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勇者の孫の旅先チート 〜最強の船に乗って商売したら千の伝説ができました〜  作者: 長野文三郎


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キャヴィータを探しに

本日二本目です

 船着き場から郊外まで出て、水上バイクのスピードを上げてやると、ニーグリッドさんは大興奮だった。


「すごい! すごいぞ! レニー君! はーはっはっはっ!」


 ボディーガードの人たちをあまり心配させるのもよくないよね。

トップスピードを1分くらいだけ体験してもらって、あとはスピードを落として桟橋へと戻った。


 バイクを下りたニーグリッドさんは僕の肩を抱いて笑っている。


「いやぁ、最高の気分だったよ。日頃のうっ憤をひと時でも忘れさせてもらうことができた」


 僕が言うのもなんだけど、ニーグリッドさんは悪ふざけをした子どもみたいだ。

でも、こういう大人は嫌いじゃない。


「機会があったらいつでも言ってください。また乗せてあげますからね」

「ありがとう。さっそくで悪いのだが、一つ仕事を頼まれてくれないかな?」


 試乗会が収入につながりそうだぞ。


「なんでしょうか?」

「実は明日の夜に特別な晩餐会を催すことになっているんだが、そのための食材をルギアで探してきてもらえないだろうか?」

「食材ですか」

「うん、キャヴィータだ」


 キャヴィータはエルクサメという魚の卵で、高級食材として珍重されている。

春に産卵するエルクサメを捕まえて魚卵を取り出し、塩漬けにしたものが出回るのだ。


「初物をパーティーで出す予定だったのだが、今年は産卵の時期が遅れてね、ハイネルケでは入手がほとんど困難なのだよ」

「港町ルギアなら手に入ると?」

「そうだ。東のカピス海では水揚げが開始されたようだから、ひょっとすると手に入るかもしれない。君の力でなんとかしてもらうことはできないだろうか?」


 アドレイア海に面したルギア港はセミッタ川の出口だ。

僕はずっと海を見たいと思っていたからいい機会といえる。


「わかりました。確約はできませんけどキャヴィータを探してきます」

「よろしく頼む。上手くいったら出席者はみんなびっくりするに違いない。プランツ侯爵夫人なんてさぞ大げさに「まあ! まあ!」なんて驚いてみせるんだ」


 ニーグリッドさんは腰をくねらせながら侯爵夫人の物まねをしている。

本当に人を驚かせるのが好きなんだな。


「燃料の魔石代としてこれを取っておいてくれ。仕入れたキャヴィータは君の言い値で引き取ろう」


 ニーグリッドさんは銀貨を二枚僕にくれた。


「ただし、明日の夕方までに運んでくれよ。晩餐会が終わってからではただのキャヴィータになってしまうからな」

「わかりました。今日の内に行ってきます!」


 四時間くらいで日がくれてしまうけど、バイクなら一時間でルギアに着くから大丈夫だろう。今日明日を使ってキャヴィータ探しだ。



 ニーグリッドさんと別れて大鷲城に戻ってくると、シエラさんもミーナさんも居間でくつろいでいた。

二人でお茶を飲みながら談笑していて、だいぶ打ち解けた様子だ。


「お帰りレニー君、仕事は終わったかい?」

「はい。残金も受け取って、受取証も書いてもらいました。それどころか新しいお仕事も貰ってきました」

「ほう、今度はなんだい?」

「明日の夜までにキャヴィータを探してくるという依頼でして――」


 僕は会頭のニーグリッドさんに出会ったこと、頼まれた仕事の内容などを詳しく二人に話して聞かせた。


「ふええぇ! あのニーグリッド商会の会頭に声をかけられるだなんてすごいわ……」


 ミーナさんもかなり驚いたようだ。


「よく笑う面白い人でしたよ。グルメっぽい人だからミーナさんとも話が合うかもしれませんね」

「それはどうかな……ハハ……」

「というわけで、僕はこれからルギアに行ってきます」

「今からかい?」

「はい。今年のキャヴィータはあんまり出回っていないそうなんです。ひょっとしたら見つけるのに時間がかかるかもしれませんから」

「だったら護衛として私も行こう」

「シエラさんが? でも、騎士団のお仕事は?」

「そんなのはどうでもいい! ゲフンゲフン……じゃなかった。君を守るのも大事な騎士の仕事だ」


 僕を守るのは騎士の仕事じゃないと思うんだけどな。


「実は騎士団長に君のことを話したら、正式に君の護衛を命じられたのだ」

「なんでですか!?」

「それだけ君が重要人物ということさ」


 ニーグリッド商会だけでなく騎士団も僕の船の力を認めてくれたということ?


