異世界にて
自分で考えて動くこと。
それを自由と呼ぶのなら、きっと――。
ここにはいつも心配してくれて、時折バカやって笑いあえてた何でも話せる友達はいない。
何も知らず純粋に慕ってくれてた自分よりできの良かった弟もいない。
早く家から追い出したいと零していた両親もいない。
いるのは、子供らしさをなくしたような王子とほんわかした国王夫婦、それといつでも騒がしい双子の王子と王女。
そして、彼らを慕うこの国の人たち。
否定でも肯定でもない。
ただ、暖かな優しさがあって――。
それはいつか夢みていたような、そんなものだった。
だから、ここに残ると決めた。
誰の意思も介入しない、自分だけの意思で。
これは俺の初めてだらけの挑戦だ。
王妃様の荒唐無稽の言葉から始まったこの生活は、慣れないことばかりで大変ではあったけど、どこかへんな幸福感があった。
長い時間が過ぎて、『へんな幸福感』の意味がわかった。
優しさとか、暖かさとか、心配とか――。
何もできなくても、大丈夫だと支えてくれて、こんな自分を認めてくれるその温もりが答えだった。
だから、俺は元の箱庭に戻らずに、居場所を与えてくれたこの場所にいると決めた。
両親のような国王夫妻、友人にも思えるような王子、弟と妹のような双子の王子と王女がいる場所で。
自分で考えて動くこと。
それを自由と呼ぶのなら、きっと――。




