アラート
◇
魔軍への間断的な攻撃を四時間にわたって続けてやった。
主だった将をすべて討ち取ったせいだろう、敵軍に統率的な動きはまったくない。
魔物も全体の30%くらい、少なくとも6万は倒したはずだ。
そのせいでレベルがさらに10も上がっている。
僕が直接倒しているので経験値の入りがいいようだ。
ただ、まとまりがなくなった魔軍は薄く散らばって進軍を続けるので狙いがつけにくくなってしまった。
効率は悪くなってしまうけど攻撃の手を休めるわけにはいかない。
「うーん、ひょっとして僕一人で全滅させられる?」
なんとなくそんな気がしてきた。
ここは砂漠なので遮蔽物が一切ない。
敵の動きも手に取るようによくわかる。
状況としては圧倒的に有利なのだ。
「特殊医務室で仮眠を取るよ。緊急事態が勃発したら起こして」
しばらくはセーラー3たちに見張らせておけば大丈夫だろう。
長丁場になることを見越して治癒魔法加速カプセルに入ることにした。
30分も仮眠すれば7時間は寝たくらいに体力が回復するのだ。
魔石はまだあるので、少し休んでから攻撃を続けることにしよう。
眠りにつく前にステータスを確認しておいた。
職業 船長(Lv.46)
MP 6236158
所有スキル「気象予測」「ダガピア」「地理情報」「言語理解」「二重召喚」「伝導の儀式」「三重召喚」「潜水能力」「釣り」「四重召喚」「水上歩行」「五重召喚」
新船舶
■戦艦
全長:256m 全幅:38m 最大時速:62㎞
大型三連魔導砲×3基 中型三連魔導砲×4基 連装高角砲・各種
オプション選択
a.ゴーレムの人工知能強化 b.戦艦艦載用小型爆撃機×2機
新獲得スキル
■「船の構造」「水魔法」「伝導の儀式Ⅱ」「スキル継承」
いろいろとすごいことになっている。
まずは戦艦だけど、これまでで一番の火力を持っているぞ!
強襲揚陸艦にも搭載されている三連魔導砲が4基もある。
そのうえ、さらに威力の高い大型三連魔導砲まで3基あるのだ。
破壊力だけでいえば最強だ。
もっとも、残念ながら砂漠で運用は不可能だから出番は先になる。
だけどロックナを開放するときには役に立ちそうだ。
でも、こんなので攻撃したらロックナの街は滅茶苦茶になってしまうだろうな。
使いどころの難しい船だけど、そのことは後で考えるとしよう。
次はオプション選択だ。
空からの攻撃がいかに有利かということはよく知っている。
それを考えれば小型爆撃機という飛行機はかなり有用だろう。
だけど今回はゴーレムたちの人工知能を強化することにした。
やっぱり組織のボトムアップは大切だからね。
それからスキルだけど、最初に覚えたのは「船の構造」だ。
これはシャングリラ号がどのような素材や技術で作られているかをすべて理解できるというものである。
現代の技術ではどうやったってシャングリラ号を複製するのは無理だけど、この知識をベースに新しい船を設計することはできそうだ。
そうなれば世界の技術はまだまだ上がるだろう。
続いては「水魔法」。
ついに僕も攻撃魔法や支援魔法を使えるようになった。
これは純粋に嬉しい。
さっそくシエラさんにお願いして、特訓に付き合ってもらおうとしよう。
今後冒険に出るときも色々と役に立ってくれると思う。
「伝導の儀式Ⅱ」は以前に覚えた「伝導の儀式」と同じで、五人の人を選んで船に関する技術や知識を伝えられるというものだ。
ただ、以前よりも深く伝えられる仕様になっている。
またキスをしなくちゃならないんだ……。
恥ずかしいけどお姉さんたちが許してくれるのなら伝えたいな。
今回は「船の構造」もあるから、多くの情報を共有できるはずだ。
最後に覚えたのは「スキルの継承」か。
これは……、ええっ!?
……どういうこと?
スキル継承:レベルのリセット時に獲得したスキルから五つ選んで継承ができる。その他のスキルや召喚能力は消える。
レベルのリセット?
あっ、ステータスボードの端に警告の文字が赤く点滅しているぞ。
警告
レベルが50に到達するとリセットされます。リセットされると手漕ぎボート以外の船は召喚できなくなります。ご注意ください。
僕は茫然としながらステータスボードを熟読した。
「なんてこった……」
すべてを読み終えて絶句してしまう。
ステータスボードの警告文をまとめるとこんな感じだ。
僕の固有ジョブは「船長」なんだけど、それはレベル50でいったんリセットされるそうだ。
そして「車長」として1からやり直さなくてはならないらしい。
よくわからないけど、鉄道というものに乗る仕事のようだ。
しかも車長もレベル50でリセットされて、次は「機長」というものになるそうだ。
こちらの機長もレベル50までとなっており、三つの職を50まで究めるとレベル1の『三界航路の覇者』と呼ばれる存在になるようだ。
そうなると時空を越えられるって書いてあるんだけど、うーん……。
困ったな。魔物との決戦を前にレベルがリセットされるのは非常に困る。
だって、強襲揚陸艦や戦艦が使えなくなるわけだよね。
「……まずは休もう」
焦る気持ちを抑えてとりあえず治癒魔法加速カプセルのスタートを命じた。
心身の疲れを取って、落ち着いてからゆっくり考えても遅くない。
カプセルの中にホタルのような光が無数に漂い始め、僕はゆっくりと目を閉じた。
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