クリスマスシーズン☃ 10
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
今日は朝から大忙し。
マリスじゃないよ、お父さん達です。
「それじゃ行って来る。マリスは、ジュリの所へ行くんだな?」
「うん、メイヤーちゃんと一緒に♪」
「ジュリアスはダンスか?」
「ウン、ペンライトに変わったからね。」
「ジュリさんの所には、私も用事があるのよ。帰りは一緒に帰りましょう。」
「午後から、マリスはお兄ちゃん所へ行くの。」
「ジュリも午後から、ダンスかもしれないよ、母さん。」
「そりゃそうだな。明日が本番だもんな。」
お母さん悩み中。お父さんを見て…
「それじゃあ今から行って、お話だけでもしてかしら?お願いしたい事があるのよ。」
何やらお母さん、ジュリ姉に相談があるみたい。
「一時間程度遅れるでいいか?」
「ええ、お願い!マリスの事もお願いしなきゃね。迷惑かけてはダメよ。」
そう言って二人は出掛けて行った。
外ではたくさんの大人達の話声や、笑い声が聞こえる。
皆、今日の作業参加なのだろう。
“朝早くから、お疲れ様なの。”
私はバイバイと手を振ってお見送りした。
「さてマリス。」
お兄ちゃんはニッコリ笑顔で、私に振り返る。
その笑顔に、マリスは警戒するの。
「ハイ、お兄ちゃん。」
「さっき母さんが言った様に、迷惑かけない。思いつきで、言わない。できるかな?」
「………前処します。」
胡乱げな目線を向けて来るお兄ちゃん。
……前処する努力はするの。
お兄ちゃんは、諦めたようなため息をついた。
「とにかく朝ご飯を食べよう。目玉焼きとか作ろうか?」
「マリスは半熟が好みなの。最近卵割るの上手になったのよ。」
「それじゃどちらが上手に割れるか比べるよう♪」
フライパンを出すその横で、マリスは卵をパッカッと割った。
”フフン、今日の卵も綺麗に割れた♪”
卵が綺麗に割れると、とっても嬉しい。
そのうち、片手で割れる様になれるかも♪
お兄ちゃんが、マリスの卵をフライパンに入れる。
マリスの卵とお兄ちゃんの卵が引っ付いた。
「マリスの卵は左なの。」
「わかっているよ。一応離したけど、引っ付いたな。」
塩をパラパラ振って、フタをした。
マリスは数を数えて、ふたを開けるとちょうどいい半熟仕上げ♪
「皿がいい?それとも直接パンに置こうか?」
「マリスはパンがいい♪」
パンに半熟の卵は美味しいの。
ピョンピョン飛びながら主張する。
お兄ちゃんはそんなマリスに苦笑し、目玉焼きをパンに置いた。
そしてお母さんが作ってくれたスープを置けば、朝食の完成だ♪
「ゆっくりと朝食を食べるのは、久しぶりだな。」
「クリスマスシーズンは忙しいの。」
「そうだな、休みでも注文品届けたりしたからね。」
マリスのお店は大繁盛。
今日はイブの前日という事で、どこのお店もお休みなの。
半熟の目玉焼きが乗ったパン。
大きく口を開けてパクッと食べる。
”やっぱり半熟目玉サイコーなの♪”
幸せな顔でモグモグと食べる、マリス。
そんなマリスを見ながら、お兄ちゃんものんびりと食べていた。
「マリス口の端に、卵がついているよ。」
指でぬぐってくれたお兄ちゃん。
その汚れた指をペロッと舐めて綺麗にする。
それを見てマリスは思わず呟いた。
「なんかエッチ~の♪」
「ハア?!」
「お姉ちゃんがね。男の色気ランキングで、舐めるしぐさがあるって言ってたもん。」
私が楽しげに話をすると、お兄ちゃんは呆れた様な顔をする。
「フ~ン、そうかよ……」
そして何かに気づいたように私を見て、お兄ちゃんはニンマリと笑う。
「それじゃ…… さっきエッチとか言ってたけど、男の色気をマリスは感じたって事か?」
そう言って、流し目で私をチラリと見る。
言われてみれば、確かにそういう事になるのかも?
