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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第4章
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ヴァーチャル花見

 電停で待ち合わせて、結晶郭に向かう。雪の結晶を思わせる六角形の濠に囲まれた城跡で、アニメの巡礼ポイントになっているし、新撰組関係の史跡でもあり、夜景と共に波戸館の看板スポットになっている。見頃はまだひと月先のゴールデンウィークなので、咲く気配も無いが、お花見でも有名。シーズンには工事現場や、事件現場の様なブルーシートが敷き詰められ、ジンギスカンの香りが漂うらしい。

 電停から向かうと巨大な塔が視界に飛び込んで来る。六角形の濠を上から観られる展望タワーになっている。眼下に広がる城跡も圧巻だが、遠目に見える波戸館山や両サイドに迫る海も見応えがあった。奇跡の地形と言っても良いかもしれないね。


「こ、怖い!」

オープンと共に登って、他のお客さんは、年配の人達ばかりだったのに、聞き慣れない黄色い悲鳴が響き渡った。

「真田さん?だよね?」

先生は、初めてこころの声を聞いて驚き、

「楓も、コレはダメかもです。」

武士口調が消えて、2オクターブ高い楓の声にも目をパチクリしていた。


 土方さんの銅像と一緒とか、アニメのシーンに倣ったポーズでカメラに収まった。

「勝手に撮ったら不味いだろ?」

「でも、撮影のカメラとか、スタッフとか居ないぜ!」

ボソボソと聞こえるのは、ヲタ風男子のグループで、結局盗撮に及んでいた。ここではナンパして来る感じではなさそうだけど、何処かでアップされて拡散されるのは嬉しくないな。

「ハイ、画像を見せてくださいね。」

ヲタ達は、威圧感の有る男達に驚き、言われるがままに再生して、

「申し訳ございません、コレは消去願えますか?」

催眠術に掛かったようにデジカメを操作すると、深々と頭を下げ、逃げる用に消えて行った。

「オハヨ!夜行バスは結構しんどいな。」

ヲタを撃退した、柔道部の猛者達が寄って来て、

「あっ、またまたニューフェイス!啓愛の入試って募集要項に美少女限定とかってあるの?」

山岸さんは、半分呆れた様に先生を見つめていた。

「引率の先生で、体育の上原先生!」

芒が紹介すると、3人は顎の関節を心配する位に驚いていた。3人を紹介すると、

「インターハイの結果は、他校もチェックしてますから、お名前は頭に入ってますよ。あと、女子で山口さんっているでしょ?」

「ハイ、私です。」

夢愛が返事をすると、

「えっ?あ、あ、雨、いや、そそそ、そうだったんですね!」

きっと雨の同級生位に思っていたんだろうな。予餞会に紛れ込んだ時もその辺はちゃんと説明しなかったもんね。軽く自己紹介をし直して、公園になっている城跡を散策した。

 再建された『波戸館奉行所』を見学。

「あとで合成するでござる。」

立派に咲くであろう桜をバックに集合写真。道行くひとは、固い蕾と撮っても仕方が無いだろうと不思議そうにしていた。楓は、デジカメとスマホを操作して数分経つと皆んなのスマホが鳴った。スマホを開くと、バックの桜は満開になっていた。

「AI殿が、花咲かじいさんになってくれたでござる。」

更に操作を続け、猛者達のスマホが鳴った。千葉のスマホを見せて貰うと、満開の桜と姉達の画像が3枚、それぞれ選択出来るようになっていた。

「お目当てのおなごを間違えたら画像は残りませぬぞ!」

3人は、迷う事無く選択して、その画像と、皆んなに送った集合写真をゲット。因みに、問題の難易度は、先生はギブ、他の皆んなは、姉達本人を含め悩んで悩んでやっと正解するくらいだった。斉藤さんが、その画像を待受に設定すると、他の2人も真似ていた。

 暫く遊んでいると、撮影会の様な空間を見付けた。私達のコスプレ制服のアニメで主人公達が着るステージ衣装を纏った女の子が3人、アイドルのポーズを決めていた。さっきのヲタ達がが現場を仕切っていた。私達に気付いたアイドル達が駆け寄って、

「めっちゃクオリティ高い!それに、カワイイ娘ばっか!お仕事?プライベート?」

 マシンガンの様に質問が飛び出し、やっと落ち着いて自己紹介。

 3人は地元の別々の高校を卒業して、小雪と優愛の大学の姉妹校に入学が決まっているそうだ。

「私達、創成でコイツが石見沢!皆んな姉妹校だよ。」

夢愛の説明に、アイドル衣装の3人は一瞬固まってしまった。

「今、『付属の小学校じゃ無くて?』って思ったでしょ?皆んなそう思うから気にしなくていいよ!」

ニッコリと説明を続けた。

「いつも、そう思われるって言えばね!」

アイドル衣装の一人が手招きすると、タワーで会ったオタ達がヨロヨロ歩いて来た。

 同じ塾の先輩で、現役の波戸館教育大生。中・高・大と進学する度にアニメ研究同好会を設立して来た、筋金入りのアニメオタク。常識はあるし、危険性は無いので、撮影担当をお願いしているそうだ。

 オタお兄さんにカメラを託し、波戸館のお姉さん達とコラボ撮影会。何枚かを楓が加工して、

「地元であれば、本物が撮れそうでごさるが、上手く出来た故、貰って下され。」

「嬉しい!満開の頃って人がいっぱいでだし、この辺りなんかブルーシートで埋め尽くされちゃうから、コスプレで撮影なんて夢のまた夢なの!」

 ほのぼのした中、山岸さんは不審者扱いしたことをオタお兄さんに誤っていた。お兄さん達は、夢愛が小学生扱いされた時と同じ様な反応でニッコリ許していた。


 新大学生たちはアドレス交換して、姉妹校交流に備えたていた。先生は、同じ志を持つ後輩が沢山いて嬉しそうにしていたが、

「結構明るめだけど、茶髪オーケーなの?私、卒業してからやっとの大学デビューなの。」

波戸館のお姉さんは、自分より明るい茶色を不思議そうにしていると、

「スキー学習の時、バッチリメイクでも生徒に間違えられたから、染めたのでござろう?先生の茶髪は社会人デビューでごさる。」

お姉さん達は、目を白黒させ、撮影会を再開。私達は早めのランチ。

 午後は遥さん(せんせい)のリクエストで、女子修道院に向かった。千葉達との待ち合わせがなければ、ホテルから直行したほうが便利な場所なんだけど、電車自体がアトラクションの様に思える位なので、余分に行き来しても無駄に感じない、乗り放題だしね。

「男の子がいる時に、変装すれば良かったんじゃない?タキシードで一緒に写るのもステキじゃないかしら?」

「稽古があると思って誘わなかったらです。今日1日休みだったので、急遽来る事になったんですよ。」

来るのは昨日決まって、夜行バスで来て、今夜の夜行バスで帰る、ゼロ泊3日の強行ツアー。

「このメンバーと一緒に旅行出来ると思ったら、その位の無理は無理のうちに入らないでしょうね!それにしても、不自然な位に美少女が揃ったわね。」

先生が呆れた様に口にすると、

「第三者ぶってるようですけど、柔道部の皆さんも、アイドルコスプレの皆さんも、普通にメンバーだと思ってらっしいますわ!」

美月のツッコミに先生は顔を赤くしていた。

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