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6話


「お待たせして申し訳ありません。鑑定が終わりました」


ドアの向こうから声がして、初老の店員が入って来た。

声がした時には、手紙はしまったので、見られた心配はないだろう。


「さて、先程の鑑定ですが、商品をすべて合わせまして3万リールではいかがでしょう」


「3万!それでは高すぎるのでは?」


この道のベテランだというような店員に、思っていた額の3倍もの値段を告げられて私はビックリした。


「他ならぬエルラント家のお品です。それに貴女様の愛用の品となっては、これくらいが妥当かと」


初老の店員はエルイースをじっと見つめた。どうも"白き乙女"だと言うことはバレているらしい。


あの目立つ白銀の鎧を着ていないので、王宮からここまで歩いて来る間に、誰にも"白き乙女"だという事には気付かれなかったのだが。


そうエルイースは思ったが、店員からすれば辺境伯であるエルラント家の紋章入りの品を複数点、堂々と持ってきた若い女性とくれば、"白き乙女"のエルイースしかいないという事になる。


そんな人気のある有名人のエルイースの愛用の品ならば、値が上がって当然のことだった。


「…ご主人、言いにくい事なんだが、私は王命によって爵位も領地も先程失った身だ。だからやはりこの値段は高すぎる」


「なんと!それは本当のことなのですか?!先祖代々、イクリツィアのために戦ってきたエルラント家の、"白き乙女"の貴女様を追い出すなどと、そんな酷い事をするるとは、一体誰が…」


店員はそれを聞いてこの世の終わりだという顔をした。


「おまけに鎧も無いしな。私はもう"白き乙女"でも辺境伯令嬢でもない、ただの一般人だ」


「…わかりました。では、よりこのお金は必要になるでしょう。いや、ならば3万では安いですな、4万、いや5万リールでどうでしょう」


「5万?!いやいや、高すぎるだろう」


「むう、まだ低いですかな」


「いや!多すぎるぞ!」


そんなやり取りをくりかえして結局、店員に押し切られる形で5万リールの金を手にしてしまった。


「こんなにもらって、いいのだろうか…」


もらった金はずっしりと重い。

こんなに大金を持ったのは始めてかもしれない。

一応は貴族の令嬢だったので、自分では金はあまり持ったことはなかった。

そのため、もらった金の重みに少し戸惑ってしまう。

せめて、店員のためにも無駄遣いはさけよう。


当面の金は手に入ったので、新しい鎧を買うべく、鍛冶屋街の方へ向かうと、一軒の武具店の前に着いた。


この先、ボルコフ卿の領地までは、王都から伸びる街道を通って行くつもりだが、この街道は、その昔、魔物と深い霧に囲まれたこの大陸を、英雄達が切り開いて作っていった道で、その街道の上は魔物が近づけないようになった。


そのため、旅をする人々は皆街道を利用しているのだが、いくら魔物の出ないと言っても、稀に出ることはある。

そのいざという時のため、最低限、鎧と武器は必要だろう。


それに、生活の大半を魔物退治に明け暮れたエルイースは鎧を着ていないとなんだか落ち着かなかった。


「へいらっしゃい!なんにしやしょう」


中に入ると腕まくりをした店員が挨拶をしてくる。さすが王都の武具店とあって、店の中は色々な武器や防具で#溢__あふ__#れていた。


私は並んでいる鎧を端から見ていく。

どうせなら丈夫な鎧が欲しいが、長旅をするので軽い物の方が良いかも…、むむむ、悩む。


結局私が選んだのは、皮の鎧と魔法の力で切れ味が増した剣だった。

一応、剣は持ってきた物があるが、見た目重視で耐久性や切れ味はあまりない。


「お嬢ちゃん、剣は良いもんだけど、こんな地味な鎧で良いのかい。もっと女性向けに色々あるんよ、コレとか」


皮の鎧を持った私を見て、店主か勧めてきたのはピンク色でファンシーな縁取りがされた鎧だった。

うーむ、他の娘たちはこんな可愛い鎧を着ているのか、辺境にはこんな女性向けの鎧はないので珍しくてつい手にとって見た。

品質も問題なさそうだ。


「後は、"白き乙女"みたいになりたい!って娘が多いから、白い鎧も人気だねぇ、どれも軽くて丈夫に出来てるよ」


店主は目の前にいるのが当の"白き乙女"だということに気付かず白い鎧も勧めてきた。

私が着ていたものより動きやすそうだし、女性らしい綺麗な装飾が入っている。

白銀の鎧は男女兼用だから、こんな華やかな感じではなかったぞ、…って、いかんいかん。大体、私にこんな可愛い鎧は似合わないだろう。この地味な皮の鎧で充分だ。


武具店を出て、他必要な物を買い揃えると、私は街道の方へ向かう。


旅立つ準備はできた


向かうのは馬車がある停留所だ。





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