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春雷と共に5

 体を揺らし、まだかまだかと爛達を待っていると、不自然に草木が踏まれる音が耳に届く。獣か人か、しかし、音がする方向は、先ほど、爛が走り去った道よりも幾分も狭い、獣道だ。もし、彼らが私を迎えに来たのならば、わざわざ険しい道を選ぶはずはない。では、やはり何か大きな獣なのか。ここからすぐに走り去るべきか考えていると、その音はすぐ近くに聞こえた。もうどうすることもできない。せめて動かずにその場をやり過ごそうと木陰に身を埋めるため、両膝を着く。


 「何をしている。」


 聞こえたのは、若い男の声だった。顔を上げると、甲冑を身に纏った男がそこに立っていた。


 「人を待っていて。」


 視線を逸らし、そう答えるのが精一杯だった。爛同様、私の衣も泥で酷く汚れていて、髪も先ほどの雨で湿り、乱れていたからだ。


 「ここは危険だ。人を待つよりも移動した方がいい。」


 男は、そう言うが、相変わらず雹が混じった雨が降り続いている。


 「でも……」


 そう言い、空を見つめる。


 「雷が鳴ってる。このくらいの雹なら怪我で済む、この木に落ちたら命に関るぞ。」


 「わかりました。ご忠告ありがとうございます。」


 少し離れた空には、男の言う通り、稲光が見えた。このあたりの樹木の中では、目立って大きいこの木は、雹から身を守ってくれるものの雷を相手にすると、避雷針代わりになりかねない。すぐにでも離れて、桃達の元に戻らねば。そう思い、男に会釈し、その場を離れようとする。その刹那、空が光ったと思うや否や、雷鳴が鳴り響く。すぐ近くに雷が落ちたようだ。


 「……一緒に来い。」


 そう背後から声が掛けられ、手を引かれる。男の身体に引き寄せられ、そのまま背中と膝の裏に手を回され、持ち上げられる。


 「ちょっとっ。何するの。」


 男に抱えられ、もがく。悪い人間には見えなかったが、こんな行動をとられては、また印象は変わってしまう。

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