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四週目ー1

 部屋の隅でうずくまり小さくなるレンは、うじうじと湿気を飛ばし、辺りにはキノコが生えているのがみえるようだ。


 お試し期間もあと2日で終わる。


 どこから来たのかわからない不審者だった少年も1ヶ月ほどで割と好意的に受け入れられていて、フィン様の従者であり友人のような関係性になっている。


「いつまでウジウジしてんだよ、レン。俺に大声出した時の威勢はどうしたのさ」

「あれは、色々と不安定で、ですね」


 かれこれ一時間はこのままなのである。

 ぽつりぽつりと漏らすように言うレン。。


「それにあの時と事情が違います」

「ふーん、どんな?」

「例えば――」


 レンは一つ一つをゆっくりと語り始める。


「仏のようなオーグスト様に慈愛の女神のようなフリーズ様、それにフィン様の信頼がある今、ここでの失敗なら多少のことはないと思います」


 と、言葉を区切る。


「ですが、被害にあったのは他国の王子です。不採用になったとしても当たり前です。それでも、俺は……」


 静かになったレンに続きを促すフィン。


「それでも?」

「それでも、ここにいたいです。やっと出来た……居場所だから」


 顔を上げてレンは真っ直ぐにフィンにいった。


 レンに何があったかと言うと、レンはシエルとメーアの遊び相手を任されていた。


 二人が水の入った容器が乗ったカートで廊下を爆走、レンが止める間も無くそれは滞在中だった他国の王子をびしょ濡れにした。


 幸いにも水で濡れただけすんでおり、被害者である他国の王子は気にしていない。


 が、レンの出自からレンをよく思っていない人たちはこれ幸いとレンを追い出すための口実を使い始める。


 即刻不採用にして城から追い出すべきだと。


「アルバート王子は怒ってないみたいだし大丈夫だと思うけど?」

「それならいいんですけどね……」

「このあとアルバート王子がくるんだから、そろそろ切り替えてもらいたんだけど」


 王子同士ということもあってそれなり仲が良く、今日もアルバートの手が空いている時間にお茶をする予定が組み込まれていた。


「そんなの先輩にって……先輩はいずこへ?」


 キョロキョロとするレンにフィンはため息をつく。


「はぁー、ジルは急な用事が出来て出掛けるって言ってたでしょ」

「聞いてませんよ。いつ、言ってたんですか?」

「全く、職務怠慢とか言われても知らないからな」

「うっ」


 一度大きく深呼吸をしたレンは、しぶしぶといった風に立ち上がる。


「そうですね。アルバート王子のお声もあればなんとかなるかもしれませんから」


 手順を確認したレンはテキパキと準備を始める。


 完全に切り替えたようではなく、よく見れば震えているようで食器がカタカタと鳴っていた。




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