神に、子供の願いを祈るという事だった。

 いつもは帰り道に各家庭で行う事を、今回は皆で団体で行う。


「そうだな。そろそろおしまいの時間だ。行こうか。」


 提案の時間帯もちょうどいい頃合い。

 今年は何かと忙しかったから、家でゆっくりと過ごしたい。

 皆でぞろぞろと歩きながら、冬の夜空を眺める。

 騒げば教会の子供達が起きてしまうから、心持コソコソした気分だった。


「なあ…… 孤児院の入り口が明るいな。」


「そうだな…… ありゃカイじゃねぇか?何してんだアイツは?」


「まったく…… まさかこんな日にも、メイヤーの尻追っかけてるのかい!」


 カイの母親が怒りを顕わにしている。


「イヤそうじゃなさそうですよ。だってあそこにいるのは…… 」


 そうジュリの友達の子も、その辺をウロウロとしていた。

 もちろんそれ以外もチラホラと同世代の子が、孤児院の入り口を出入りしている。

 そして俺達の存在に気づき、手を振って招いていた。


「なんだありゃ?いよいよもって訳わかんねぇな?」


 メイヤーちゃんの父親が首を捻る。

 それを横目に見ながら、俺は嫌な予感がムクムクと湧きだった。


「ねぇ…… ジョーダン?」


 ユーリアも勘が冴え渡っているようだ。

 この流れはたぶん、うちの娘が関係しているだろう。


「レミオ…… これはマリス案件か?」


 俺がレミオに聞くと、フフフ……と笑うばかりで返事はない。

 だが確実にそうなんだろうという事はわかった。

 入口近くなると、カイロとメッセージカードを渡される。

 そして中の案内について行くと………


 壁に子供達の絵が飾られている部屋へ通される。

 大きく手を繋ぎ、回りに色鮮やかな絵が描かれている。

 それとは別に、まだまだ鉛筆握りたての小さな子ら絵も飾られていた。


「あの雪ダルマのライトは、マリスちゃんとメイヤーちゃん作ですよ。」


 シスターマリアンヌが、笑いながら教えてくれた。


「とっても素敵でしょう。子供らが企画したのよ。夢の様な空間ね♪」


 テーブルには、笑顔のランプ。そこに添えられた言葉「皆が笑顔」。

 他のテーブルにも「皆が幸せ」と、拙い文字で添えてある。

 何ともほのぼのとしながら、心暖まる空間。

 外の冷たさなど忘れ、心の中からポッと暖かくなるようだ。


 中央のテーブルにはホットワインと、簡単なつまみが添えられている。

 この世代の考えた、俺達大人へのおもてなしだ。

 ちょうどジュリアスを見つけた俺は、ヤツを捕まえる事にした。


「よう!なかなか粋な歓迎パーティーだな?このつまみもお前らが考えたのか?」


 そう聞いて見ると、とてもイヤそうな顔をしてジュリを指差す。

 つまり…… こいつら脳筋は考えつくはずがない。


「だろうな…… お前もこんな洒落た感じを意識向けろよ。」


 俺は自分のイタイ記憶を思い出し、一応先輩として忠告した。

 こんな所に、男の甲斐性を理解されるのだ。


「ジョーダンさん、暖まりますよ。ユーリアさんもハイどうぞ。」


 ジュリがホットワインを渡し、庭へ行くように伝える。

 庭の近くに行くと、カイロを手渡される。

 ホント至れり尽くせりとはこの事だろう。


「ジョーダン、何だか恥ずかしいわね。」


「まあな…… 」


「フフフ、ジュリアス君世代に、デートのお膳立てして貰った気分だわ。」


 全くのその通り……子供のいる前でイチャイチャ出来る訳もなく、でもその場の雰囲気はまさにソレ。

 庭に出れば更に何とも言えない幻想的な世界が拡がっていた。

 今までのクリスマスイルミネーションが動ならば、ここはまるで静の世界だろう。

 しっとりとした冬の空と聖夜を彩る相応しい柔らかな光。

 ジュリアス世代の子らが、しっとりしたクリスマスソングを奏でていた。


「まるで世界樹のようね……… 」


 庭に中央に位置する木は、たくさんの光の粒に彩られていた。

 木の根元には、たくさんの光の群れ…… そこに沢山の大人が行き、涙する者達がいる。


「ジョーダン、あれはマリスの絵じゃないかしら?」


 木に向かって歩いていると、通路に置かれた行燈に指を差すユーリア。

 近づいて見れば、「おとうさん、おかあさん、いつもありがとう。ふたりのこどもでしあわせなの。」と書かれていた。

 オイオイ!参ったな。さすがの俺も泣きそう……でも隣の……


「私も貴女が娘で幸せよ、マリス。」


 ユーリア号泣!だよな……おかげで俺の涙は引っ込んだ。

 グスグス言うユーリアを連れて、木の処へ行けば……

 ピンクの鮮やかな花束が幹を飾り、幹の下に大きめの筒型のライトに文字が書かれていた。

