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潜入、魔王城


 魔王の城が近づいたところで飛空艇を停止させた。

この船のすごいところは高高度でホバリングができるところである。

こんな大きな船が空中に停止していられるなんて、すごい技術だ。

高度は2万mくらいあるので、地上からこの船を見ることは不可能だろう。


 眼下には丘の上に立つ巨大な岩山が見えていた。

高さ500mもあるあの岩が魔王の居城であり、世界最大のデザインアニマルプラントである。


「岩をくりぬいて作られているのか。ありゃあ固いぞ」


 モニターを見ながらフィオナさんがつぶやく。


「魔導砲の連続攻撃でも、外部からあれを破壊するのは無理でしょうね」


 重要施設は奥まったところにあるのだろう。

籠城されたら手も足も出なさそうだ。


「やっぱり僕が潜入して内部の様子を探ってきます」


 セーラーウィングが集めた周辺の情報はあるけど、それだけでは攻略は難しいだろう。


「だけどどうやって中に入る? 出入口は一つしかなさそうだよ。まあ、隠された通路はあるだろうけど……」


 パッと見た感じでは入り口は丘の中腹にある大きな鉄の扉だけで、他には極小の窓しかない。

正面から出向いていったら、たとえビャッコで姿を隠していても見つかる恐れは大きい。


「レニー、これを見ろ」


 考えを巡らせていると、アルシオ陛下が後方カメラの映像をメインモニターに映し出した。

そこに映っていたのは魔族に引き連れられた何千人もの人間だ。

魔王の城へと連行されていく途中なのだろう。

人々の服はボロボロで顔色も悪い。

きっと何日もかけてここまで歩かされてきたにちがいない。

おそらくは奴隷や食料とされるために……。


「この人たちの中に紛れ込んで潜入します」


 他に良さそうな手も思いつかない。


「ならば私も」

「いえ、シエラさんは外側から支援してください。ここは僕一人で行った方がいいでしょう」


 収容された場合、男女は区画が分けられるかもしれない。

そうなっては連絡の取りようがないのだ。


「レニー君一人では危険じゃないか?」

「僕ならビャッコやセーラー3を召喚できます。ちょっと広いスペースがあれば装甲兵員輸送船も」


 これだけあればなんとかなるものだ。



(レベルが上がりました)


 うわ、またレベルが上がってしまったぞ。

ロックナ周辺では魔物の残党排除が行われているからそのせいかもしれない。



職業 船長(Lv.48)

MP 8131682

所有スキル「気象予測」「ダガピア」「地理情報」「言語理解」「二重召喚」「伝導の儀式」「三重召喚」「潜水能力」「釣り」「四重召喚」「水上歩行」「五重召喚」「船の構造」「水魔法」「伝導の儀式Ⅱ」「スキル継承」


新スキル

■究極奥義「波濤万里(はとうばんり)」:MP1000万を使用して絶対領域を作り上げる。


 とっても便利そうなスキルだけど、MPが足りないからまだ使えないな。

それにしても、このタイミングでのレベルアップは痛い。

リセットまでの猶予はあと1になってしまった。

警告にはレベル50になった途端に、僕は召喚能力を失うとある。

今レベルが上がったことはお姉さんたちには言わないままで出発するとしよう。



 船を下りると僕は大地を転がり、服を泥だらけにする。

ついでに手や顔も汚して捕虜らしく見えるようにした。


「これくらいやっておけばいいかな?」


 ボロボロになったシャツを確認してからビャッコを呼び出した。

ステルス機能を使えば近くまで行っても気づかれることはないだろう。


「それでは行ってきます」


(気をつけてな。我々はこの近くの森に潜んでいるよ。連絡を待っている)


 アルシオ陛下との交信を切ってから、捕虜たちに合流すべくビャッコを使って駆け出した。


 

 捕虜たちの間に忍び込むのはそれほど難しくなかった。

ビャッコのサイレンサー付き魔導ピストルで岩山の上部を撃ち、みんなの注目が落石に集まった隙に何食わぬ顔で列に加わる。

そのときにはもうビャッコはもちろん送還済みだ。


 みんな疲れきっていて、子どもが一人増えたくらいは気にもしない。

魔物の方もまったく気づいていなかった。


 捕虜となった人々はそこからさらに歩かされ、岩山のすそ野へとたどり着く。

入り口はこの岩山の中腹辺りにある。

斜面に差し掛かると人々は息を切らして、歩みも遅くなった。


「グズグズするなっ! さっさと歩かんかあっ!」


 歩みを止めて休憩している子どもに鞭が振り下ろされた。

まだ小さな女の子だ。思わず手が出そうになったけど、グッと我慢した。

ここで目立つわけにはいかない。


「頑張って歩こう。ほら、捕まって」


 背中を打たれて泣いている子どもを起こして、手を引いてあげた。



 やがて捕虜たちは城の扉までやってきた。

だが、ホッとする者は誰もいない。

一度入れば二度とは戻って来られない場所なのだ。

みんな絶望することすら忘れたように、言われるがままに中へと入っていく。


 僕も周囲に目を配りながら後へ続く。

金属製で70㎝はありそうな重厚な扉だ。

入り口の警備は魔族や魔物が30体くらい。

魔王の本拠を守るだけあって、どいつも屈強そうな体つきをしている。


 エントランスホールの天井は10mくらいあるな。

ここなら戦闘は可能だけど、奥の通路は狭い。

魔物が大挙してやってきたら、スタミナ的に持たないかもしれない。

内部の構造を把握するまでは大人しくしておくことにしよう。


 どういう意味があるのか、捕虜たちはホールで大人と子どもに分けられた。


「ん~、お前は子どもか?」


 魔族が僕の顎を掴んで顔を覗き込んでくる。


「十三歳」

「人間の歳はよくわからんな。チビだから子どもでいいだろう。右側の通路へ進め」


 微妙な年齢だったみたいだけど、僕は子どもと判断されたようだ。

右側の通路から下り階段へと行かされた。





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