表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

企画参加作品

密室で生死の果てにみたもの~或る老婆の独白~

作者: 山本大介
掲載日:2021/12/07

 堂々完結。


 July(受雷)に恋をしたのはいつの頃だったか。

 私は思いだせない・・・でも、ずっと昔から彼を愛していた。

 Julyがフットサルスタジアムでハットトリックを決めた日、私は告白しようと決めていた。

 試合終了のホイッスルとともに駆けだす。

 私はグラウンドの芝につまづき転んでしまった。

 顔をあげると、Julyに抱きつく女がいた。

 許せない・・・。

 なんなのあの女。

 私は惨めさと悔しさで頭の中がパニックになった。

 しばらくしてJulyが結婚したあの女とだ。

 チャペルでJulyの隣で微笑むあの女・・・本当は隣には私がいたはずなのに。

 私は号泣した。

 来る日も来る日も。

 Julyが家を建てたあの女との愛の巣。

 私は毎日、ご近所のふりをして家をのぞく。

 あの女と視線があった・・・笑顔で会釈なんかしやがって、余裕かよ。

 悔しい・・・悔しい。

 ある日、私は知らない内にJulyの家の玄関に立っていた。

「どなたですか?」

 女は尋ねてきた。

「泥棒猫」

 思わず、私は捨て台詞をはいてその場から立ち去った。

 女は困ったような顔をみせた。

 私は毎日Julyの家へ、あの女と何度も目が合う。

 見せる会釈に笑顔が癪に障る。

 来る日も来る日も。

 気付けばあの女は死んで、私もババアとなった。

 私の人生って・・・どうしてこうなってしまったんだろう。

 Julyが悪い・・・そうだ、Julyに復讐をしよう。

 愛するJulyの家で死んでやる。

 こうして、私はこれを生きる糧とし毎日、土を掘りトンネルをつくった。

 来る日も来る日も。

 私の何がそうさせたのだろう。

 そう、彼への愛・・・そうだ違いない。


 ついに念願が叶い、Julyの書斎へ。

 彼の家の間取りなんぞ、暗記しているわ。

「乾杯」

私は彼の空気を肺いっぱいに吸い込み、この世の別れとばかりに毒薬をワインで流し込んだ。

「サヨナラ」

 私は死んだはずだった。


 真っ白な世界の中、私の前には2人がいた。

 それは仲睦まじいJulyとあの女。

 見ていると馬鹿らしくなってきた。

「私って・・・」

 やがてJulyが消えた

 若いあの頃の女がこっちへやって来た。

 そっ。

 私の両手をあの女が掴む。

「美々さん」

「なによ」

「生きなくちゃ」

「いやよJulyを手に入れられなかったこの世なんて」

 あの女はあの時の困った表情を見せる。

 じんわり繋いだ手があたたかい。

「ねっ」

「・・・・・・」

「ねっ」

 こくり私は自然と頷いていた。



「はっ!」

 私は病院で目覚める。

 家族がいる。

 医者が言った。

「奇跡だ」

 と。


 ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