クリスマスイブ☃ 1
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
遂に来ましたクリスマスイブ。
お父さん達はもういません。
テーブルにはメッセージカードとクリスマスコイン。
「ウフフ♪待ちに待ったクリスマスイブ♪そしてクリスマスコイン♪」
お気に入りの肩かけバックをイソイソと用意して、クリスマスコインを入れる。
ウフフ、今日は自分でお買い物♪好きに選べるお買い物♪
「楽しそうだな。マリス。」
そんな私を面白そうに見ているお兄ちゃん。
「おはよう、お兄ちゃん♪」
「おはよう。今日も二人でゆっくりだな。」
お兄ちゃんがニッコリ笑って、私の頭を撫でる。
撫でられる頭が気持ち良く、フニャンと笑ってしまうマリス。
そんな私を見たお兄ちゃんは、私の鼻を摘まんだ。
「さて朝ごはんを用意しよう。何にしようかな?」
昨日の晩御飯はシチューじゃなかったけれど、オニオンスープがありました。
お兄ちゃんは保管庫から、ゴゾゴゾと材料を取り出す。
「スープにウィンナーを入れて、そのウィンナーをホットドッグにして作ろうか?」
お兄ちゃんがスープを暖めながら聞いて来た。
頭にホカホカのウインナー、それにシャキシャキのキャベツが浮かんでくる。
ジュルリ♪美味しそうなの。
ヨダレを出さんばかりのマリスの様子に、返事の必要はなかった。
お兄ちゃんが沸騰したスープに、ウインナーをドボドボっと入れる。
する事はないが隣を陣取っている、マリス。
「温かいね、お兄ちゃん。」
「そうだな。温かいな。」
スープの湯気と火の近く、ほっこりする待ち時間だった。
お兄ちゃんにキャベツを渡し、ササっと千切りして貰う。
「お兄ちゃん上手なの♪マリスも練習する!」
「まだマリスの手には、包丁が大きすぎる。もう少し大きくなってからだよ。」
ホットドッグ使うパンに切り込みを入れ、温める。
「そろそろウインナーも良さそうだね。マリス、パンにキャベツを入れて。」
「了解なの♪」
ウンショウンショと入れると、ウインナーが乗って来た。
その上にトマトケチャップをブニュッとかけて、お皿に乗せる。
お兄ちゃんはスープの味を確認し、少し水を足していた。
「少し濃くなっていたよ。」
もう一度確認して、スープ皿に移し入れていく。
「ハイ、完成!食べようか。」
今日もお兄ちゃんと二人だけの朝食。
お父さんとお母さんは、街の皆とミーティング朝食中だろう。
「お父さんとお母さん、今年は何処だろう?」
「そうだなぁ…… うっかり聞きそびれたな。」
屋台を皆で担当するけれど、毎年くじで選ぶため同じお店ではない。
だから親が担当するお店によって、子供達の間には個人的な当たり外れが存在した。
「肉のお屋台だったらいいな。大きめに貰えそうだ。」
「マリスは射的がいいの。確実に貰えるもの。」
子供の中の外れは、飲み物屋さん。
多く貰っても微妙だし、たくさん飲めばトイレが近くなる。
大人達の間では、飲み物屋さんは大当たり。
温かな飲み物を入れるだけ、場所も暖かいしとっても楽な仕事だ。
置かれたメッセージカードに、担当のお店は書かれていない。
ただ一言………
”ハッピー、クリスマスタイム♪食べ過ぎるなよ!”
毎年、毎年、マリスは、美味しいと思うと、それを黙々と食べるのだ。
4歳の時は鶏のから揚げを5皿。
5歳の時はドーナツを全種類制覇。
6歳の時はチーズフォンデュの場所を陣取っていた。
”今年は大丈夫なの。だって来年は祝福の儀があるんだし!”
そんな決意を胸にしているマリスを、ジュリアスは生暖かい目で見ている。
「お兄ちゃんは、なんてメッセージカードに書いてあるの?」
「ああ、ダンスパーティー楽しみにしてるって。」
なるほどお父さん達も、お兄ちゃん達のダンスパーティーが見れるもんね。
今年はお兄ちゃん最後のダンスパーティーだし、よかった、よかった。
「それじゃあ、会場へ行って親父達を探そう。楽しみだな♪」
「そうだね、お兄ちゃん♪」
パリッと音をさせながら、ホットドッグをモグモグ食べる。
目の前でお兄ちゃんも、3個目のホットドッグを食べていた。
今日はお兄ちゃんにクリスマスプレゼントを渡す日だ。
昨日お父さんとお母さんから、マリスにお任せと言われてしまった。
出来ればメッセージカードに書いて欲しかった。
マリスは今ドキドキ中なの。
気がつけば、朝ご飯を食べ終わっている。
という事は………クリスマス、プレゼント大作戦。
午前中に渡して、一緒に遊ぶつもりなの。
さて、どうやって切り出そう?
ウダウダしているうちに、更にお片付けも終わってしまう。
仕方ない、ここで言うのよ。
いよいよ作戦決行の時!
行け、マリス!女は度胸だ!!
「あのねー!お兄ちゃん!!」
脈絡もなく声を張り上げるマリスに、驚くジュリアス。
「どうしたんだ、突然?大丈夫か?」
「だ、大丈夫なの。あのね、ク、クリスマスプレゼントがあるの。」
こぶしを握り、フンフンと鼻息荒く言うマリス。
その決死な様子に、不安になるジュリアス。
「一度深呼吸したらどうだ?マリス、とにかく落ち着こう。」
そのクリスマスプレゼントなるモノは、大丈夫な物なのだろうか?
