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プロローグ 友達のはじまり。

この作品はエブリスタ、ノベルアップ+でも連載しております。

 ある日、幼馴染が男の子と、男の子同士でキスをしていた。

 私の体の中で、何か、感情の類の何かが、胸の真ん中を軸に、渦を巻いて暴れまわっていた。

 そのせいで頭がパンクして、そのせいで呼吸もおろそかになって、そのせいで一歩たりとも動けなくって、私に気づいていない二人が去るまで、校舎裏の影に身を潜めていた。

 いったい、何の感情なんだろう、これは。良いものではないけれど、その正体が掴めない。


 驚き? 恐怖? 罪悪感? 嫉妬?


 わからない。

 どれでもあるような気がするし、どれでもないような気もする。

 とりあえず、わからないということは怖くって、それと、気まずくもあって、それ以降幼馴染とは、しばらく話せなかった。






 人の繋がりというのは、案外脆いものなのかも知れない。

 あれから一週間。私が涼を避け続けていると、涼もそれを察したらしく、私に近づいてこなくなった。

 幼馴染と言っても、家は私のマンションから少し離れた場所にあるし、高校に入ってからはクラスも違うし、もともと接点なんて少なかったのだ。

 でも、流石に唯一の同胞を失ったのは寂しい。

 私には昔から、友達が出来なかった。心の中で何となく、友達なんて面倒だ、必要ない、なんて思ってて、それがどこか、周りの態度へ表れているらしく……流石に、全くの独りぼっちというのも寂しいけれど、幼馴染がいたせいでそうはならなくって、しかも、閉じて生活している内に、あんな趣味までできちゃって……

 とにかく、私は今、全くの独りぼっちである。寂しい。そして、アイツはそうではない。ムカつく。

 ……大体何なんだよ。あの時、涼と一緒にいたのは、よりによって学年一の美少女もとい美少年の、中大路(なかおおじ)明星(あけほし)……前からちょっと懐かれてたみたいだったけど、まさかそんな人気者と、そんな関係だったとは。

 あー、ダメだ。なんか無性にイライラする。


「あの、高松さん。」


 頭を抱えていたら、隣の席の子に話しかけられた。

 ああ、人と話すのだるい……


「は、はい。な、何の御用でしょうか?」


 緊張して言葉を紡いだけれど、クラスメイトに対して他人行儀過ぎたかな。やっちゃったかな。でも、私普段クラスメイトと全然話してないし、実際他人同然だし、こんなのがいきなり馴れ馴れしくしてきても変に思われるよね。うん。

 いやぁでも、やっぱりちょっと同級生に敬語て……

 ああ、わかんない。わかんないよぉ……


「消しゴム、落ちてたから。」


 黒髪ロングの美人さんが、私に向かって笑いかける。

 綺麗な人だなぁ……まるで、おとぎ話のお姫様か妖精さんかが、この世界に迷い込んでしまったみたい。こんな人が、隣にずっといたなんて、なんで気づかなかったんだろう……


「あ、ありがとう。」


 彼女から、消しゴムを受け取る。その細い指先が、私の手に触れる。冷たくて柔らかくって、なんでだろう、ちょっとドキドキした。生身の人間に触れたの、久しぶりだからかな。

 とりあえず、今度はカジュアルにお礼を言えたから、ぐっじょぶ、私。

 よし、このままお近づきになろう。これも何かの縁だ。なんか、この子には、面倒でも友達でいたいなって思える気がする。私が面食いなだけかもしれないけど。


「あ、あのっ! お、お名前は……!?」


 そう言うと美人さんは、


「えっと、腐頭(ふどう)由美(ゆみ)だけど……」


 と、困った表情で答えた。


「もしかして私、覚えてもらえてなかった?」


 ……っ! そうじゃん! 普通クラスメイトの名前くらい、まして隣の席の子の名前くらい、覚えてるべきじゃん!


「ご、ごめん! わ、私、あんまり他の人のこと見えてなくて、というか、どっかでどうでもいいって思ってて……あ! でも、腐頭さんとは仲良くしたいって思ってるから! ……あれ? 何言ってるんだろ、私。」


 ああ、ダメだ。なんか、言葉が上手く繋がってくれない。一人でタイプしてる時は、あんなにスラスラ出てくるのに……


「えぇっと、つまり、お友達になりたいってこと? 私と?」


 でも、彼女は緊張なんてしていないようで、スラスラっと言葉を繋げてくれる。


「そう、それ! 私とっ! 私みたいなのでよければ、友達になってください!」


 あぁ、凄くぎこちない。きっと、変に思われた。

 でも、言えた。私は初めて、友達を作ろうと動き出した。


「ふふっ、良いわよ。高松さんって、面白いわね。」


 その時の友達の笑顔は、とってもとっても、綺麗だった。

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