「ルギアに行くのだったら私も連れていってほしいな」

「ミーナさんも?」

「うん。ぜひ海の食材を見てみたいの」


 探すのはキャヴィータだから、食材店をいっぱい見て回ることになるだろう。

ミーナさんにとってはまたとないチャンスかもしれない。


「わかりました それでは一緒に行きましょう」


 僕らはまた三人で出かけることになった。



 桟橋までやってきて水上バイクを召喚しようと思ったんだけど、僕はいいことを思いついた。

わざわざ護衛をしてくれるシエラさんを喜ばせたいと思ったんだ。


「ちょっと待っててください。今いい物を召喚しますから」

「いいもの?」

「それは見てのお楽しみです」


 召喚の前に僕はステータス画面を開いた。

あれをこうして、ああやって……できた!


「召喚、水上バイク!」


 現れた水上バイクを見た瞬間にシエラさんの頬がパァァっと薔薇色に染まる。


「おお……これは……」


 予想通り喜んでくれたらしい。

実をいうと、オプションで手に入れたサーチライトと機銃は換装が可能なのだ。

だからステータスボードでモーターボートから外して水上バイクに付け替えた。

機銃は後部プラットフォームに架台を設置し、サーチライトもハンドルの手前あたりに置いた。

まあ、それだけなんだけどね。


「水上バイク・シエラカスタムですよ。気に入っていただけるといいんですが」


 シエラさんは機銃がお気に入りだからいいと思ったんだけど……。


「レニー君! 最高……」


 ちょっと身悶みもだえ気味のシエラさんにミーナさんは若干引き気味だ。

だけど僕はこの反応にも慣れてきた。

むしろ普段が凛々しいシエラさんだから可愛く見えてきてもいる。


「それではルギアへ向かいましょう」

「うむ」


 僕らは意気揚々とバイクに乗り込んだ。



 出発時の総走行距離は1243キロで討伐ポイントは285ptだった。

レベルアップには遠いけど、ルギアへの往復で220キロが加算される予定だ。

確実に堅実に成長は進んでいるだろう。


 ハイネルケを出発してしばらくたったけど、シエラさんは右上空を向いたり左上空を見たりと落ち着きがない。

ゴソゴソと動く度に後ろに座っているシエラさんの胸がくっついたり離れたりするので、僕も困ってしまうのだ。


「あ、あの……どうしたんですか?」

「敵がいないかを監視しているんだよ」


 王都ハイネルケからルギアの間は巡視船や兵団も多く、ハイネーン王国の中でもかなり安全な地域だ。


「こんなところで魔物ですか?」

「油断をしてはいけないよ。一般人はあまり知らないのだが、魔族は高高度から人間の街を偵察していることはわかっているのだ」

「そうだったんですね……」

「だから私も視力を魔力強化して監視中というわけさ。見つけたら後ろの機銃で……」


 僕に捕まるシエラさんの腕にギュッと力が入った。

そして、クイクイと体を押し付けてくる。

機銃を使う妄想でシエラさんがおかしくなっている!?


「ハア……ハア……」

「シエラさん! 苦しいです」

「あっ! す、すまん……。ちょっと戦闘のシミュレーションをしていた……」


 シミュレーション? 

妄想? 

物は言いようだと思う……。

そんな感想を抱いていると、シエラさんが突然大声を上げた。


「いたっ! 本当にいたっ‼」


 僕には見えていないけど、どうやら敵を見つけたようだった。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば主人公の父親も、実はどこかで生きていたりするのだろうか?死んだという話だったけど。
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