クリスマスイブ☃ 7
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
今日は冬至です。
【 ジュリアスside 】
教会から配られたエッグノッグ。
俺達用に少しアルコールが落とされている。
「久しぶりに飲むな。教会のエッグノッグ♪」
カイにとっては懐かしの味なのだろう。
とても嬉しそうに飲んでいる。
俺は8歳まで地上だったから、今回初の教会エッグノッグだった。
柔らかな濃厚さのエッグノッグ。そこにほんのり香りのいい酒。
「ホントに大人の仲間入りなんだなって気持ちになるわね。」
ジュリもエッグノッグを飲みながら、考え深いようだ。
「そうね、大人のエッグノッグ。美味いと思えるの。」
子供の頃に、このエッグノッグを美味しいと思えるか?
その問いに皆が苦笑交りな笑いが漏れる。
つまりそれだけ、大人に近づいているという事なのだ。
「そろそろ時間ね。配置につきましょう。」
「皆わかっているわね。頑張るわよ。」
ジュリの掛け声に、俺達は恭しく頷く。
今回は子供達の企みに、乗っかったような俺達だった。
だけどもう一つの仕掛けに関しては………
「チビ共には負けられないのよ。私達は大人になるのだから。」
子供の発案のまま終わらせては、俺達世代の名折れ。
俺達は大人になる。だけどある意味まだ子供の中間点。
「じゃあ頑張って行きましょう。皆に幸せを届けるために♪」
さあ…… 楽しいクリスマスキャンドルナイトの時間だ。
****************
【 ジョーダンside 】
マリスが手を振った。バイバイと……
ジュリアスと手を繋ぎ、子供達の集合場所へ向かって行く。
回りもそんな者達がほとんどで、辺りはほのぼのとした空間だった。
「今年はホントに忙しかったわね。」
ユーリアがニッコリ笑い、俺を見る。
「貴方もお疲れ様。ホントよく頑張ってくれたわ。」
苦笑交じりの微笑みに、俺も同じ様な顔になっている事だろう。
娘のマリスは俺が言うのもなんだが、ビックリ箱のような子だ。
俺も幼少の頃は大概だったが、輪をかけて大概なのが我が娘。
それでも俺みたいに害はなく、むしろ周りを笑顔にする。
だから俺も父親の名にかけて、毎回頑張っているのだ。
「この前さ…… 余りにも効率よく錬金やら何やらの行使力良くて不思議でよ。」
俺は困った顔でユーリアを見た。
するとユーリアもスンっとした顔で「貴方もなのね。」と呟く。
どうやら俺達はマリスのムチャ振りを聞いているうちに、とんでも状態になっていた。
「そっか、ユーリアもそうなのか。」
「ええ、お陰様でって言うべきなのかしら?」
フフフ…と笑って俺を見るユーリアの肩を俺は抱いた。
「まあお互いこれからも頑張れッて事だろうよ。」
「早めの神様からのプレゼントって事ね。頑張るしかない様だわ。」
ホントに俺の娘はとんでもないヤツだ。
だがそれは覚醒者たる所以で仕方がない事。
それにうちの娘は天使だから、いつも幸せを撒いている。
だからこそ周りもマリスに対して寛容で、むしろ手伝っている。
その先に何が待っているか知りたいがために……
このリコの町はそういう者達が集まって出来た町だから、異能と異才の集団で形成された町なのだ。
子供達が風呂から上がり、集団で教会の方へ移動を開始している。
たぶん今日の湯船には、ユズが浮かんでいる事だろう。
スヌードの星ボタンが子供達の位置を示す。
キラキラと瞬く地上の天使達。
可愛いクリスマスソングの歌声が聞こえる。
「ウフフ、とっても素敵な移動だわ♪」
ニコニコと嬉しそうに笑う、ユーリア。
あのお揃いの星ボタンは、ユーリアがジュリに依頼したものだった。
「確かにあれなら子供の位置がわかるな。まるで天の川の様だ。」
俺がそう言うと、一段と嬉しそうな顔のユーリア。
つまりそういう意図でお願いしたのだろう。
「ジョーダン、ユーリアさん。」
メイヤーちゃんのご両親が挨拶に見える。
「いつもうちの子がお世話になります。今日も一緒に回っていたようで。」
「それは私どもの言葉です。いつもメイヤーちゃんにフォローさせて、ご迷惑をお掛けして……」
「アハハ!マリスちゃんの迷惑の根本には、いつも素敵な思惑がありますからね。喜んでしますよ、うちの子は♪」
「今年はくじに大金を叩いたようで、ありがとうございます。おかげで今年は無事でした。」
私の意図を読んだのか、メイヤーちゃんのご両親は笑っている。
「今年はジュリアス君がアレだったわね。」
「そう、今年はジュリアス君がなかなかだった。」
メイヤーちゃんのご両親の話では、どうもジュリアスにギャンブル運はないそうだ。
なるほど…… アイツにも欠点があったみたいだ。
「もう落ち込み方が凄くてね。常日頃のジュリアス君を知っているだけに、揶揄いたくなったもんさ。」
ジュリアスの澄まし顔は、さすがに崩壊した様だ。
しかしギャンブル運がないとは、哀れな奴……
そんな話しながら商業ギルドの会場へ移動をしていると、たくさんの人達から声をかけられる。
大体言われる事は、今年のクリスマス期間がとても楽しく過ごせたという喜びの声。
「毎年この様なカタチのパーティーを楽しみたいですね。」
「ホントに、あのダンスパーティーも見ごたえがあったな。」
「だが……マリスちゃんの表情を見ると、ロボットダンスは変化が激しいようだな?」
