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デザインアニマル

 海の中はかなり濁っていたけど「地理情報」とセンサーを駆使して難なく進むことができた。

海中における魔物の数はかなり減っている。

マジックミサイルは温存することにして、クローで敵を撃破しながら問題の穴へと近づいた。


 ローエンは新たな敵の出現を警戒していたけど、今のとこところ穴は静かなものだ。

ライトの光量を上げると、穴はずっと奥まで続いていることがわかった。

入り口付近はゴツゴツした岩だったけど、奥に進むと壁は明らかに人工物で、凹凸のない岩に変わった。

壁には海藻や貝類がびっしりついている。


 やっぱりここは古代遺跡の一つなのだろう。

ガイドロス島の攻略が終わったらじっくりと調査をする必要がありそうだ。

ひょっとしたら財宝や新しい技術が眠っているかもしれない。


 400mほど進むと広い空間へとやってきた。

ここはもう島の内部で、上の方は空気のある屋内になっているようだ。

ゆっくりと浮上して僕は驚いた。

水上は広い部屋になっていて、無数の巨大な機械が置いてあったのだ。

大きな音を立てながら機械はどれも動いているようだ。


「っ!」


 魔物の気配がして思わず身構えたのだけど、そこにあったのは巨大なカプセルだった。

中はピンク色の液体で満たされていて、不完全体の魔物が眠っている。

カプセルは数十も並んでいて、そのすべてに魔物が入っているではないか。

ひょっとして、ここで魔物が生み出されているのか!?


 僕が見守るすぐ横で警告音が鳴り出し、一つのカプセルから液体が抜かれ始める。中の魔物はシーモンクで、ほぼ完全体だ。

たぶん、今から外へ出てくるのだろう。

油断なくコトの成り行きを見守ることにする。


 カプセルには車輪付きの台座があり、液体を抜かれた後は大きな水槽の方へと自働で動いていく。

水槽は僕が入ってきた穴のすぐ横にあり、海中へと繋がっている。

きっと、何らかの処置を施された後に海へと出ていくのだろう。

間違いない、魔物はこうやって生み出されるのだ。


 でも、古代人たちは何のためにこんなものを? 

しかも、これだけのテクノロジーを持ちながら彼らはどこへ行ったんだろう? 

疑問は尽きないけれど、調査は後にして、今はここを何とかしないといけないな。


 魔道具みたいに主電源があればいいのだけど、どこをどうすれば装置を止められるのかがわからない。

フィオナさんがいればよかったけど、今は何千キロも離れているからなあ……。

やっぱり壊すしかない? 


 魔物がこちらへやってくる気配があった。

さすがにセイリュウを身につけたまま身を隠すことは無理だ。

音もうるさいからね。

「地理情報」で感じられるのは二体だけなので、奇襲をかけることもないだろう。

僕はカプセルの横に立って、敵が室内にやって来るのを待った。


 奥の扉を開けて入ってきたのは鳥型の魔族だった。

凶悪なアホウドリみたいな顔で、背中の翼は折りたたんである。


「忌々しい人間どもめ、黙って俺たちに喰われていればいいものを、抵抗なんてしやがって」

「まったくだ。鳳凰が奴らに味方しなければ俺たちの圧勝だったのにな」

「鳳凰だけじゃない、大地神の使徒まで奴らの味方をしているらしいぞ」

「どうなっているんだよ……」


 魔族たちはぶつぶつ言いながら機械の前に立った。

どういうわけか僕には気がついていないようだ。

きっとセイリュウをゴーレムか何かだと勘違いしているのだろう。

それに、こんなところに敵がいるとは思っていないのかもしれない。


 都合がいいので黙って見ていると、奴らは大きなダイヤルを右に回し始めた。


「よし、これで生産速度が上がるはずだ」

「だが、これをやると、年間の生産量が落ちてしまうんだよなぁ……」

「何を悠長なことを言っているんだ。ここが落ちたらおしまいなんだぞ」

「わかっているって。よし、次へ行くぞ」


 魔族たちは部屋を出て行ってしまった。

僕は「地理情報」で奴らの行方を追いながら、ダイヤルの前へやってきた。


 ダイヤルには古代文字で0〜10と書かれいて、今は10のところにダイヤルは合わせられている。

そういえばカプセルの中の液体はさっきよりも濃いピンク色だ。

このダイヤルが生産速度を調節しているのだろう。

だったら、とりあえずこれ0にしちゃえばいいよね。


 セイリュウを外して送還し、ダイヤルを左へと回してまう。

途端に室内で響いていた機械音が小さくなり、カプセルの中の液体も薄くなった。


 ピピッ ピピッ ピピッ


 不意に警告音が鳴り、ダイヤルの上にあったパネルに古代文字が映し出された。


『生産キャンセルの指示がありました。カプセル内のデザインアニマルは廃棄されます。よろしいですか?』


 デザインアニマルって魔物のことかな? 

