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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第4章
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外泊

 小雪はまた、家と反対方向に歩いた。シネコンも入っている、麻幌で1番大きいショッピングモールに行くと、彩花が待っていた。ニッコリ笑う彩花は、

「では、確かに。」

二人はグータッチして小雪は、

「しばらく会えないけど元気でね!」

ん?しばらくって言った小雪は普段の身の回り品くらいのバッグで、寧ろ彩花の方が、2、3泊出来そうな大荷物だった。

「15時から17時に家にいればいいから、映画観て行こうよ!」

彩花の言葉から推測すると、しばらくここで過ごして、彩花の家に行くみたいだ。確か、お姉さんがカレシさんと住んでるんだよね?

「姉貴はカレシと沖縄!排水設備の点検清掃なんで、代わりに立会うの。」

早目のランチはハンバーガー、大人気の鬼退治アニメを観て、晩ごはんの買い物をして田辺家に向かった。

「こっちに着替えて!」

彩花は松太郎用の着替えを差し出した。業者さんが来るとき、女子だけじゃ無い方がいいと思ってのスタンバイ。

 時間通りに業者さんが来て、排水口に長いワイヤーを突っ込んでいた。作業はあっという間に終わり、私達も帰ると思ったら、

「私、ごはん炊くから、肉じゃがとサラダはもみじにお願いしてもいいかな?」

疑問文の使い方が間違っているのは、姉ちゃんからの伝染かな?ここにお泊りだから、小雪は『しばらく会えない』って言ってたんだね。まあ、昨日も無事に乗り切ったから気にしないでおこう。

 晩ごはんを食べて、冬休みの宿題をちょっと片付け、テレビの前で並んでゲーム。この流れだと、一緒にお風呂かな?さっきお風呂に行ってたからね。

『お風呂がわきました!』

給湯器のお姉さんが知らせてくれた。

「しょう君、先入って!」

「あ、うん、ありがと。」

バスタオルを渡されてお風呂に向かった。お湯に浸かっていると、脱衣所に彩花が来たのでそのまま乱入かと思ったら、そのままいなくなった。上がって着替えを取ろうとしたら、バスタオルしかなかった。取り敢えず、身体を拭いてバスタオルを腰に巻くと、

「交代ね、寝室はそこよ、ベッドでまっててね!」

家探しして自分の着替えを探す訳にも行かないので、おとなしく彩花の指したドアを開けた。

 机とシングルベッドを想像していた彩花の部屋ではなく、映像でしか見たことがない、ラブホを再現した様なダブルベッドの部屋で、枕元にはそこで使うと思われるグッズと小雪から引き継いだ薬とゴム製品の紙袋が並んでいた。緊張しながらベッドに転がると、しばらくして現れた彩花はバスタオル一枚だった。過激な攻撃を覚悟したけど、

「実は、今日見たアニメ、前のお話し観てないんだよね、スマホで観られるんだけど付き合ってくれる?」

隣に寝そべる彩花は緩んだバスタオルを直していたけど、明らかにそれ以外は身に着けていないのがわかった。

 テーマソングや予告をスキップして、26話迄見るともう日が登っていた。

「ちょっとだけ眠ろうか?」

彩花は1時間後の10時半にアラームをセットしてあっという間に眠ってしまった。最初の寝返りでバスタオルは危険な状態になったけど、直すには触れてはいけない部分に触れてしまうので、毛布を掛けて視界を遮った。ドキドキの連続といつもとは違う背徳感で、バスタオルの中の松太郎も反応した感覚で、彩花に気付かれないようそっと確かめたら、残念ながら(?)平常モードのままだった。がっかりか安心か解らないけど、緊張が解けて、熟睡したみたいだった。目が覚めた時、腰に巻いたバスタオルはそのままでもう一枚枕元に丸まっていた。背中にクリンチしている肌触りは繊維の感覚では無かった。振り返っちゃ駄目だと、寝たふりしていると、アラームが鳴って彩花が目を覚ました。バスタオルに気付いたのかビクっと反応した。枕元のバスタオルをそっと取って部屋から出て行った。すぐに身支度を済まして戻った彩花は、布団とバスタオルを剥ぎ取って、もみじ用の着替えを渡してくれた。

 遅い朝ごはんを食べていると、二人のスマホが同時に鳴った。琴音からのメッセージで、待ち合わせの確認だった。彩花はササッと返信して、

「じゃあ行こうか!」

うちに帰るのとは逆のバス停に行くと彩花は時刻表を確かめてスマホを操作した。琴音にメッセージを送っているようだ。返信を確かめると、

「製紙工場前で琴音が待ってるからそこで降りるんだよ。私は家に帰ってるね!」

「家って?」

「私んち、花田家に決まってんじゃん!じゃあね!」

さっさと向かいのバス停に移動した。15分位待って、10分も乗ったかな?琴音の待つバス停で降りた。歩いて直ぐに伊東家に到着。琴音の部屋は6畳間を二段ベッドで仕切り弟と分け合っていた。兄さんの四畳半も襖で仕切られているだけなので、お年頃女子にとってはかなり劣悪な状況だよね。

「もしかして、うちに引っ越して来るの?」

「うん、両親にはオーケー貰ってるんだけど、松太郎と一つ屋根の下って違和感あるからさ、今晩お試しって訳なの!」

そう言うと、食材がいっぱい詰まった冷蔵庫を見せて、

「今晩のメニューはお任せするね!お昼は私寝坊してさっきブランチしたから、パスかな?もみじは好きにしてね。」

「私も、オールで鬼退治観て、さっき食べたから一緒だよ。」

小学校の卒アルやプリクラ帳を見たりして、小腹が空いてパンケーキを焼いたりしてノンビリ過ごした。父、兄、弟は3泊4日でスキー、母はスキー場近くの実家。小学生迄は、一緒にスキー、中学ではお母さんとばあちゃんちで過ごしていたとのこと。

「流石に思春期の乙女としては、男達に混ざって、狭い民宿はイヤになったのよね。高校生にもなって姉妹とお風呂なんて、日本中であなた位だからね!」

結局、家族が帰らないこの家で一晩過ごすんだよね?松太郎を異性として好意的見ている訳じゃ無いので、気を使う必要も無い筈なんだけど、逆にただうちに引っ越すだけで『お試し』って言うのも不思議だよね。宿題をしたりゲームしたりしていたら、寝不足が祟った様で、寝落ちしていたようだった。どの位寝たのかな?ソファで眠っていたんだけど、ずっと琴音の膝枕だったみたい。

「寝顔が可愛くて、起こさないように、おトイレ我慢してたの!」

 

 冷蔵庫の合挽き肉が賞味期限近かったので、ミートソースにした。スパゲティを食べてお風呂に入った。

「もみじ、入るわよ!」

まさか、今日はそう言う展開じゃないと思っていたので、かなり動揺した。ただ、終始『もみじ』として接してくれるので、まあ、気はラクだった。狭い二段ベッドなので、弟君の上の段を借りるのかと思ったら、琴音のスペースに押し込まれた。お風呂もベッドを当たり前になって来たウチの住人達とは明らかに違う緊張と、さっきのお昼寝のせいか、全く眠気を感じなかった。

「おやすみ、もみじ。あんね、私もあなたの従兄くん好きになったのかも。」

琴音は、いきなり爆弾発言をしたかと思うと、あっという間にスースーと寝息を立てていた。

ご無沙汰の松太郎が復活です!

暫くは、毎週月曜の0時更新の予定です。


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