1週目
少年は見た目よりも年齢は上の十七歳で、フィン様より少し上くらいと考えていたので驚いた。
フィン様は今年十二歳になるのだが、少々大人びていて、大人の手を煩わせないほどに賢い王子だ。
そのせいか、同年代の子たちと話が合わず割と一人でいることが多い。
「フィン、今日からあなたのもう一人の従者になるレン君よ」
昨日の少年、レンがフリーズ様に連れられフィン様に紹介される。
「よろしく」
「よろしくお願いします」
一瞬だけ顔をしかめたフィン様の視線はすぐに机の宿題に移った。
フィン様の正式な従者の後ろについて説明を受けるレンは覚えるのが早く、慣れないながらも仕事は早かった。
そこに膨大な知識もあった。
それには反対をしていた人たちも驚いた。
ただ、どれだけ周囲が彼を褒めても、レンはそれを認めず否定をしているようで、本人の自信のなさが窺えた。
そのくせ、何かに怯えるように休まずに働き続ける。
「先輩、あの……」
「なんだ」
「その、なんでもな――」
「言ってみろ。必要かどうかは聞いてから判断する」
フリーズ様からレンが意見を出しそうなら言わせてしっかりと聞くようにときつく言われているので、スルーは出来ない。
ぽつりぽつりと喋り出すレンの意見は、なかなかに良いもので採用をしていけば、城内で記憶喪失で雇われた少年は頭が回ると評判になっていく。
当の本人は認められてはいなかったけど。
そんな時、オーグスト様がレンに会いに来ました。
オーグスト様が仕事ぶりを褒めてもレンは否定するばかり。
「あなたは誰でもできると言いますが、知識は誰も真似出来ない財産です。仕事ぶりは聞いていますが、そこまでの知識は学ぶのに苦労もあったでしょう」
「お、れは……」
オーグスト様は狼狽えるレンに微笑んで、レンの手を取ります。
「ここに来るまでのことは分かりませんが、レン君の努力は今、ここに繋がっています」
レンは目を見開いて息を飲むとただ一言。
「ありがとう、ございます」
――小さく呟いた。