続いてパネルには、『はい / いいえ』と表示されている。

まるでステータスボードだ。

たぶん、『はい』を押せば廃棄が選択されるのだろう。

試しに『はい』を押してみると思った通りで、『廃棄を確認しました。作業終了までの残り時間は24分です』という表示が出た。


 よしよし、この調子で全ての機械を止めてしまおう。

僕は「地理情報」で追跡していた先程の魔族に注意を向ける。

奴らは次へ行くと言っていた。

きっと他にもこういう場所があるのだろう。

そっと後をつけて、すべての機械を止めてしまうとしよう。



 通路に魔物の姿はなかった。

総力戦になっているから、みんな外で戦っているのだろう。

それにしても、ここは不思議な場所だ。

古びてはいるのだけど、どこの国とも内装のおもむきが違う。

無機質なクリーム色の壁が続く通路は意外なほどに明るい。

とてもじゃないけど、魔物の秘密基地って感じではない。

ところどころ雑に補修された跡があるけど、これはきっと魔族がやった仕事なのだろう。


 僕は形見のナイフを握りしめて魔族たちの後を追う。

奴らの入った部屋は特定できていたので、適当な場所でやり過ごし、入れ違いで室内に入った。


 予想通りここにも大型の機械がひしめいていた。

先ほどの部屋は水棲すいせいの魔物を生み出す部屋だったけど、ここは陸上の魔物を産み出すための部屋のようだ。

これもサクッと止めてしまおう。


 同じ手順で生産を止め、カプセル内にある作りかけの魔物はすべて廃棄してしまった。

さて、またあの魔族たちを追いかけるとするか。



 魔族二人は上り階段を上がっているところだった。

この施設は島の岩山をくり抜いて作ってあるようだ。

二人はガヤガヤと話し合いながら急いでいる。


「本当に脱出する気か?」

「ここがそう簡単に落ちるとは思えないが、魔王様に報告は必要だろう。戦いの長期化を睨んで援軍を派遣してもらった方がいい」

「わかった。だが、鳳凰には気を付けろよ。ウィンドドラゴンだってあんなに速くは飛べない」


 こいつらを行かせるわけにはいかないな。

僕は足を早めて奴らに追いつき、オリハルコンナイフを振るい、二体とも音もなく倒した。

死体はそのままにして、僕は階段を上る。

この上はどうなっているのだろう?


 重い金属製の扉を開けると、そこは岩山の頂上だった。

きっとここから飛び去ろうとしていたのだな。

岩山の頂上は平らになっていて、広い。

切り立った崖のそばまで寄ると、戦いの様子がよく見えた。


 ファンロー軍の陣地はさらに厚みを増したようだ。

ローエンの乗るゴライオンも先ほどよりずっと陸地に近づいている。

機械を止めるのに時間がかかったから、ローエンは心配しているかもしれないな。

無事なことを知らせたいけど、ゴライオンに通信機はないから連絡の取りようがない。


 こうやって考えてみると、通信機だけでも僕の船はチートなんだよな。

そうだ、ちょうどいいスペースがあるから、ここで装甲兵員輸送船を呼び出してしまおう。

ここからグレネードランチャーで攻撃すればいい援護になるし、ローエンにも僕の存在を知らせることができる。


 瓦礫でドアを封鎖して、誰も入ってこられないようにした。

それから輸送船を使って砲撃を開始する。

自分の魔力を直接送り込むから魔力切れに気をつけないとね。

僕は魔物が密集する場所や、軍略的に重要そうな場所へと砲撃を開始した。


 あらぬ方向から攻撃されて魔物たちが右往左往している。

それを機にファンロー軍がさらに攻め込んでいるぞ。

勝敗はもう時間の問題だろう。

一度ローエンのところへ戻ることにして、ゲンブを召喚した。


第2巻が明後日、4月7日に発売されます。

よろしくお願いします!

応募者全員にレニーからのハガキが当たるツイッター企画も開催中。

詳しくは活動報告からどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます しばらく更新が無かったので心配していました
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