覚醒者のマリスは、常に周りから目を向けられている。
彼女の反応で、間違いか失敗か判り易いからだ。
どうしても時間が経てば、もともとのカタチは変わっていくものだ。
いい変化なら喜ぶし、悪い変化だと不機嫌にもなる。
そんな当たり前の反応を見ているのだった。
「ロボットダンスをジュリアスに伝えようとした様なんですが、何分うちのマリスは運痴でして…… 」
マリスごめん。お前は隠そうとしてるが、皆もう知っている。
「ですよね。でもマリスちゃん真面目だから…… 」
「ホントに頑張っているものね。」
本人は気づいてないが、アイツが毎日ロボットダンスらしきモノの練習はけっこう見られていたのだ。
商業ギルドの会場に入ると、コチラもオシャレにエコ魔石を使った装飾品で飾られている。
「ジョーダンさん、今年はいろいろとお疲れ様です。」
ギルドマスターのレミオが俺に声をかける。
コイツもマリスのお願いに巻き込まれた人物の一人だ。
「レミオもお疲れ!今年はうちのマリスがいろいろとすまないな。」
「フフフ、貴方の幼少の頃に比べれば対した事ありません。とても楽しいですからね。ええ、悲惨ではありません。歓喜です。言っている意味わかります?」
コイツは幼少の頃俺の世話役だった者だ。
つまり俺がやっちゃだった頃、いろいろと巻き込み苦労させた。
「間違っても髪を燃やすとか、建物を壊すとか、そんな事ではないですからね。貴方の様な悪魔から何故あれ程の天使が生まれるのか?ホント世の七不思議に入れたい程です。」
コイツホント俺が髪を燃やした事、未だ恨んでいやがるな。
まあ確かにあれはやり過ぎたと、俺も反省している。
回りのテーブルには、軽めの軽食が並べられ、皆談話の最中だ。
ここで行われるのは今年の反省会やら来年に向けての話。
気楽な感じでダンスをし、報告し合うのだ。
「そういえば貴方達も、バタバタと何かしていましたね。」
「ああ、たぶんその内目にするから、その時見ればわかるよ。」
レミオから聞かれた事に、適当な返事をする俺。
それを見てユーリアは呆れ返っていた。
「ジョーダン!」
おや?ヨッカ爺とラディウスが人をかき分けやって来る。
「お疲れ様、どうした?」
「どうしたとは暢気じゃの?心配事じゃよ。今回はマリスちゃん大暴れしとるの?」
ヨッカ爺が、心配そうに俺に聞いて来る。
確かにいろいろと提案し動いていた。
「どうもクリスマスというモノは、本来アレが本当の姿らしい。」
俺はキラキラのイルミネーションと、クリスマスツリーに指を差して言う。
「確かにクリスマスソングを聞けば、そうじゃろうな。」
今までクリスマスソングは歌われ、歌の中の世界とはどんな世界だろうと想像したものだ。
憧憬の思いに駆られながら歌われ続けた、クリスマスソング。
今その世界が、現実のモノとして現れたのだった。
「これがクリスマス。早く世界に発信したいものです。」
余りにも眩い光の世界。
光と音のハーモニーと、どこかの国の覚醒者は言った。
確かに光と音のハーモニー。
特にオタ芸など正にそうであった。
「じゃがな…… これだけ思い出したという事は、それだけ負担も大きいという事じゃ。様子をちゃんと見とくんじゃよ?いつ高熱が出てもおかしくないのでな。」
「マリスさんが今まで大丈夫だったのも、ジワジワと思い出したからです。身体に負担の来る思い出し方じゃなかったのでしょう。」
今回マリスは、大暴走状態だったとも言える。
クリスマスにかこつけ、あれもこれもと手を出し放題。
ジュリアスとのお約束の、報連相は意味をなさなかった。
「わかってるよ。用心はしているつもりだ。」
「お願いしますね。教会の方にも一応用心する様にと伝えました。」
何事なくとも、やっぱり何事もあるマリス。
それがマリスがマリスたる所以なのだろう。
「結局教会には迷惑をかけるのね。」
ユーリアも困った顔でため息をついた。
今回マリスが提案したのは……
クリスマスイルミネーション・コンテスト・イミテーション・ペンライト・フラッグバトン。
そしてスキー関連だったよなぁ……
コンテストに関係してもいろいろ考えていたな。
報告しない部分もあると思う、今回は特に……
「ユーリア、こりゃありそうだな。」
よくよく考えれば、余りの多さに驚いた。
「たぶんダンスでも、相当頭使っていそうなのよ。」
そういやそれもあったな…… 運痴な分だけ捻り使っていそうだ。
しまった……… どうやら俺達もマリスと一緒で浮かれていたようだ。
「私も一緒にマリスちゃんと浮かれていました。申し訳ございません。」
レミオも珍しく落ち込み謝って来る。
というかコイツも、どうやら浮かれていたようだ。
「このクリスマスイルミネーション。人をこう高揚させる効果があるんですよね。」
ラディウスも仕方なさそうに笑っている。
俺達の話を聞いている他の大人も苦笑い。
新しいモノが何より好きで、惹かれるのだ。
それが、異能と異才の集団の者達たる所以。
「それじゃ気を付けて観察じゃな。マリスの様子に気を配るんじゃ。よろしく頼むぞ。」
皆がマリスの様子を観察する事となった。
それはいつもの事だが、今回は体調管理。
いつも何かしら巻き込む、マリスらしい出来事だ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