 そこに集う様に、子供達の手作りライトがたくさん置かれている。


「ジョーダン、とても可愛いわね。」


 グスグス鼻を鳴らし、指を差し、微笑むユーリア。

 木に飾られた光の巾着袋。それがこの木を世界樹の様に彩っていたのだ。

 巾着には、子供の手形と名前と歳が添えられている。

 たくさんの大人達が自分の子供の手形を探す為、あっちこっちと歩いていた。


「フフフ、マリスの手形もあるのかしら?」


「ジュリアスのもあるのかな。」(笑)


 そう言ってウロウロと探していると、


「ジョーダンさん、ジュリアス君の抱負を読んだか?」


 いったい何を言ってんだ?


「あの筒型のライトに、来年この町を出る若者たちの抱負が書かれているんだ。」


 そのライトの周りには、たくさんの大人達が集い、泣く者、微笑む者、困った顔をする者など、様々な反応を見せていた。


 ”オイオイ…… ジュリアスの抱負って何だ?”


 俺はヤツの書いた、抱負とやらが心底恐ろしい。

 散々ごねて、やっと学園の行く事になったのだ。

 その経緯がある分その抱負なるモノが、読んで精神苦痛を伴いやしないかと不安。


「ジョーダン、とりあえず見るわよ。」


 ユーリアもその事から、不安そうな顔をしている。

 筒状のライトは4つ、その何処かにジュリアスの抱負が書かれている。

 眺めて行くと、一人一人個性ある抱負が書かれていた。


「とりあえずめちゃくちゃ強くなる。なって偉くなる。以上!カイ」


「…………… 大丈夫か?」


「カイ君だから、大丈夫よ。」


 俺は違った意味の不安を抱えた。マジやって行けるのかだろうか、地上で?


「世界をアッと驚かせて魅せる。最高の光輝くモノを創る。ジュリ」


「まあ。ジュリだからな………」


「光り物大好きだもの、ジュリさん。」


 とりあえずジュリは強いからな、いろんな意味で大丈夫そうだ。

 それ以外もまあ、個性が良く出た抱負が書かれていた。

 そしてついにジュリアスの抱負をみつけた。


「自分の望みを叶え、必ずリコの町へ帰る。ジュリアス」


「………なあ、アイツの望みってなんだ?」


 俺はポツリと呟いた。アイツの望み?


「地上での望みよね?」


 ユーリアから言われ、そうだろうと俺が言うと、


「私知らないわ。地上のジュリアスを。」


 そう俺達は、マリスの兄ジュリアスしか知らない。

 とにかく、リコに戻って来るのは確かのようだ。


「ジュリアス君、リコへ帰って来るのね。帰って来たらご馳走を作らなきゃ。」


 泣き笑いの様な顔のユーリアを見て、俺も何となく可笑しくて堪らなかった。

 アイツらしいと言えばアイツらしい。

 基本がまったくぶれていないのだ。


「俺の家はこのリコと思っている。俺が帰る所は()()だ。」


 地上に戻り学園に行くように説得した時も、行きたくない。

 学習内容はもう終わっているから、行く必要がないと、ごねてごねてホントに……


「兄上が物分かりの良い奴と言っていたが、ウソだったなぁ。」


「そうね。とっても面倒だったわね。」


 二人で遠い目をして、顔を見合わせ微笑んだ。

 そして気付く……


「こんな所にマリスの手形があるわ。」


「ホントだな。ジュリアスの近くか…… 」


 何ともまあ…… らしいと言えばらしい事。

 片方は将来への抱負、もう片方は成長途中の小さな手形……

 何とも可愛らしい子供らなのだろうか。


「私達もこんな時期があったのよね。」


「そうだな。あったんだよな。」


 遠く未来を見据える目を、今は近くを見据える目へと変わった、大人達(おれたち)


「あの子達、ずっとあのままなのかしら?」


「うん?どういうことだ?」


「ジュリアス君、マリスを囲っているわよ。」


「ハア?!」


 戦闘系が早く雌を決める話は聞いた事があるが、マリスはまだ()()だぞ!


「マリス覚醒者だから、性の自覚が早いでしょ。だからジュリアス君の嗅覚に、引っかかっちゃったのね。」


 ウフフフ…… とユーリアはほほ笑むが冗談じゃない!

 という事は俺達、かなり早い子離れにならないか?


「絶対100歳までは持たせるぞ。」


「ウフフ、出来るかしら?」


 ユーリアは笑うけれど、俺はかなり真剣だった。

 結婚へと動き出すのは平均年齢100歳~

 それまで子は、親達の領分だからな、ウン!






読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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