「そうだね?そういう事なのかな??」
だけど所詮はまだまだ幼女なお子様だ。
お姉ちゃんから言われた言葉を、そのまま鵜吞みして言ったに過ぎない。
だけど……
「そっか♪」
何故か満足気なお兄ちゃん。マリスには理解できないけれど……
”お兄ちゃん、今日はなぜかご機嫌なの♪”
それはそれで、幸せだなと思うマリスだった。
食事が終わりお片付けしていると、メイヤーちゃんとカイ兄ちゃんが迎えに来る。
雪の道を歩きながら、明日の話をしている。
「明日は13時集合でいいんだな。」
「広場の方にだろ。キャンドルの方も終わっているんだろう?」
「昨日イベント組以外のヤツが、後は飾るだけと言ってたぜ。」
昨日私達はイベント会場にいたけれど、技術職ジョブを持ってるお兄ちゃん達は、孤児院で細かな所を片付けたそうだ。
「見つからない様に、でもすぐ出せるようにしてきたと言っていた。」
今日は孤児院でも大人の出入りがある分、そこがとても心配事だったのだ。
「昨日のイベントは、ちょうどいい目くらましだったな。」
おかげでバレない様、ばっちり任務完了という訳だ。
「明日の朝ものんびり出来るな、マリス。またご飯一緒に作るか?」
「マリスちゃん、お兄ちゃんと朝ご飯作ったの?何を作ったの?」
メイヤーちゃんが、羨ましそうに聞いて来る。
でもマリスは卵を割っただけなの。
「メイヤーもやりたいのか?」
カイ兄ちゃんが、メイヤーちゃんの様子を見て聞くと、
「うん、私もお料理してみたい♪」
と、楽しそうに返事する。
「でもメイヤーちゃん、私卵を割っただけなの……」
「私スクランブルエッグ作れるよ。ハムも焼けるもん♪」
両手を上げて、自分のできる料理を話す、メイヤーちゃん。
そんな彼女を、ほのぼのと見ていたカイ兄ちゃんは、
「それなら伯母さんに聞いてみよう。メイヤー俺に朝飯作ってくれ。火は俺が付けてやるからな。」
「うん、わかった。楽しみにしてね、カイ兄ちゃん。」
「お前…… 」
訝しげな眼で見るお兄ちゃんに、カイ兄ちゃんはニヤリと笑った。
メイヤーちゃんから、スクランブルエッグの隠し味を教えて貰ったマリス。
”私も負けられないの!”
変なやる気に満ちていた。
お互いそれぞれの場所へと向かい……
今はジュリ姉のお家で、スヌード作りをしています。
棒を使ってウンショウンショと作業中。
メイヤーちゃんも、せっせと一緒に頑張っている。
「毛糸も大きめだから、隙間が気になる所は、後で糸を拡げる感じで引っ張ればいいわ。」
「隠しちゃえばいいのよ。気楽にしないと肩が大変よ♪」
お姉ちゃん達は、ふんわり素材の生地で、スヌードを作成中。
ジュリ姉は、それにつける星型の大きなボタンを作っている。
「そう言えばお母さんが、ジュリ姉に用事あるって言ってた。」
「そうよ。今私達が作っている物がそれ ね。」
昨夜の子供達の光る姿を見て、光る素材の小物を作って欲しいとお願いされたそうだ。
「もともとマリスのお母さんとお話していたのよ。それで明日のイブにも、光る物があると安全でしょ?だからお願いされたのよ。」
ジュリ姉達はその為、今サクサクと作業をしているのだ。
「お母さん達に、このボタンをマフラーにつける事をお願いするわ。」
今日大人達は、みんな広場に集まっている。
そこに出来上がったモノを持って行けば、依頼完了なんだそうだ。
「ダンスの練習へ行く時に、渡せばいいもの。」
おねえちゃん達は、楽しそうにスヌードを一つ一つ縫っていく。
「このまま光る素材を扱ったお店を、立ち上げようかって話をしているの。」
