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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第4章
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大学生の新居

 春休みに入ると、旅費稼ぎのバイトが待っている。実は、バイトの話が先でそのバイト代で何処かに行こうおと言う話になっていた。

 バイト先は、花田種苗。本格的に引っ越して、4月イッピから新社屋での業務になる。引っ越し業者の手配を忘れ、直近で依頼したが、1番の繁忙期なのでどこも間に合わず、身内で済ませる事になっていた。細々した物を箱詰めして、会社のトラックでピストン輸送。大物だけは業者さんに頼めたので、まあ素人でも何とかなる(と願う)。

 初日は、全員が旧社屋で荷造り。パソコンで資料の整理をしていたお陰で、何となく仕事の内容が理解出来ていたので、姉弟妹が指示して、整理しながら箱に納めて行った。大きな物を空にして、業者さんに託す。空きスペースをダンボールで埋め尽くして初日を終えた。

 二日目は、母さんとカレン、美月が新社屋、残りは昨日の続き。

 三日目は、ばあちゃんと僕が荷造りを仕切って、いろは、楓、こころがサポート。残りは新社屋で荷解き。四日目も同じ感じで、午後の途中からは、ばあちゃんと二人で後片付け。あとの皆んなは、荷物と一緒に新社屋に運ばれ、向こうを手伝っている。

 五日目は、全員新社屋で荷物を納めて、楓の指揮でパソコンや、OA機器の接続をしたり、カレンダーや、掲示物なんかを貼って、夕方にはしっかりオフィスの景色になっていた。

 かなりのハードワークだったけど、業者さんに支払う分が浮いた分キッチリバイト代に回してくれたので、高校生のバイトとしては、結構な額になりオマケに波戸館旅行の餞別まで出してくれた。


 旅の計画は、バイトの間も継続していて、帰宅後はアニメ三昧。結構夜更ししながら波戸館舞台以外もしっかり制覇した。調べなくても、波戸館だって解る位での有名な景色が沢山あって、カレンは、既に鼻息を荒くしていた。

「ねえ、この制服、阿房宮に無いかしら?」

小雪が面倒な事を言い出した。

「実はね、元々東京の私立のつもりで、資金を貯めてたのよ。創成のアパートも、大学の近くは安い所ばっかだし、夢愛とシェアする事になったから、結構リッチなの、今はね!」

夢愛も、シェアで浮いた分、自由に使えると言い出した。明日、契約に付き合う事になっていて、帰りに寄る事になった。


 翌朝、少し早起きして、ご飯を食べずに花田の家へ。キッチンは片付いていて、炊飯器はタイマーセットされていて、そろそろ炊き上がる感じの湯気を吹いている。冷蔵庫を覗いて、朝のメニューを考えていると、小雪と夢愛が起きて来て、

「コーヒーの淹れ方教えて!」

二人共うちに来る前は、あまり飲んでいなかったし、自宅ではインスタントばかりだったらしいが、最近は濃い目のブラックがお気に入り。キッチンを改装したときに、電動のミルを導入していたので、簡単に挽きたてが楽しめる。

「豆は、フレンチか、フルシティローストが良いよ。二人共濃い目が好きだよね?このスプーンで山盛り1杯。」

「結構使うのね?何粒位かしら?」

小雪は、妙な所を気にしていた。

「数えた事ないよ!でも、ベートーヴェンは60粒キッチリ数えてたそうだよ。」

夢愛は、スプーンで掬って皿に広げて数え出した。

「・・・・・・49、50、51!ベートーヴェンさんには薄かったね!」

フィルターをセットして挽いた豆をセット。

「下から落ちない位に、ちょっとだけお湯を注ぐんだ。」

「それ、普通のヤカンじゃ無いのね?」

「うん、ヤカンでもいいけど、ポットに移した方が、適温だし、お湯のコントロールし易いんだよね!」

「それ、幾ら位するの?」

「もう何年も前だから覚えてないけど、2、3千円位かな?」

少し沈黙になり、天井から視線を下ろした小雪は

「安いコーヒーメーカー買えるんじゃ無い?」

「うん、そうかも。ドリッパーとこっちのポットも入れたら結構な金額だよね。」

「じゃあ、その方が良いかな?冷蔵庫とか買ったポイントで貰えそうだしね!」

結局、コーヒー講座はそこで終了した。


 駅まで歩いてJRでアパートを見に行く。受験の時にザックリ眺めていて、ネットで見てほぼほぼ決まっているらしい。創成駅で乗り換え、創成市の北の果て、大学のある紺の里へ向かった。

 駅前は大きなスーパーやホームセンター等など、ここだけで生活に事足りるラインナップだった。歩いて直ぐの不動産屋さんに到着。

「後藤様と山口様ですね?お待ちしておりました!」

ニッコリ迎えてくれたお姉さんは、私をロックしていた。

「ご一緒にお住まいになられる方は?」

「「私達です!」」

二人の返答に、お姉さんは驚きを隠せなかった。

「だだだ大学・・・んん、合格おめでとうございます。」

多分『大学生なの?』って言葉を飲み込んで、何とか絞り出した言葉と思われた。二人は慣れているので、

「付属の小学校じゃありませんよ!」

ニッコリ答えると、お姉さんは耳をまっかにしていた。

 早速、条件に合った物件に連れて行って貰う。候補は3つに絞られていたが、1番に本命を案内してくれた。二人は即決の勢いだったが、お姉さんは、

「他も見て下さいね!」

5分ほど歩いて2軒目に到着。

「駅からはちょっと歩きますけど、その分、学校は近くなりますよ。」

部屋に入ってから、

「さっきの物件は、人気なんですが、他の7室全部が男性の一人暮らしなんです。ここなら、両隣が同じ大学の女性ですし、空きのもう1室も、女子大生が入る予定です。下の階も若いご夫婦が2軒とOLさんが2軒ですから、ベランダに洗濯物を干しても気になりませんよ。」

二人は気に入ったようで、もう1軒は見ずに決定した。お姉さんも今度は次を勧めることも無く、不動産屋さんに戻った。サクサクと手続きを済ませると、保証人の署名と捺印のトコロに付箋を貼ってくれた書類を貰って、午前中でミッションクリア出来た。

 駅前に戻ってランチ。ハーモニカの看板に『口風琴』と書かれたアンティークレストランに入って見た。温もりのある木のインテリアに古いオルガンが置かれていた。

 ドリアを頼んだ。シーフード、ビーフ、ラザニアにして少しずつ味見し合った。どれも美味しく、じっくり味わっていると、

「舌コピー?」

頷くと、

「帰省が楽しみね!」

夢愛は嬉しそうに笑っていた。ん?帰省って実家に帰るんじゃ無いの?まあ、ウチでも問題無いけどね。

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