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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第4章
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スキー学習

 雪が積もる地域なので、冬にはスキー学習がある。普通の体育の授業が無くなって、3学期の間に数回近くのゲレンデに貸し切りバスで乗り込む。自由に楽しめる訳じゃ無く、順番に決まったターンを練習したりなので、それ程楽しいものでは無いが、学校の外に出る開放感と、華やかなスキーウェアは、どうしても遊びに来た気分になってしまう。中学の頃はやんちゃして骨折したりする奴が年に1人位は居たけど、今年は男子が少ないから大丈夫かも知れないな。

 レジャーで行くゲレンデとは違い、寒くなったらどこかでお茶とかって言う選択肢は無く、多少の吹雪ならノルマを滑るし、ランチもゲレンデの隅っこでおにぎりを齧って済ませるので、BGMで流れるラヴロマンスのような世界とはかけ離れた空間だった。ブーツの中には足用のカイロは必須で、寒がりの度合いで全身にカイロを貼り付ける。ただ、リフトは使わずに、カニ歩きで登るので、貼り過ぎてオーバーヒートの恐れもあるので、結構慎重に数を考えなければならない。小学校から数えて10年目なので、皆んな大体の調整は出来ている様子だった。

 10年目と言う事で授業でしかスキーをしない人でも、緩斜面でボーゲン位ならほとんどは大丈夫。楓とこころは、珍しくそこも怪しいのでスキー学習はかなりの拷問に感じているみたい。

 男子だけ集めてコブだらけの急斜面でやや高度なターンをテスト。いきなりで成功したのは僕を含めて3人だけ。

「おお、丁度良かった!花田はあの子達を頼む。」

先生がストックで指した方向を見ると、平地でもやっと立っている楓とこころ、同レベルの子が数人。

 近く迄滑り降りると、計6人の面倒を見るのが僕のミッションらしい。平地を歩きながら、転び方の練習。危ない時、転ぶのが1番効果的なブレーキになるので、なるべく痛くないようにコツを伝授。

「それなら某でも出来そうでござる!」

楓が積極的に転ぶと、他の5人も真似てコロン!転ぶ恐怖が無くなると、平地を歩く位は出来るようになった。

 少し休憩してから、なだらかな斜面に移動。油断したら止まってしまいそうな坂でボーゲンの練習。

「山側に転ぶ方が痛く無いからね!」

『痛く無い』に反応してちょっと滑り、上手に転べる様になってきた。ちょっとずつ高く登って距離を伸ばし、たまには転ばなくても止まれる様になった。

 ランチタイム、初心者6人と円陣を組む様にしてお弁当。ゴーグルを外すと、1人が結構しっかりとメイクしていた。日焼け止めと称して、咎められない程度のメイクをしている子も結構居るけど、あからさまに塗ってますって、大胆過ぎでしょう?

「先生が来た時不味いから、コッチに座ったら?」

「えっ?私?」

メイクの子は何を心配されているのか気付いていない様子だし、楓もこころも心配した様子は無かった。

「だって、そんなにハッキリ解るメイクしてたら先生に見つかったら大変でしょ?」

心配しているのに、全員に笑われてしまった。

「若く見られて喜ぶ所かしら?」

帽子も外すと、

「あっ!上原先生?」

この前、劇の準備をしていた時に、見回りに来た先生。沖縄出身の新卒、大学まで地元で、いきなり最北に飛んで来た先生だ。体育の先生で水泳部の顧問なんだけど、スキーの腕前だけで見たら、そんなふうには絶対見えない。大丈夫かな?まぁ、人生初スキーみたいなので仕方が無いのかも知れないな。

 午後は止まり方の練習。横を向いてスキーを揃えて止まる。カメ速度のボーゲンなら何とか転ばずに止まれる様になったので、ちょっとだけ上に登ってスピードを上げた。本人達が気づかない程度に1メーター位ずつ高くして倍の距離を滑る事に成功した。上原先生は、コツを掴むとスピードを上げ雪煙を上げて止まったり楽しそうにしていた。楓とこころも上達して先生と少し急な斜面(まだまだ初心者コース)にトライしていた。

 帰りの時間までは残った3人とゆっくり滑って止まる練習。少しずつだけど、転ぶ確率が減って来たので、まぁまぁの進歩じゃ無いかな?

 

 スキーとは全く違う疲労で学校に戻った。劇の準備で大道具さんと少し残っていると、上原先生が巡回に来て、

「今日はこれだけ?」

「はい、事前に出来る所はあとちょっとなので、遅れた部分の担当だけなんです。あと一時間も掛からないと思います。」

先生は人数を数えて帰って行った。

 

 セットを仕上げて片付けをしていると、上原先生が再登場、コンビニのレジ袋を下げていた。

「蒸し上がっていたのこれだけだったから色々だけど、仲良く分けてね!」

中華まんの差し入れだった。冷えた身体と空っぽの胃袋に有り難かった。

「スキーのレッスン費たろ?花田君が優先して選べよ!」

鈴木君が袋を差し出した。遠慮してたら冷めてしまうので、さっさと1番上をゲット。肉まん、ピザまん、あんまんがあるなか、強いて選べはコレって言う肉まんだった。妙に得した気分になって、いつもより美味しく感じたのは気のせいだよね。

本日より、

『魔王の娘ですが、継ぐ気は一切ありません!』

をスタート致します。

そちらも是非、よろしくお願い致します。

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