暴走2
しばらくして僕は目を覚ました。
目を開けた先はどうやら家の中のようだ。
元いた世界の僕の家でもなければ、達也の家でもない。
一夜過ごした小屋の中でもないようだ。
「お、目を覚ましたか」
僕が寝ている隣に体の大きな男性が座っていた。
ボブだ。
「ということは、ここはボブの家か」
「何だそれは?ここは俺の家だが…」
ボブは不思議そうな顔で答えた。
「他のみんなは?」
この部屋にはボブ以外いなかった。
「みんな修行してるぞー。達也はレイが教えてる。あいつの異能は遠距離向きだからな」
と、笑いながらボブは言った。
そうだ、初の戦闘訓練で僕は気絶して…
「僕はどれくらい寝てたの?」
僕は慌てて聞いたが、答えは一週間だった。
あり得なくらい寝ていたのか…
「相太…大事な話だ」
ボブが改まって話し始める
「なぜ…気絶したか覚えてるか?」
「なんとなくは…」
「お前はレイの弓を空中でかわした。あれは驚いた。
その後発狂し、気絶した。
あの瞬間何があった?」
ボブは真っ直ぐな目で僕の方を見ていた。
知りたいという声が聞こえるほどに。
しかしそれは本当に聞こえていて、
僕は体感的に自分に何が起きているのかをすでに理解していた。
人の心が読める、聞こえる、感じる
あらゆる五感で人の心を感じ取っているのがわかった。
しかし、僕はこれを教えるのを躊躇った。
人の心が分かるなんて言ったらどうなることやら…
「なんか、自分にもよく分からなくて」
それが僕の答えだった。
「そうか!その症状は戦闘中だと危険すぎるから直しとけよ」
ボブは笑いながらドアの方へ行き、前と同じ場所で修行していることを
僕に告げ、そのまま先に部屋を出て行った。
ボブの心の中は笑っていなかった。