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勇者の孫の旅先チート 〜最強の船に乗って商売したら千の伝説ができました〜  作者: 長野文三郎


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たなびく煙

 日が西にだいぶ傾いたころガモの港が見えた。

途中で二度ほど戦闘になったけど機銃だけで片がついている。

大したことのない相手だったので、ポセイドン騎士団が機銃を使う訓練相手になってもらった。

マチルダさんやクレイリーにも機銃を使ってもらったけど、性能に驚いていたようだ。


「ちょっと、レニー、あの魔道具は何なのよ! 他にも隠していることがあるんじゃないの?」

「別に隠しているってわけじゃないよ。まだ君の前で召喚していない船はあるけど」


 クレイリーとはすっかり友人感覚で話せるようになっている。

一緒に戦いを切り抜けてきたからだね。

互いに信頼感が増しているんだろう。


「他にはどんな武器を隠しているの?」


 だから隠していないってば……。


「そうだなぁ、武装という点でいえば装甲兵員輸送船っていうのがあるよ。魔導重機関銃と魔導グレネードって武器が付いているんだ」

「グレネード?」

「アルケイを襲ったカリブティスを倒した武器だよ」

「それなら父上に話は聞いているわ! 爆裂系の魔法攻撃を連射できるんでしょう?」

「まあね。その代わりMP消費量はかなりすごいよ?」

「へぇ~、今度それも試させてくれる?」


 エディモン諸島では島に上陸することもあるだろう。

そのときに試し撃ちをさせてあげようかな。

実戦で使う局面もあるかもしれないから、やるのなら早い方がいいかもしれない。


「うん。機会を設けてポセイドン騎士団の皆さんにも使えるようになってもらうよ」

「絶対よ! さて、哨戒任務に戻らなきゃ。またね」


 クレイリーは嬉しそうに操舵室を出ていった。


「コホン……」


 シエラさんが小さな咳ばらいをしている。雨の中の戦闘が続いたから風邪でも引いたかな?


「大丈夫ですかシエラさん?」

「いや、何でもない。ところでレニー君……」


 シエラさんが何やら言い淀んでいる。


「どうしましたか?」

「クレイニーとは仲が良いようだが、レニー君はああいう娘が好みか?」


 どうしてそんなに眉をピクピクさせながら、真剣な眼差しで聞いてくるの⁉


「好みとかじゃなくて、普通の友だちって感じですよ。ナビスカさんの言葉を借りれば戦友ってことになるのかな。僕らは同じ船に乗って、共に戦っているんですから」

「ま、まあそうであるな……」

「この旅が終われば離れてしまうわけですけど、仲良くしたいとは思っていますよ」

「そうか……旅が終われば……」


 シエラさんは難しい顔でウンウンと頷いていた。


「どうしたんですか?」

「いや、なんでもない。私はこの旅が終わってもずっと一緒だからな」

「はい! ありがとうございます。そう言っていただけると安心します」

「安心?」

「だって、シエラさんは僕にとって戦闘の師匠じゃないですか!」

「師匠!!」


 シエラさんは雷に打たれたように動かなくなってしまった。


「あっ? そんな風に考えるのはダメですか? 毎朝、稽古をつけてもらっていたので僕は……」

「ダメじゃない……。師弟……愛。禁断の…………いい……とっても……」


 よくわからないけど僕を弟子と認めてくれたようだ。


「さあ、そろそろ入港準備ですね。小さな港だから接岸は無理でしょうけど、湾の中には入れてもらえるでしょう」


 湾の内と外では波の大きさが全然違うのだ。

入港料を取られるにしたって、宿泊するならだんぜん湾の中に限る。

僕は船のスピードを落として入港に備えた。


 無事に入港手続きを終えた僕は船長室でくつろぎながらステータス画面を確認した。


走行距離 4438キロ 討伐ポイント 533117 トータルポイント537555


 レベル18にはまだ遠いけどトータルポイントがよく伸びている。

しかもすごいことに気が付いた。

ポセイドン騎士団が海上で倒した魔物の討伐ポイントも加算されているようなのだ。

それぞれの騎士の気持ちはどうあれ、僕は船長であり指揮官だった。

どうやら僕の指揮下で戦ってもらうと、正式な乗組員じゃなくても討伐ポイントは入ってくるようなのだ。

船の近くで戦闘とか、僕の近くで戦闘とか、条件はいろいろあるみたいだけど、今のところ詳細は不明である。

でもさ、ということは仲間がたくさんいれば、それだけレベルは上がりやすくなるってことだよね。

もっとも、僕のような子どもに大勢の人をまとめ上げる能力はないからなぁ……。

いずれ大人になって乗組員クルーがたくさん増えたら、バカスカ討伐ポイントが入ってくるようになるのかな? 

その辺はよくわからないけど、とりあえずレベル18を目指して頑張ろうと思った。



 早朝にガモを発ち、エディモン諸島の海域に入ったのは昼前だった。

地理情報と船舶レーダーで慎重に魔物の動向を窺っているけど、今のところ大きな襲撃はない。

朝から散発的に小物の襲撃を受けただけで、全部撃退することができている。

僕は船舶レーダーのモニターを監視しているルネルナさんに話しかけた。


「思ったより魔物が少ないですね」

「ええ。でも油断しちゃだめよ。ここはもうロックナ王国の領海なんだからね」


 さっきからいくつもの島が水平線の向こうから現れては後ろへと消えていく。

諸島というだけあって、ここは名前の通り10の主要な島と、大小1000を超える島がひしめき合っている海域だ。

大きな島には魔人が駐留している可能性もあり、十分な警戒が必要となる。

僕らが目指しているのはエディモン諸島のベッパーという島だけど、直接そこへ行くわけじゃない。

魔人に見つかったら面倒なことになるからね。

ただ、その近くで海馬が目撃されたという情報があるから、近くまではいく予定だった。


 ドタドタと階段を踏み鳴らす音が聞こえてきた。


「カガミ殿!」


 現れたのは興奮しきったナビスカさんだ。


「どうしたのですか? 魔物の反応はないはずですが」


 ルネルナさんの方を見ると、その通りだと頷いてくれた。

レーダーにだって反応はないようなんだけど。


「魔物じゃない! 人だ!」

「人?」

「ああ。右舷に煙が見えた。マチルダが見つけたんじゃ。ロックナ王国の生き残りがおるかもしれんぞ!!」


 とんでもない衝撃を感じて僕は慌てて減速した。


「全乗組員は操舵室に集合してください」


 船内放送でみんなを呼ぶ。


「ナビスカさん、煙が見えたのはどの島ですか?」


 モニターに地図を映し出して確認すると3キロも離れていない島だった。

これはもう調査するしかないだろう。

問題はナビスカさんたちが何というかだけど……。


「シャングリラ号は海馬探索の依頼でここまで来ましたが――」

「あいや、我らに気を使う必要はない。もしも人がおるのならそれを助けるのは当たり前のことだ」


 ポセイドン騎士団の責任者がナビスカさんで本当によかったと思う。


「それでは、慎重に島へ向かうとしましょう」

「うむ。何かあっても即応できるよう、我々は海馬で出よう」


 島に魔人がいるかもしれないのだから、その方がいいだろう。


「それでは僕たちも小型装甲兵員輸送船に乗り換えるとします」


 その後、操舵室に全員が集合したところで計画を立てて、煙の見えた島へと向かうことになった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 上陸用ホバークラフト搭載の強襲揚陸艦が欲しいところ。
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