金衣公子と共に5
木箱を挟んだままぴたりと体を合わせたままだったが、すぐに私の両手に掛かった負荷がなくなる。
「大丈夫ですか。って、お前は、あの時の……」
私があの時に助けた女であると気付いたようだった。きっと今も私は、1人で木陰に隠れようとした可笑しな女だと思っているのだろう。
「その節は、ご迷惑をおかけしました。そして、今回も。」
「こんな重い物を運ぶ時は、誰か連れて来た方がいい。大切なものなんだろう。」
前回同様、男は、私に指摘する。この男は、私が考えなしに動いていると思っているのだろうか。
「今の私に頼れる人はいません。これが仕事ですので。」
売り言葉に買い言葉というのだろう、つい普段の棘のある言葉が出てしまう。
「……壊していたら元も子もないだろう。これは、どこへ運ぶ?」
「大講堂に。って、私が運びます。降ろしてください。」
「壊したくないだろう。……先日、姜家の者が外套を返しに来たぞ。侍女が迷惑をかけた、きつく言っておいた、と。もし、お前が暇でも、もらっていたらと少し気になっていたのだが。」
私の兄は、何を彼に言っているのか。嘘をついたところでどうにもならないのに。姜家の女性が1人で妙な行動をとっていたとなると、破談になるとでも思ったのか。この話に合わせるのは、すごくややこしくなりそうだったが、私も悪戯な心が芽生えた。