機械仕掛けのアシカ
ファンロー帝国への出発直前になってまた僕のレベルが上がった。
職業 船長(Lv.31)
MP 523619
所有スキル「気象予測」「ダガピア」「地理情報」「言語理解」「二重召喚」「伝導の儀式」「三重召喚」「潜水能力」「釣り」「四重召喚」
■新ゴーレムを取得 海中哨戒型ゴーレム セーラー4×10
セーラー4は海中の敵を見張ってくれるゴーレムだ。
「まるで機械仕掛けのアシカだな。この尻尾はどうやって動いているんだ?」
フィオナさんは目を細めながらセーラー4を弄り回している。
言われてみればメカアシカという表現がぴったりの外観だ。
シルエットはアシカそのものだけど、お腹にはマニピュレーターが二本内蔵されていて、細かい作業だってできるようである。
「分解しないでくださいよ」
「ちょっとくらいいいじゃないか……。にしてもかわいいアシカだ。何か芸を仕込んでみようか?」
セーラー2のように喋ったりはできないけど、こちらの言うことは理解できる。
簡単な作業ならすぐに覚えてしまうだろう。
「そうだ! 防水仕様の魔石探知機の予備がありましたよね?」
「ああ。たくさん作ったからな。そうか! こいつらにあれを装備させれば」
「はい、海底の魔石を拾ってきてくれますよ!」
僕とフィオナさんはさっそくセーラー4に探知機の使い方を教え、網袋を持たせて海に潜らせた。
「上手くいけば労せずして魔石を獲得だな」
「魔石はいくらあっても困りませんからね」
セーラー4たちには一時間の探査時間を与えた。
ベッパーの周りでは二回防衛戦をしているので、探せば魔石は必ず落ちているはずだ。
強襲巡洋艦の試験運用も控えているので、魔石はいくらあっても困らない。
うずうずしながら待っていると光る頭が海面へと上がってきた。
「ピー」
砂浜に這い上がってきたセーラー4が持つ袋には、ずっしりと魔石が詰まっている。
「おお、すごいじゃないか!」
「ピー、ピー!」
10匹のセーラー4は一斉に右ヒレをパタパタさせた。
褒められて喜んでいるようにも見える。
計量してみると、魔石は全部で120キロ以上にもなった。
「レニー、今度こいつらを魔の海峡に連れて行こうぜ。それだけで一財産だ」
魔の海峡ではたくさんの魔物を駆逐したので、魔石はそれこそ大量にあるだろう。
そうそう、アルケイで倒したカリブティスの魔石も捜索できるな。
あれは大物だったから魔石もさぞや大きいにちがいない。
それだけじゃないぞ。
ガイドロス島周辺の海を探せば、さらなる量を見つけられるだろう。
ガイドロス島攻略で魔石の供給は一段落したんだけど、セーラー4がいれば恒久的に困ることはなさそうだ。
ファンローへ行くときも一体くらい連れて行こうかな?
キャンプをしている間に周辺の海を警戒してもらうのに便利だし、ひょっとしたら大きな魔石を見つけてくれるかもしれない。
魔石だけじゃなくて貝やエビだって獲ってきてくれそうだ。
獲りたての魚介類を焚き火で焼いたら美味しそうだよね。
今回はミーナさんが同行しないので、残念ながら凝った料理は作れない。
でも、素材を火にかけるだけのワイルドな料理だって、野趣に溢れていて楽しいと思う。
ホタテ貝のバター焼きとかロブスターの塩焼きか……。
考えただけで口の中に涎が溢れてしまった。
「今後ともよろしくね」
「ピー!」
セーラー4は一斉に右ヒレを高く上げた。
◇
「召喚、クルーザー!」
ベッパーの埠頭に豪華なクルーザー船が現れた。
最近はイカルガなどの大型船にばかり乗っていたので、この船がやけに小さく感じてしまう。
でも、三人で旅するにはじゅうぶん過ぎる装備がついているし、室内だって広々と使える仕様だ。
「武装は機銃だけか?」
シエラさんは少し心配そうだ。
「いざとなればセイリュウとスザクを艦載機として呼び出せますよ」
クルーザーの後部デッキは広く、魔導モービルを置くスペースは確保できる。
「それなら安心か……」
「それに、本当に困ったときは水陸両用強襲巡洋艦も出せますので」
こちらは普段は運用していないので、いつでも使うことが可能である。
強襲巡洋艦は大きいけど、乗組員は戦闘型のセーラー3が1000体もいるので、運用はたやすいのだ。
「おお、三連魔導砲! あの重厚感、威圧感。私のいちばんのお気に入りの船……」
シエラさんが身悶えている。
「魔石消費が激しいから、緊急事態のときだけですよっ!」
念は押しておいたけど、シエラさんの耳に入っている様子はなかった。
「それでは行ってくる。あとのことをよろしく頼むぞ」
アルシオ陛下がそう言うと見送りの人々は深く頭を下げた。
「それと、移民局の人手不足の件だが……」
この期に及んで陛下はまだ仕事の話をしてしまう。
そんな陛下をアクセルさんがやんわりと諫めた。
「陛下、万事心得ておりますので、どうぞ心安らかにお発ちくださいませ」
「む、そ、そうか……。そうであるな」
「行きましょう、陛下」
はしけに立って手を伸ばすと、陛下は未練を断ち切るように僕の手を取った。
「それでは今度こそ本当に行ってくる」
笑顔でそう告げると、陛下は操舵室へと上がっていく。
久しぶりにご自分で船を操るそうだ。
それもいい気分転換になるだろう。
アルシオ陛下に続き、シエラさん、セーラー4の順番でクルーザーに乗り込む。
「行ってらっしゃいませ」
皆がそう言って頭を下げると、後部デッキに座ったセーラー4が、バイバイをするみたいに尻尾を振った。
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