「いつかマリスちゃんが言ってた、推しカツ?のグッズを作るのも楽しそうじゃない。」
おねえちゃん達は将来を見据えて、行動を開始した様だ。
「お店はここではなく、学園のある都市でするの。ここより人口密度が高い方が、需要があるでしょう。」
「それに私も学園に行く予定だから、ここにいる皆と一緒に、リコの町を離れる事になるわ。」
ジュリ姉だけじゃなく、他のお姉ちゃん達も来年いなくなるという。
「だからそれまで、いっぱい遊びましょう。マリスちゃんやメイヤーちゃんの祝福の儀を見て、山を下りるつもりよ。あなた達がどんなジョブを貰えるのか、とても楽しみだわ。」
「お祝いも考えているの。楽しみにしていてね。」
この町にいるとどうしても、いつかはお別れがやってくる。
お別れした後、お姉ちゃん達にまた逢えるかな………
寂しい気持ちを抑えて、今はおねえちゃん達に甘えようと思った。
おねえちゃん達に思いっきり抱き着いて、暖かい身体のぬくもりをメイヤーちゃんと二人で噛みしめた。
ダンスの練習場へ行くとお兄ちゃん達や子供達がいる。
私達に気づいて手を挙げる、お兄ちゃん。
他の子供達も私達に気づき声をかける。
「あの子達は家でビクビク作業するより、ここならバレないと言ってね。」(笑)
布に絵を描いて、皆で一生懸命色付けをしている。
手を繋いだ絵を描いて、回りに笑顔とお花と鳥など描かれた絵。
「とっても素敵な絵だわ。目立つ所に飾りたいわね。」
「だろ♪他にも弟が紙に書いた絵を持って来た子もいたんだ。預かっていい感じに飾ろうと考えている。」
「防水加工だと、紙には無理だものね。」
「だからどうにか考えるさ♪」
お兄ちゃん達もいろいろ相談受けて、頑張っている様だ。
その後は、お兄ちゃん達とお姉ちゃん達はダンスの練習中。
私達お子様組は、布にお絵かきをして過ごしていた。
明日はいよいよクリスマスイブ。
どうか素敵なイブになります様に………
****************
「お兄ちゃん、明日の朝何を作る?」
「そうだな。帰ってまた残り火でスープでも作っておくか?」
「お兄ちゃん手伝ってくれる?」
「もちろん手伝うよ。だけど何を作ろうか?」
お兄ちゃんは私を見て聞いて来るけど……
「それマリスが、さっきお兄ちゃんに聞いたの。」
「そうだったな。それじゃあ晩御飯を食べて考えないか?」
立ち止まってマリスを見たお兄ちゃん。
「もし今日の晩御飯がシチューだったら……」
「パングラタン美味しいの♪」
私は頬を両手で押さえ、幸せの笑顔が溢れる。
「だろう。それによって考えた方がいい。」
チラつく雪が時々風に吹かれ、冷たい顔を更に冷たくさせる。
「マリスおいで。」
お兄ちゃんが両手を広げ、ほほ笑みながらマリスを呼ぶ。
寒い身体は正直で、お兄ちゃんに向かって歩き抱き着く。
お兄ちゃんが「ウンショ。」と抱き上げた。
首に腕を回し、肩に顔を埋める。
「暖かいね、お兄ちゃん。」
「そうだな。二人で暖まれば、暖かいな。」
ザックザックと歩く音を聞きながら、明日の事を考えた。
「お兄ちゃん、明日の午前中マリスにちょうだい。」
「午前中?一緒に遊ぼうって事か?どちらに明日は一日中ほぼ一緒だろ?」
「だけど…… 明日午前中マリスにちょうだい。」
「もちろん、マリスの願いだもんな。一緒にいるよ。」
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「どういたしまして。」
明日はいよいよ、クリスマスイブ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




