アースの決闘後
アスティーヌ君との決闘の次の日。
彼からの催促は、丁寧にお断りし、俺への印象を悪くした。
だがしかし、俺はアスティーヌ君との戦いがある前から彼の為の訓練場は押さえていた。なんせ、相手が勝つことが決定しているからだ。
勿論先程の決闘では手を抜きまくった。うわぁ、何だ!?っていうのも演技の1つだ。
因みに、訓練場を押さえたという手柄は、たまたま入試3位と好成績で席が後ろのリエル・シーリング=ルエス(伯爵家)に押し付けた。
彼女には悪いと思いつつも、しっかりと事情を話したら了承してくれたので、物分かりの良い奴、と思った。
これで、ひとまず大丈夫だ。
だが、皆さんからの不評が激しくなってきている。例えば、平民に決闘を申し込んでおいて負けた奴、とか、決闘に負けたのに約束を守らない卑劣な奴などだ。しかも、俺って悪役に徹する事だけ考えてたから、友と呼べる人がいない。
中学校時代、俺は自由きままに本を読みながら(悪役についての)過ごしていた。これでは確かに友達なんて出来ないであろう。課外活動のグループ分けでも、アース君がどのグループに入ってもあまり変わらないからどこでも良いよって言われて悲しいことになる。
そうはなりたくない。(もう小中となってしまっていたけれど。)
ということで、俺は友達作ろう作戦を立てる。
友達を作っていくことにより、もしも悪役で皆さんからの不評を頂き、避けられるようになってぼっちになっても大丈夫だ。
でも、どうやって作れば良いのか。
あ、ちょっと待って。
俺友達作ったこと…無いかも。
どうやって作るの?
今まで冷静に生きてきた俺が混乱する。
すると、通りがかりの貴族に話し掛けられた。
「何ウンウン唸ってるの?非常に迷惑なんですけれど。」
おお、友達第1号が来た!?
「あ、あぁ、失礼しました。」
期待して、声の主を見てみると、サラサラ金髪のロングヘアーが似合う、目付きの悪い女の子だった。瞳は…青い。
「友達をどうやって作れば良いのか迷っていたところなんです。」
「…そう。私には関係の無い事ですわね。」
なんてつっけんどんな性格なのでしょう。俺は悲しかった。もっと優しい子で宜しく。俺はなんて運が悪いんだ…!
「せめて、名前だけでも教えて頂けないでしょうか。」
俺は丁寧に駄々を捏ねた。(丁寧に駄々を捏ねるって何なんだろうね。)
公爵家の俺がこんなにへりくだってお願いしているんだ。それくらいは…してくれる…よね?
「無理ね。まあ、貴方と同じ公爵家であることは言っておこうかしら。」
「それはいいんですか!?」
俺は、笑ってしまった。
こんな人は見たことがないぞ。
不覚だ。
しかし、公爵家とは珍しいな。
自分が公爵家であるというのに、言う事ではないことくらい分かっている。
違うのだ。国内の公爵家は、15軒くらいしか無いから、1つの学年に2人も公爵家がいることが不自然ということだ。俺と同い年の息子がいる公爵家って、いたっけな?どうだろう。
もし、公爵家という身分で自らの正体の隠れ蓑にしているのならば、1つ思い当たる事がある。最悪の場合だ。
もしそうなら、俺でも手に負えなくなってしまうだろう。そうでは無いと信じたい。
友達第1号がそんな奴だったら、俺はショック死してしまうだろう。
「何よ、悪かった?じゃあ、金輪際貴方とは関わらないようにするけど、それで良いのかしら?貴方長年ぼっちの様だけれど。」
なんだか、見透かされているようで、嫌な気分だな。
そもそも長年ぼっちってなんだよ!?
俺が今まで1人で生きてきたみたいになってるではないか。
現実そうなのだけれど。
友達と喋るより本を読んでいる方が気楽だろ?そう思わないか?俺だけですかね?
本当に小さい頃から本を読んでいた俺は、気に入った本の内容を丸暗記する事にはまっていた。
親には大分ひかれた記憶が鮮明に残っている。
そんなことより。
もし、彼女と仲良くならずに生活したら。
俺の悪役Life計画は潰れてしまう。
だけど、友達と喋るのは苦手。
だから俺は、こちらを選んだ。
「嫌です嫌です!下僕でも良いんで、関わって下さい!!」
「あら、下僕でもいいの?」
彼女がニヤリと笑う。
「あっ…」
しまった。調子乗ってるとすぐ間違えてしまう。これは、ちょっと大変な事になる。急いで言い直して間に合うかな?
「前言撤回とか…ありですか?」
「無しです。」
間に合いませんでした。
スッパリと打ち切られた悲しさは、半端な物ではなかった。取り付く島もない。最悪な出会いだ~ッッ!
…駄目でしたね。作戦は失敗です。
本当にどうしたら良いのか…!(2回目)
今日は諦めて、授業を受けよう。