新船舶とパスタくじ
職業 船長(Lv.20)
MP 24362
所有スキル「気象予測」「ダガピア」「地理情報」「二重召喚」
新スキル「伝導の儀式」
新所有船舶
■輸送艦:優れた搭載能力と機動力を備えた多目的大型輸送艦。
基準排水量:8900t 全長:179m 最大幅25.9m 喫水:6m
最大速度:42㎞/h
兵装:魔導キャノン2基 水雷砲(水魔法+雷魔法の合体魔法)2基
大型魔導エンジン 27000馬力搭載
輸送客船のほぼ二倍の大きさの船……。
いや、船ではなくて艦だよね……。
とっさには感想も浮かばないくらいの衝撃だ。
まだステータス画面の画像で確認しているだけだけど、大きさの割に平べったい構造をしている。
これは魔物に存在を気づかれにくい魔導ステルスを発揮するための構成らしい。
なんなのよ、魔導ステルスって……。
言ってみれば光魔法と風魔法の複合魔法で、海上での姿を見えにくくするものだけどさ、179mもの船を見えにくくするっていったい……。
しかも、驚くべきは船だけじゃない。
この船の前部には100mの車両甲板が設けられ、後部はヘリコプター甲板になっている。
そう、艦載機がすごいのだ!!
小型トラック×4台:全長4m
大型トラック×4台:全長7m 積載量6t(22人)
高機動車×2台:全長5m 乗員10名 器材の牽引などをする多用途車両。
装甲戦闘車×2台:全長7m 戦闘員7名搭乗可 魔導機関砲装備
指揮通信車×1台:全長6m
偵察警戒車×3台:全長6m 小型魔導機関砲装備
装輪装甲車×2台:全長6.8m 最高速度107㎞/h
魔導榴弾砲×2台:最大射程距離30㎞ 操作人員9名。一発の必要MP1200
魔導戦車×4台:全長10m 主兵器魔導戦車砲
揚陸艇×2:全長26.5m 全幅14.2m 風魔法を応用したホバークラフト。最高時速76㎞/h 各種武装が付く。
ヘリコプター(イワクス1)×1:全長32m 55名 大型車両の空輸もできる大型ヘリコプター
ヘリコプター(イワクス2)×1:全天候型哨戒ヘリコプター
切りのいい数字だから期待はしていたよ。
期待はしていたけどこれほどまでのものが出てくるなんて想像もしていなかった‼
かなり驚かれると思うけど、みんなに新しい船をお披露目しないといけないな。
どう考えてもこれはベッパーの解放、ひいてはロックナ王国の解放、最終的にはこの海の解放につながっていくはずだ。
「皆さん、大事なお話があります」
僕はシャングリラ号の主要メンバーだけじゃなく、アルシオ陛下たちにも来てもらって船のお披露目をした。
結果――。
シエラさんをはじめとする数人が過呼吸で医務室に運び込まれた。
感動したルネルナさんにいつも以上に抱き着かれてほっぺにキスされた。
フィオナさんは無言でレンチを手から落として、その場に膝をついた。
アルシオ陛下は無言で震えていたけど、「お願いだから、ずっとわらわのそばにいてくれ」って泣きながら懇願された。
誰もが声を失った中でミーナさんだけが「レニー君、すごいね……」って控えめに褒めてくれた。かなり小さな声だったけど。
それくらい輸送艦の威容はすさまじかったんだ。
青い波間に浮かぶブルーグレーの船体は、まさに青天の霹靂を具現化したような存在だった。
みんなが落ち着いた夜になってから、シャングリラ号主要メンバーとアルシオ陛下やノキア団長たちと今後どのように輸送艦を運用していくかを話し合った。
どんなに素晴らしい船や車両を召喚できたとしても、動かせるのが僕一人ではどうしようもないのだ。
「やはり、優秀な騎士を選抜して、まずはその者たちに技術を習得させるしかないのではないか? 後にその騎士たちを教官として他のものに伝授していくしかないだろう」
「シエラさんのおっしゃる通りです。ただ、5人だけならすぐにでも操縦技術を伝えることはできるんですよね……」
「そんなことがっ⁉」
みんなはびっくりしたり、嬉しそうにしたりしているけど、僕は何となく言い淀んでしまう。
「実はレベル20に到達したことによって新しいスキルが発現しました。『伝導の儀式』というものです。このスキルは最大5名までの人物に、船や車両に関する僕の知識や技術を分け与えることができるというものなんです」
そう言うと、フィオナさんが真っ先に立ちあがった。
「だったら出し惜しみすんなよ。レニーの知識があればエンジンへの理解も深まるってもんだ。早く私にそのスキルを使ってくれよ!」
