アスティーヌの決闘後
アスティーヌ=ゼルヴァ視点
先程、アースを鑑定してみたが鑑定不可と書かれていた。
時々ある事だ。
相手は防御系統の魔術が発達しているのかも知れない。
なんせ、俺の炎の連金術を防いだのだから。
しかし、予想以上に強かった。
最初、魔術構築が遅いと思ったが、
最終的に俺は、負けそうだった。
だが、最後の力を振り絞った。
負けられない。
絶対に負けたりしない。
あの時、そう心に誓った。
あんな、他人を見下すような人が学校を動かしてはならない。
結果、俺は勝ったのだ。
アースは傷だらけで気絶。
本当に良かった。
「アスティ、格好良かったぞ!」
「ありがと…はあっ…」
「大丈夫か?保健室行くか?」
「いや…大丈夫だ。」
丁重にお断りし、リュックを背負って校門を出た。
寮に着くなりベッドに倒れこんだ。
「疲れ…た」
肉体的な傷はもう無いが、精神的な傷が出来たのだ。
俺はそのまま意識を手放した。
ー翌日ー
朝。
アースが俺の所へやってくる。
「やあ、昨日はよくも俺を倒しましたね?」
負けたというのに、偉そうな態度。
俺は頭に来て、こう言った。
「約束、忘れてませんよね。訓練場の交渉、早く行って下さい。」
あー、腹が立つな。
「行きませんよ」
俺は怒りではなく疑問が浮かんだ。
行くって約束しましたよね?俺は、アースがどうして約束を守ってくれないのかが疑問だった。
だから、強めに言った。
「何故ですか、行ってくれると約束しましたよね?」
「……。無理だな。俺は貴族なので、どうとでもなります。」
意味の分からない理由を立てて勝手に
断ろうとするアースを見て、怒りを通り越して呆れた。
アースって、賢そうに、見えたが、案外そうでは無いらしい。
そして、アースはくるりと背を向け足早に去っていった。
「では、これで。」
………。
冗談とかでは無かったのか…。
「アース様って、嫌な奴。」
シルはそう呟いた。
それは俺も思った。
卑劣な性格。
その代表的な人物がアースと言っても過言では無いと思う。
「あぁ、そうだな。」
すると、後ろの訓練場から女子のきゃあきゃあが聞こえて、振り返る。
「ん~?何だか、訓練場が五月蝿いね。」
シルが呑気に声を漏らす。
「本当だ。なんでだろう?」
不思議に思った俺は、貴族の話を盗み聞きする。
貴族A
「ルエス伯爵家、リエル・シーリング=ルエス様がこの場所をアスティーヌ様だけに提供して下さったんだって!ほら、見てよこの張り紙!!」
貴族B
「まあ、なんと人望が熱いのでしょう!平民であるアスティーヌ様にこのような場所を提供なさるなんて、素晴らしい!」
貴族C
「対してあのアース何とかっていう人の態度は何なのでしょう?全くもって嫌な人ですこと。」
そこへ貴族Dが歩み寄って来た。
貴族D
「ねぇ、聞きました?アース何とかはアスティーヌ=ゼルヴァ様のお願いを引き受け無かったそうよ?だから代わりにリエル様がお受けになられたとか。負けたのになんて白々しい。」
貴族B
「それ、本当?」
貴族C
「アース何とかは、もう1度懲らしめないといけないかも知れないわね。」
しかし、貴族達の噂の速度に驚いた。つい先程話していた内容がもう噂になっているとは、恐ろしい事である。
確かに俺は、貴族の噂は回るのが早いという事は知っていたが、こんなにとは思わなかった。
これから、大切な事を口外するのは止めておこう、そう固く誓った。
因みに、先程貴族達が言っていた不満、俺も同意だ。本当に嫌な人だ、アースは。もう、金輪際関わりたく無いと思う。けれど、どうせ向こうから関わって来るに違いない。
出来ることなら、授業以外では会わないように気を付けたいところだ。
いや、それより。
平民達が言っていた、訓練場に行ってみたいと思った。
俺だけの訓練場に。
リエル様(誰かは分からないけれど)には、後で礼を言っておこうと思った。
訓練場で鍛練をするのが楽しみで堪らない。俺は、訓練場に向かって歩いて行った。
今後とも宜しくお願いします!