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春雷と共に11

 「苑様、もうお休みになられますか?」


 爛を見送った桃が戻ってきたようだ。部屋の扉をたたき、私に問いかける。


 「うん。疲れたかも。爛にだけ文書いとくわ。」


 「わかりました。では、また何かあればお呼びください。それと、私も昨日、苑様を助けた男性にお会いしてお礼を申し上げたいので、ぜひご一緒させてくださいね。」


 桃は、念を押すかのようにそう私に告げ、そのまま私の部屋から去っていく。私と桃は常に一緒と言うわけではない。桃に与えられた部屋は姜家にもあるのだが、頻繁に実家である夏家に帰っている。姜家は、城の南東側にあり、夏家は、そこから徒歩でもさほど遠くはない位置にある。爛には、先日のことと見舞いに来てくれたことの感謝の気持ち、そして、外套を返す時は、ぜひ一緒についてきてほしい、そう書いた。


 誰かわからない人を一から探すのは、やはり望みが薄いと思ったのだ。ここは、爛を頼るのが兄よりも最適だった。兄に王家の紋章の書かれたものを所持していることが知られたら、あらぬ疑いを掛けられ、私の婚約は成立させられるかもしれない危惧もあるのだ。一方、爛は、私の口約束の婚約の事情を知らず、ただ私の純粋な親切心からであると理解してくれるはずなのだ。この外套の持ち主が王凌雅なのか、その付き人か家臣か今の段階では、わからない。けれど、どうにかこの外套を返して、一言お礼を言わなければ、やはり良心が痛むのだ。


 書き終えた文をたまたま部屋の前を通りかかった侍女に手渡す。爛の返事が待ち遠しいとこれほども感じたことはなかった。時間は限られている。早急に片付けていかなければ、そう思うのだった。

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