「それは……」
「なんだよ! 私には伝えられないっていうのかい?」
フィオナさんはキッと僕を睨んだ。
まるで期待を裏切られた猫みたいな表情をしている。
「そうじゃないんです! そうじゃなくて……、伝えるのが少々厄介というか、困ってしまうというか……」
僕は本当に困ってしまう。
「なんでだよ⁉ レニーは私の魔導エンジンに投資してくれるんだろう? だったら私に儀式とやらを授けてくれたっていいじゃないか! それとも何かい? シエラやミーナやルネルナは良くても、アタシじゃダメっていうのかい?」
泣きそうなフィオナさんを見ていたら、僕だって叫ばないではいられなくなってしまった。
「だって、『伝導の儀式』は一晩同じベッドで手を繋いだまま魔力通信をしながら寝て、明け方にキスをして完成されるものなんです! いくら皆さんがお相手だったとしても、そんなことをお願いできるわけがないじゃないですかっ‼」
会議室がシーンと静まり返ってしまった。
それはそうだろう。
こんな方法で知識や技術が伝えられるだなんて誰も想像していなかったろうし……。
ずっと叫んでいたフィオナさんが、おずおずと僕に訊いてきた。
「それが『伝導の儀式』なのか?」
「はい。嘘なんて言っていませんよ。本当にそうすれば僕の知識や技術は伝えられるんです。あの、私欲とかそういうのじゃありませんから」
「わかってるって……。ていうかさ、それくらいのことだったらどうってことないじゃないか。もっとすごいことをしたってアタシは平気だよ。さっそく今晩にもイッチョやってみるか? その、レニーさえよければだけど……」
「ちょっと待ったあ‼」
次々に他のお姉さんたちから異論が巻き起こった。
「勝手は許さんぞ、フィオナ! こういうことはよく話し合わんと」
わかりましたから、シエラさんは剣を鞘に納めてください!
「そうよ、順番はちゃんと決めるべきだわ。勝負は財力でつけるっていうのはどう?」
ルネルナさんもわけがわからなくなっている?
「あの、料理勝負じゃダメですか?」
ミーナさん……。
「皆の者、落ち着かぬか!ここは代表としてわらわが……」
アルシオ陛下まで⁉
ノキア団長と執事のアクセルさんまでびくりとしている。
「ノキア、爺、何も申すな。わらわの決意は固いぞ」
「心得ております。我らとしても陛下にはぜひそうしていただきたく」
勝手にお話を進められても困るよ。
僕にも心の準備というものが。
一番冷静だったのはミーナさんだった。
「ねえ、レニー君はどうしたいの? 私たちと儀式を行いたい? 他に伝えたい人がいるのなら、私は辞退してもいいわ。私は料理人だから、そのことでレニー君の役に立てればいいもの」
そう言われて反射的に沸き上がったのは、僕はこの儀式をミーナさんやみんなとやり遂げたいという気持ちだった。
「僕は! 僕は皆さん以上に信用できる人を知りません。儀式をするのなら……お姉さんたちとがいいです……」
言ってしまった……。
でもこれは偽らざる僕の本当の気持ちでもある。
「ありがとうレニー君。そう言ってもらえて私も本当に嬉しいわ。みなさんも聞いたでしょう? ここは落ち着いてちゃんと決めましょう、パスタくじで!」
ミーナさんが力強く宣言した。普段は大人しい人だけど、いざとなると肝が据わるみたいだ。
さっそく調理場から5本のパスタを取ってきて、それをポキポキと折っていく。
「長いパスタが1番、一番短いパスタが5番ですからね」
クジは僕が持ち、お姉さんたちは順番に引いていった。
結果発表
1番:シエラ
2番:ミーナ
3番:ルネルナ
4番:フィオナ
5番:アルシオ
結果は図らずも、お姉さんたちがシャングリラ号に乗った順番になっていた。
「わた、わた、私が1番⁉ ど、ど、どうしたらいいの?」
冷静沈着なシエラさんがあり得ないくらい取り乱している。
「シエラのアネキ、怖いんだったら代わってやるぜ?」
「ふ、ふざけるなっ! 誰が譲るものかよ。だ、だ、だが……」
僕はシエラさんの目を見つめた。
「あの、僕も緊張しているけどよろしくお願いします。その、変なこととか絶対にしませんから」
「わかっている。レニー君がそんなことをするわけないじゃないか!」
僕らは真っ赤になりながらも夜に落ちあうことを決めて、逃げるように会議室から退出した。
お待たせいたしました。
久しぶりの更新ですが、読んでくださってありがとうございました!
書籍化作業は順調に進行中ですよ。




