ゴビン砂漠の戦闘
時速1000㎞超で飛んでいくと、10分くらいで魔物の軍勢が姿を現した。
砂漠を進むその姿は大量の蟻が地を這っているようだ。
僕は少しだけ道を引き返して強襲揚陸艦を呼び出した。
三連魔導砲の射程は40kmに及ぶので奴らに補足されずに攻撃することが可能だ。
しかも敵の位置は高高度からセーラーウィングが教えてくれる。
精密射撃だって可能だぞ。
援軍が駆け付けるまでの時間稼ぎを精いっぱいやるつもりだ。
最初に敵の総大将に奇襲をかけようと思ったのだけど、どんなに映像に目を凝らしてもそれらしい奴は見当たらなかった。
ところどころに魔族がいて、それぞれの魔物を率いているといった感じだ。
まだ戦場に現れていないのかもしれない。
こうなったら仕方がない。
地道に敵の数を減らすまでだ。
二基の魔導砲を同時に使えるように、魔軍に対して船体を横向きにする。
そして乗組員として召喚したセーラー3に命令を下した。
「敵の密集する地点を狙え。三連魔導砲発射用意……」
砲が動き、六つの地点に狙いを定めた。
「撃て!」
轟音が響き渡り、ややあってから地響きが伝わってくる。
全弾命中したようだ。
セーラーウィングから送られてくる映像は砂煙がすごいけど、今の砲撃で百体以上の魔物が吹き飛んだはずだ。
「次弾のパワーチャージまで残り16秒。各自、次の目標を補足せよ」
空を飛ぶ魔物が攻撃の発射元を探し始めたようだ。
みんな一斉にこちらへ飛んでくるぞ。
あと二回くらい砲撃したら速やかに撤退だな。
場所を変えてまた攻撃だ。
「撃て!」
再び砲撃がなされ、砂漠では巨大な砂柱が六本立ちあがっていた。
さらにもう一回攻撃してから、僕は強襲揚陸艦を送還した。
魔導砲の冷却は氷冷魔法が使われるのだけれど、これにだって魔石が必要になる。
送還していればメンテナンスはされるのだ。
冷却だって自動的に行われるだろう。
どうせなら貴重な魔石をめいっぱい活用したい。
再びスザクを使って南へ移動した。
思った通りスザクに追いつける魔物はいない。
見えないくらいに引き離してから、敵の左側に回り込んだ。
今度はこちらの方角から攻撃だ。
「三連魔導砲斉射用意……撃て!」
まだ敵はある程度かたまって動いている。
人間の軍隊のように命令系統がしっかりしているわけじゃないから、分散して攻撃を散らすという考えにいたらないのかもしれない。
「次弾発射用意……撃て!」
この調子でいけばまだまだ敵の数を減らせそうだ。
おっと、また空を飛ぶ魔物がこちらに迫ってきたな。
1万を超える飛行部隊が一斉に向かってくるぞ。
遠くから見ているとまるでイナゴの群みたいだ。
こいつらを残しておくのは脅威だ。
スザクに追いつける奴らはいなかったから、もう少し引き付けて機関砲を食らわせるとしよう。
逃げるのはそれからでも遅くない。
少しでも数を減らさないと。
「魔導砲の次弾発射準備を急げ。機関砲の銃座に座るセーラー3は飛来する魔物に備えよ。射程圏内に入り次第各自の判断で攻撃するように」
機関砲の最大射程はおよそ5㎞だから、一斉射撃をしてから逃げ出せばいいな。
この一撃離脱方式を繰り返せば敵の気勢を削ぐことだってできるだろう。
「三連魔導砲斉射用意……撃て! 空の敵も見逃さないでね」
機関砲が空に無数の光を放ち、魔物たちが地上へ落ちていく。
あまりの大量破壊ぶりに背筋が寒くなるほどだった。
それでも話し合いができない以上はこうするしか人間が生き残る道はない……。
(レベルが上がりました)
戦闘の途中でまたレベルがあがった。
職業 船長(Lv.35)
MP 2056432
所有スキル「気象予測」「ダガピア」「地理情報」「言語理解」「二重召喚」「伝導の儀式」「三重召喚」「潜水能力」「釣り」「四重召喚」「水上歩行」
新所有船舶
■潜水調査船:大深度有人潜水艇
全長:9.9m 全幅:2.8m 航行可能深度7000m 乗員3名まで
船体前部に二本のマニピュレーターとバスケットを搭載しており、海底の遺物やサンプルを採集できる。
なかなかいいものが召喚できるようになったぞ。
セイリュウの限界深度は1200mだけど、これならばもっと深くまで潜れる。
ただ、武装はついていないので魔物がいたら抵抗のしようがないけどね。
それにしたって新しい冒険ができそうだ。
ローエンが見たらさぞや羨ましがることだろう。
すぐにでも帰って見せびらかしたいけど、今は戦闘の最中だ。
砂漠に広がる敵を何とかしないとね。
3000体ほどの魔物をやっつけたけど、まだまだ周囲から敵は集まってきている。
「セーラーウィング。敵の増援の様子はどうなっている?」
質問すると、すぐに映像が送られてきた。
砂漠の北の方から大規模な部隊が三つに分かれて迫って来ているな。
これまで倒した魔物と比べてもずっと強そうなのがそろっている。
これは敵の精鋭部隊だろう。
後ろの方には甲冑をつけた魔人の姿も三つあるぞ。
以前戦った蛇鬼王ヤクルスのような将軍格の魔人かもしれない。
それぞれイノシシ、トラ、ゾウの頭で、強靭そうな体つきをしている。
ヤクルスのときのように一対一なら勝てるかもしれないけど、今は敵が多すぎる。
「やっぱり遠距離攻撃+奇襲がいいよね……」
ずるいだなんて言ってはいられない。
僕の肩には何億もの人間の命が掛かっているのだ。
それに、突き詰めて考えれば20万vs1人の戦いだもんね。
卑怯とか言われるレベルじゃない。
「よし、敵の後方へ回り込むよ」
相手が警戒しないよう、先に魔人を叩くことにした。
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