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揚陸部隊を支援せよ

 海岸線で闘う揚陸部隊は砂に足を取られながら苦戦していた。

援軍が投入されるようだったが、後続部隊は魔物に分断されてしまったようだ。


「くそ、もう無理だ。これ以上は入り込めない。むしろ俺たちが押し返されているぞ」


 兵士の一人が泣きごとを言いだす。

じっさい、彼は涙を流しながら槍を振るっていた。


「いや、落ち着け。そうでもないぞ」

「なにがだよ⁉」


 同僚の兵士は冷静に周囲を見回す。


「さっきよりも敵の攻撃が緩くなったような気がしないか?」

「それは……」


 考えてみれば数分前までは、このようにしゃべっている余裕がないほど敵の攻勢は強かったのだ。


「さっき各所で爆裂魔法が起こっていただろう?」

「いや、目の前の敵で精いっぱいで気づかなかったけど……」

天翔あまかける鳳凰ほうおうが俺たちを助けてくれるのを見たってやつもいるんだ」

「鳳凰? そんなバカなこと……」


 否定しようとした兵士の眼前で大爆発が起こり、浜へ殺到してきた魔物の集団が吹き飛んでいた。


「何事だ!?」


 兵士たちは攻撃の出所を探るために周囲を見回す。


「おい、あれを見ろ!」


 彼が指し示す先には海面を高速で移動する緑色の物体があった。


「あれは、新手の魔物か? それともゴーレム?」

「違う、あそこから発射される攻撃魔法はすべて魔物に注がれている。援軍だ……、強力な援軍が来たんだぁっ!!」


 絶望的悲壮感をたたえた揚陸部隊の顔に生気が戻っていた。


       ◇


 僕の役割は揚陸部隊の支援だ。

そこを間違わないように突進する。

とにかく彼らに犠牲者を出さないように気をつけよう。

そして、ローエンたちの後続部隊が安全に上陸できる場所を確保するんだ。


 収束魔導ビームと魔導グレネードを速射しながら浜辺へと上陸した。


「ロックナ王国伯爵、レニー・カガミ見参けんざん! によって助太刀すけだちいたす!」


 魔導モービルはイビルゴーレムと間違えることもあるから、念のために名乗りを上げておいた。

ところが僕の名乗りは予想以上に兵たちの士気を上げてしまったようだ。


「おお! 噂の船長が救援に来てくれたぞ!」

「ローエン皇子の命を救われた鶴松大夫様かくしょうたいふさまか!」

「いける、いけるぞ! この機を逃さず反撃に転じろおお!!」


 兵士たちは息を吹き返し、それぞれの小隊が連動して動き出した。

僕も特に魔物が多い場所で大剣エ・クラナを振るう。

遠距離魔導攻撃に大半を使ってしまったので、残存魔力は半分以下だ。

活動時間の残りは15分といったところか。


「できる限り抑える。余裕ができたものは今のうちに傷の手当てを!」

「はっ!」


 本当は特殊医務室のある船を呼び出してあげられればいいのだけど、それらを装備できる船はいずれもロックナで就航中だ。

人が乗っている状態では送還も召喚もできない。

せめてできる限り敵を倒して、時間を作ってあげることくらいしか僕にはできなかった。


 ピピッ! ピピッ! ピピッ!


 ゲンブの警告音が鳴り響き残存魔力が残り少ないことを告げてくる。


「ごめんなさい、いったん戻りますが、すぐに戻ってきます。今度は空から」


 僕は近くにいた部隊長らしき人に声をかけた。


「空? さっきの鳳凰ですか!?」


 鳳凰ってファンロー帝国で言い伝えられる伝説の火の鳥のことだよね。


「そんな感じです。持ちこたえてくださいね。帰ってくるまで10分もかかりませんから」

「伯爵を信じております!」


 だったら期待に応えないわけにはいかないよね。

ゲンブをその場で回転させて海へ戻る。

スザクの補給はもう終わっているはずだろう。



 ゲンブとスザクの波状攻撃を繰り返し、島の魔物に大打撃を与えた。

揚陸部隊は上陸地点の安全を確保して、後続部隊が次々と島への上陸を果たしている。


「ローエン、次はどうする?」

「いや、すごくありがたいのだが……レニーは大丈夫なのか?」

「大丈夫ってなにが? ゲンブの魔導爆発型反応シールドは優秀だから、僕にけがはないよ」

「そう言うことじゃなくて、レニーの体力の話だ。ずっと戦闘をしているだろう?」

「これくらいどうってことないよ。前線の兵士たちはもっと大変だもん」


 ローエンは苦笑しながらため息をついた。


「まったく……わかっていたことだけど、とんでもない化け物だな、我が弟は」

「そうでもない、少しお腹が空いているから」


 そういうと、ローエンは小さく笑った。

その表情にはいつもの余裕がよみがえり、僕も安心してしまった。


「誰か、レニーにこの場で食べられるものを」


 ローエンが命じると、すぐにオニギリが運ばれてきた。


「あ、オニギリなんて久しぶり」

「ハイネルケにもオニギリがあるのか?」


 ローエンは不思議そうに訊いてくる。

オニギリはエイジリア大陸の食文化だ。


「僕のじいちゃんの好物だったんだよ」


 おにぎりにかぶりつくと焼いた塩漬けサーモンが入っていた。


「食べながら訊いてくれ」


 ローエンは戦況と今後の予定を説明してくれる。


「レニーのおかげでガイドロス上陸は成功だ。陣地の構築も速やかにできて、今は少しずつ魔物の力を削いでいる」

「だったら、そっちをさらに手伝う?」

「いや、レニーには海の中の魔物を何とかしてもらいたい。あいつらのせいで船の動きが鈍くなってしまう。セイリュウを使ってくれないか?」


 そういえば、ローエンにはセイリュウを見せてあったもんね。


「了解! じゃあ、今度は海の中を片付けてくるよ」


 指に着いたご飯粒を口に入れて僕はセイリュウを呼び出した。

ローエンは僕の体力を心配していたけど、まだまだ頑張れるぞ。

青い機体を煌めかせて、僕は海の中へと飛び込んだ。


カクヨムの方を1話分だけ先行させております。

続きが気になる方はそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 待ってました! ローエンももう大丈夫みたいだし、さあ反撃開始だな。
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