「お父さんとお母さんと共同プレゼントなの。それでね、マ、マリスと遊んで欲しいの。」
やっと言えたマリスは、ホッとしてニパーと満面の笑顔。
ジュリアスも、共同という言葉にホッとしてほほ笑んだ。
「ホントに?!凄く嬉しいよ。ありがとう、どんなプレゼントなんだい?」
マリスはイソイソと、お父さんとお母さんから教えて貰った場所まで、お兄ちゃんを誘導する。
そこにはスノージャケットとショートのスキーボード。
そして雪用の眼鏡とスヌード、他にも細々と取り揃えています。
それらを見たお兄ちゃんはポカーンと…( ゜д゜)
とっても珍しい顔を貰っちゃった。イエイ♪
「コホン、では説明します。こちらショートスキー、またはファンスキーというものです。ハイ!」
「ありがとう…… 」
お兄ちゃんに渡すと、呆然としたまま受け取るお兄ちゃん。
「それはお父さんら有志が作成しました。テスト走行もちゃんとしているよ。魔力を込めると熱を伴うから……」
ゴゾゴゾ…… 、手袋を取り出してお兄ちゃんに渡す。
「用心と防寒に備えて手袋です。ついでにこの雪用メガネは、光の反射を和らげるモノです。」
「ウン…… ありがとうございます。」
訳も解らないまま受け取るお兄ちゃん。
まだまだ呆然継続中……
「そしてこちらスノージャケットはお母さんからです!スヌードはマリスが頑張って作りました。」
「マリスの手作り…… 」
私が持っているスヌードを見て、私を見つめるお兄ちゃん。
「と、とりあえず着て下さい。マリスのもあるから、一緒に遊ぼう、お兄ちゃん。」
私がそう言うと、お兄ちゃんが俯いた。
どうしたんだろう?ダメだった??
「マリス、もしかして…… バタバタしていたのはコレが原因?」
お兄ちゃん申し訳なさそうに、マリスを見て聞いて来る。
「ううん、マリスの物もあるよ。乗り物あったら便利だもん。」
だからマリスは首を振って否定する。
お兄ちゃんが気にしない様に、ソレだけじゃないよって……
「犬ぞり代わりって事か?」
お兄ちゃんは呆れた様に笑った。
そんなお兄ちゃんの様子に、ホッとするマリスだった。
早速お互い部屋へ戻って、遊ぶ為に着替えをする。
マリスのジャケットは、ラベンダーカラーに刺し色が黄色。
帽子も黄色♪手袋も黄色♪ルンルンルン♪♪
ドアを開け家の外へ出ると、お兄ちゃんが待っていた。
お兄ちゃんの恰好は、ジャケットが黒をベースに刺し色に青。
帽子も黒、手袋も黒。マリスがあげたスヌードが目立ってる。
雪用メガネ(ゴーグル)もカッコよく決まってるの♪
何より…… スキーボードのサイケなデザイン。
青の板に白い模様、魔力を入れると赤に変化する仕組みです。
「お兄ちゃんどう?寒くない?」
「寒くないよ。それにマリスのスヌードで凄く暖かい。コレ俺とマリスの色だな。」
お兄ちゃんがニッコリ笑い聞いて来た。
「何となくそうなったの。ダメだった?」
「いいや、嬉しいよ、マリス。」
「ならよかったの。」
ホッとして笑った。
そして使い方を教えていくマリス。
お兄ちゃんは、マリスのキックボードも気になっている様だ。
「何でマリスはそっちなんだ?」
そりゃ一緒じゃないと気になるよね。
「マリスはこっちの方が操作しやすいの。お兄ちゃんは運動神経いいから、そっちの方が逆にいいと思うの。」
フ~ン…、と言いながら、ボードを装着するお兄ちゃん。
「魔力を入れなくても滑れるの。とりあえず魔力なしで試してみて。」
「わかったよ。」
お兄ちゃんは家の前の少し斜面になっている所へ移動している。
辺りを見れば、雪一面の銀世界だ。
遠くにメイヤーちゃんのお家が見え、煙突の屋根から煙が立っている。
”そう言えばメイヤーちゃんも朝食作るって言っていたけど、今頃カイ兄ちゃんと食べているのかな”?
ボォー… と眺めているその横で、お兄ちゃんはいろんな動きをして確認している。
スーッと滑り、回る様に止まったり、片足で滑ったり、飛んだり………
「なるほど…… 」
お兄ちゃんは考え中……
そしておもむろに、下りへ向かい滑り出す。
スーと足を揃え滑走し、足を交錯させ後ろ向きになりクネクネと滑り、横に向いて板をずらして滑ったりしている。
”お兄ちゃん凄いの。もうコツ掴んでる。”
ザッと切る様にターンをして止まる。そして息を吐きまた滑り出す。
斜面を屈身姿勢でグングン滑走し、雪山に向かいスピードを活かして登り切って……
”ウワ~~、一回転しちゃった?!”
そのまま何事もなく着地して、ザザザー―と滑っていく。
ボコボコになっている所も、ヒョイヒョイと避ける。
”ホント理不尽なの……… ”
お兄ちゃんがカッコいいと思うけど、同時に出来ない自分が悔しいの。
何なんだろう… この気持ち。
”いいなぁ。”
手元のキックボードを目を向けて、ハア―とため息をついて進むマリス。
”一緒に遊ぼうって言ったのにな……”
心の中で呟きながら、めちゃくちゃ楽しそうに滑るお兄ちゃんを見ると……
”でも楽しそうで良かったの。”
クリスマスプレゼント作戦は大成功♪
「マリス!これとっても楽しいよ。ホントにありがとう!!」
「お兄ちゃんが楽しくて、マリスも良かったの。」
急斜面を滑って、楽しむ二人の笑い声が木霊する。
そんな楽しい午前の時間。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




