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勇者の孫の旅先チート 〜最強の船に乗って商売したら千の伝説ができました〜  作者: 長野文三郎


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152/153

魔海


 名前も知らない鶏の将軍が死んで、僕のレベルがまた上がった。


職業 船長(Lv.49)

MP 10000127

所有スキル「気象予測」「ダガピア」「地理情報」「言語理解」「二重召喚」「伝導の儀式」「三重召喚」「潜水能力」「釣り」「四重召喚」「水上歩行」「五重召喚」「船の構造」「水魔法」「伝導の儀式Ⅱ」「スキル継承」「波濤万里」


新魔導モービル

■万能型魔導モービル:コクウゾウ

ゲンブ、セイリュウ、スザク、ビャッコの能力を併せ持つ究極の魔導モービル


 まだだ、まだいける……。

ここで倒れるわけにはいかない。

僕は脇腹の痛みを耐えながら立ち上がった。


「ほう……、まだ歯向かうか」

「召喚、コクウゾウ!」


 黄金に輝く魔導モービルが装着された。

他の四体よりも一回りほど大きく重厚だ。

それなのに作動感は軽快だぞ。

でも気を付けた方がいい。

こいつのパワーはゲンブをはるかに凌いでいそうだ。

いざ動き出せば圧倒的な力に振り回されてしまうかもしれない。


 各種の装置を起動させると鼓膜を破るような、大音響が耳に響いた。


(レニー、応答しなさい! レニー!)


 ルネルナさん?


(あと3分でそちらに着く、絶対に死ぬな!)


 フィオナさんだ。


(レニー君! レニー君!)


 ミーナさん。


(レニー、返事をしてくれ!)


 アルシオ陛下。


 みんな泣き声で声を枯らしている。

と、そこへ高速で飛来したスザクが僕と魔王の間に割って入ってきた。


「レニー君!」

「シエラさん! 来てくれたんですね」

「うむ、こいつが魔王か……」


 シエラさんはファイヤージャベリンを構えて僕を守るように立ちふさがった。


「シエラさん、こいつは僕に任せてください。それよりも城門へ行ってほしいです」

「だが!」

「城の中の人たちをお願いします。ほとんどの魔物は戦艦の下敷きになって死にましたが、まだ若干残っているんです。今の僕とコクウゾウなら魔王が相手でも平気ですから」

「……わかった。直に飛空艇も到着する。くれぐれも無理をするんじゃないぞ」


 シエラさんは身を翻して城の門へと飛び立った。


「たかだか新しい甲冑をまとったくらいでたいした鼻息だな。その程度のことで、この魔王に勝てるとでも思っているのか?」

「どうなるかはわからないさ。これから使うのは僕にとってもすべて未知の技だもん」


 MPが1000万を超えた今なら、あのスキルが使える。


「ならば試してみるがいい!」


 魔王は総毛を逆立てて怒りの形相になった。


 だけど、僕の心は深く澄み渡っている。

わかる……。

心の中で、体の中で、技と知識と理解がリンクしていく。

今なら究極の技に手が届くはずだ。


「いくよ。究極奥義…………波濤万里はとうばんり


 僕の体に蓄積された1000万の魔力が一気に抜けていく。

開放された魔力は周囲の魔素と絡み合い、増幅され、さながら魔力の潮流となって荒野を満たしていった。

うねりに飲まれた魔物は動くことさえできなくなり、体内の魔力を吸われてしまう。

魔物から吸い出された魔力は周囲の波と合流し、さらなる魔物を飲んでいく。


「う、動けん……、これは何なのだ!?」

「魔力の海、魔海(まかい)さ」

「き、貴様はなぜ動ける。どうして平気な顔をしている!?」


 どうしてだろう?


「船長だからかな?」

「船長……?」


 魔王も魔力を吸われ続けて、立っているのもやっとって感じだぞ。


(レニー! 返事をして。大丈夫なの?)

「ルネルナさん」

(レニー! よかった。どれだけ心配したと思っているのよ!)

「ごめんなさい。でも今はすぐに飛空艇を着陸させて避難してください。間もなく僕の召喚したものはすべて消えるはずです」

(……ついにレベルリセットが来るのね)

「はい。だけど敵はすべて魔力の海におぼれて死ぬでしょう。城の方へ行ったシエラさんと合流してください」

(わかったわ)


 通信を切ると改めて魔王に対峙した。


「さあ、そろそろ終わりにしよう」


 他の魔物は魔海におぼれて次々と命を落としている。

残る敵は魔王だけだ。

コクウゾウは様々な武器を搭載しているけど、やっぱり手に馴染んだものがいちばん使いやすい。

僕はじいちゃんの形見のナイフを握った。


「魔王よ、これで終わりだ」

「く、来るな……、来るなあああああああああっ!」


 後ずさりをしようともがく魔王だけど、足は1mmも動いていない。

魔海の渦の中ではすべての動きが封じられるのだ。


「……っ!」


 無声の気合と共にナイフを振り下ろすと両断された魔王が見えた。

切断された死体が魔海の青く光る波にさらわれていく。

これでようやく終わるんだ……。

そう思ったら、頭の中で声が響いた。


(レベルが上がりました。レベルのリセットに際して「スキル継承」の力を使います。所有スキルから5つのスキルを選択してください)


 これはもう前もって考えある。

僕が選んだスキルはこの五つだ。


「気象予測」「地理情報」「言語理解」「船の構造」「水魔法」


(継承されるスキルが決定されました。レベルのリセットが行われます)


 一瞬目の前が暗くなったと思ったら、再び声がした。


(おめでとうございます。新しいジョブ『車長』が覚醒しました)


 そう……なんだ……。

ステータスを確認してみたいけど、もう眠くて意識を保っていられない。

きっと波濤万里で能力を使い過ぎたせいだろう。

僕は無駄な抵抗を諦めて、その場に横になってしまった。




次回、最終話!

今日中にアップします

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― 新着の感想 ―
[一言] 大航海の冒険も終わり(ʘᗩʘ’)これからは大陸横断の冒険が始まるのか(-_-メ) 見たかったな( ;∀;)
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