表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/153

陸 海 空

 10日後、ファンロー帝国のハーロン港に戻った僕はローエンの見送りを受けていた。

イカルガは間もなく使節団を乗せてコンスタンティプル・ハイネーン方面へと旅立つ。


「あらためて見ると呆れるほどでかい船だな」


 窓から外を見下ろすローエンがつぶやく。

僕たち二人はビップルームでお茶を飲んでいる。

テーブルの上にはローエンが持ってきてくれたファンローの焼き菓子が並んでいて、僕はその中の一つ月餅げっぺいを食べた。

どっしりとして食べ応えのあるお菓子だ。

日持ちするそうなので航海の間に少しずついただくとしよう。


 使節団の荷物はすべて積み込まれ、護衛の兵士たちの半分も乗船を終えていた。

後は代表であるワン大使を待つばかりだ。


「ハーロンからコンスタンティプルまでは9日くらいだったか?」

「うん、ここからだと4500㎞くらいはあるからね。それくらいはかかると思う」

「それでも早い。陸路と船を使えば100日以上かかるのだからな」


 安全に、かつ快適に4500㎞もの長距離航行をできる船はシャングリラ号以外には存在しない。


「ワン大使はコンスタンティプルやハイネーン、その他の国々も回るから戻ってくるのは60日後くらいになると思うよ」

「そうか……」


 なんだろう、ローエンの様子がいつもと違う。


「ローエン、何かあったの? 元気がないみたいだけど」

「いや、どうせなら私もこのままイカルガに乗って外国を旅してみたかったなと思ってさ……」


 そういうことか。


「だったら、本当にこのまま乗っていかない? 旅の間に操船も教えてあげられるよ」

「そうしたいのはやまやまだけど、私にも仕事がある。皇子というのはこれで忙しいのさ」


 ローエンはカップに残った冷めたお茶を飲み干した。


「そっか……、仕事なら仕方がないけど、なにをするの?」

「ちょっとした魔物の討伐を命じられている。私が指揮することになった」


 それこそ寝耳に水だった。


「ええ!? 本当に大丈夫なの? なんなら僕も加勢するよ」

「レニーはこの仕事があるだろう? 大丈夫、こう見えて軍略は得意なのさ。それに1万もの軍勢での遠征だ。心配はいらないさ。とりあえずは準備段階だしね」


 1万とは大規模だ。

ロックナ解放軍の規模も大きくなったけど、いまだに6000人未満だもん。

とはいえ、ファンロー帝国での1万ってそんなに多くはないんじゃないか?


「だけど心配だなあ……。出発はいつくらいになるの?」

「今は軍の編成段階だから……100日後くらいかな……」


 100日後であれば使節団を乗せて帰ってこられるだろう。


「じゃあ、その時は僕も協力するよ。きっと役に立てると思うから」

「レニー……ありがとう。浮世の些事はさっさと終わらせて、早くレニーと旅に出たいよ。本当に……」


 ローエンの笑顔はいつも通りで、僕は何ら疑うことなく無邪気に冒険の話をしていた。

きっと二人で旅立つ日はやってくる、その時見ていた紺碧の空のように僕の心には一片の疑いもなかった。

そして僕は無邪気な少年のまま西へ向けて出港した。



 使節団の代表であるワン大使はファンローでも高名な外交官であり、かなりの切れ者と評される人物だった。

外交官だけあって数ヵ国語を流暢に話すことができる。

また、食通としても名を知られており、ファンロー料理に関する著書をいくつも手掛けている人でもあった。


 ミーナさんがさっそくワン大使が執筆した『ファンロー料理大全』を購入して、僕に読んでくれと頼んできたくらいだ。

ミーナさんはファンロー語が読めないからね。

でも、この本は料理の絵も豊富で、見ているだけでも楽しくなってくる。

ミーナさんはちゃっかりワン大使にサインまでもらっていた。


「はっはっはっ、ウルト総料理長のような腕のいい料理人に読んでもらえるとは、私もこれを書いた甲斐があったというものだよ」

「そんな、もったいないお言葉です」

「いやいや、本来なら君を私のお抱え料理人に迎え入れて国に帰りたいくらいだよ。まったく、鶴松大夫が羨ましい!」


 ワン大使は大きなお腹を抱えて愉快そうに笑っている。

船の設備や料理にすっかり満足してくれているようだ。


「大使、お酒のお替りはいかがですか?」

「ありがとう、大夫。もちろんいただくとしよう。それにしてもこのカクテルというのはいいな。気に入ったよ。わが国でもぜひ流行らせてみたいものだ」


 数種類のお酒や果汁を混ぜて飲むカクテルは、洋の東西を問わず一般的ではない。飲めるのは今のところイカルガだけだと思う。


「何にしましょうか?」

「バイオレットフィズをもらおう」


 視線で合図しただけで、バーを担当しているセーラーSは器用にカクテルを作りはじめた。

外では魔物の襲撃もあるのだけど、旅は順調そのものだ。

それには秘密がある。


職業 船長(Lv.26)

MP 104761

所有スキル「気象予測」「ダガピア」「地理情報」「二重召喚」「伝導の儀式」「三重召喚」「潜水能力」


新型艦載機

■空戦型魔導モービル スザク

飛行能力を持った魔導モービル。地上や洋上の敵を攻撃することが得意な戦闘機である。

全長:2.89m


駆動装置:重力魔法、風魔法に加えて火炎魔法も使用するトリプルハイブリッド駆動装置を搭載。魔力を大量消費する代わりに推進力を大幅に高めるアフターフラッシュ機構が搭載されている。


最大速度:1592㎞/h(最大速度:2450.09㎞/h:アフターフラッシュ使用時)

航続飛行距離: 1092㎞


防御系装備

〇マジックチャフ

 魔物の神経系に作用する魔力波を出して撹乱し、攻撃を逸らすことができる。


攻撃系装備

〇マジックイコライザー 頭部に取り付けられた5砲身のガトリング式ロータリー魔導機関砲。飛行時に水平状態で使用する。

〇8連マジックミサイルランチャー:地上、洋上、海中の敵を攻撃できる爆裂魔法が詰まった円筒形の武器。自動追尾ができる優れもの。

〇ファイヤージャベリン:火炎属性を付与された近接戦闘用の武器。飛行時は背部に取り付けられ、機体をファイヤーシールドで覆うことができる。ファイヤーシールドは攻撃と防御が一体になった魔法で、敵の攻撃を弾き、近づく物体を焼き尽くす。


強化系

〇魔導アシスト外骨格:外骨格の補助作用で動きの一つ一つがパワーアップする。


センサー系

〇魔力波探知装置:半径15キロの様子が分かる。

〇魔力チャージボックス:魔力をフル充填で最大40分程度活動できる。



 この航海が始まる直前に僕のレベルが26に上がった。

ゲンブ、セイリュウ、と続き、今度は空を飛べるスザクを召喚できるようになったんだ。

ついに陸海空が揃ったね。

ひょっとして魔導モービルのシリーズはこれで終わりなのかな? 

なんとなくだけど、まだ出てくる気がするなぁ……。


 とにかくこの三体をお姉さんと僕で運用してイカルガを守っているのだ。

そんじょそこらの魔物じゃ敵うわけがないよね。

今ならカリブティスだって軽く倒せてしまうと思う。

それくらい決戦魔導兵器の威力はすごかったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] びゃなんとかさん「我の出番はよ」
[良い点] 陸海空が揃ったか。 [一言] ローエンに物凄く不穏な空気が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