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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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サッカー入門

 会社の引っ越しは順調に進んでいるようで、地植えの樹木だけが直ぐには動かせないので、根回ししているそうだ。ただ、全部を移動する訳じゃないそうなので、来春ちょっとの作業でいいらしい。

 仮設住宅も仮設事務所も今よりは良好な環境らしく、雨の予感通り、帰ってくる回数は減ったみたい。会社の登記とか、住所移転とかキチンと処理したので、家に仕事関係の郵便物とかが来なくなって、メール係のみたいに顔が見られたロゼさんもめっきり来なくなっていた。

 アナログ資料のデジタル化もコンプ出来たので、資料は無くなったし、パソコンや周辺機器も要らなくなったのでそれも仮設事務所に移動。

「ふた部屋できたから、新しい娘誘って!」

母さんは呑気な事を言ってエンジンを掛けた。芒は、

「そうね、空き部屋にしておくのも勿体ないわね!取り敢えず、球技大会の合宿かな?」

そう言えば、球技大会だった。期末が終わったら、終業式の前に大会があって、あとふた部屋って事は、2人?種目はサッカーとバレーだったよね?人数からいくとサッカーかな?琴音と美羽なら気を使わなくていいんだけどな。


 期末試験が終わって、球技大会の準備。チームを組む時、桜がサッカーに手を挙げると1学期のソフトの時の注目度を覚えていて、それを嫌う人達が続々とバレーに流れ、結局はソフトのメンバーに落ち着いた。ピッタリ11人では不安なので、補欠ならと条件付きで2人サッカーに引き込んだ。因みに男子は卓球で人数の関係で選択肢はそれだけ。

 放課後、早速合宿スタート。と言っても、琴音と美羽がお泊まりって言うだけで、補欠のふたりは来なかった。先週も試験対策を兼ねTシャツのデザインで二人は来ていた。なぜか小雪が仕切っていた。クラスどころか学年から違うのにね。その日は、タイムリミットが18時で、既に候補は3つ出ていて、新しいのは間に合いそうに無いから、三択なんだろうな。楽しそうなお喋りがしばらく聞こえて、拍手が沸き上がったのが17時50分。間に合うのか心配になったけど、ネット注文なので余裕で間ったらしい。

 合宿最初のミッションでポジションを決めるんだけど、取り敢えずキーパーだけカレンに決めて完了。姉達にしては珍しく、サッカーに関しての知識がスッポリ抜け落ちていたので他のポジションがどんなものが有るのか解っていないみたい。カレンもアメリカでは、野球、アメフト、アイスホッケー、バスケが別格の人気で、サッカーはそれ程人気はないし、興味も無かったそうだ。いろは、楓、こころはスポーツには積極的じゃ無いし、アスリート組は、自分の種目に集中していたので、全員が『足で蹴ってゴールに入れる』って位の知識なので少し心配になったけど、

「これってハンドかしら?」

美月がボールを足の甲で掬い上げ、首の後でキャッチ。肩甲骨と後頭部で挟んでいた。楓はネットで検索して、

「合法でござる!」

皆んなもやってみたいと言って倉庫に移動して行った。

 土日の合宿を終え、月曜から大会が始まった。もういつ雪が降ってもおかしく無い季節なので、長袖の白いTシャツ。その背中には花札の松の5点札、赤短の文字が『いちのいち』になっている。

 くじ運が良いのか悪いのか、ソフトの時と同じ第1試合。相手のボールからゲームが始まった。

 桐がパスを読んで、あっさりボールを奪うと、最前線で待つ桜に縦パスが通り、鮮やかにネットを揺らした。開始数十秒での先取点!と思ったけど、素人の僕でも解るハッキリしたオフサイド。ゴールは認められず、仕切直し。ボールを奪ってはオフサイド、ゼロゼロで時間が経過した。相手の攻撃が、やっとゴール近く迄来たけど、相手の経験者っぽいエースには、こころと楓がダブルチーム(サッカーでもこう言うかな、バスケで言う一人を二人がかりで守る作戦)で貼り付いている。ボールを奪ったり、パスをカットするような技術は無いけど、周りの初心者が彼女へのパスを躊躇うので、行き場の定まらないパスをあっさりカットする。オフサイドの意味が解らず、速攻の時に吹かれていると考えて、一旦キーパーのカレンに戻して、落ち着いて攻めて見る、カレンがボールを拾うとフエが鳴った?

「ハンド!フリーキック!」

ペナルティーエリアの外で手を使っちゃダメだよ!

フリーキックを直接決められ先制を許した。バスケ部との練習試合の時も、球技大会のソフトでも、先制からの圧勝が当たり前だったので、ギャラリーがどよめいた。こちらのボールで再スタート。作戦タイムは取れないルールなので、オフサイドの謎は解けないまま、攻め込んだ。パスの後に吹かれているのは把握したので、桐がドリブルで切り込んでそのままシュート。直ぐに同点に追い付いた。ボールと奪う迄は楽勝でドリブルで運ぶのも何とか進む事が出来たけど、パスをどうすればフエ無しで出来るのかわからないままハーフタイム。戻って来た選手達にルール説明。

「そんなルールだから得点少ないだね!」

100点越えのゲームもあるバスケと比べると、スコアレスドローもあり得るサッカーは得点の楽しみが少ないと、我が家では不人気だった。姉達は、理由が解ると、ルールが悪いと更に嫌いになった様だ。

 鈴木君、佐藤君もルール解説に加わって、何とか?取り敢えず?大丈夫かな?って位はマスターして後半戦に望んだ。

 サイドを駆け上がって、ゴール前にパス。敵が集まると逆サイドにボール回したりしながら攻め続けて、やっといつもの雰囲気を取り戻した。後半は無失点で4得点。終わってみるとサッカーとしては大差で勝ち上がった。

 そのまま決勝に進むと、相手が棄権して、サッカー部とエキシビションマッチをしようと提案があった。

「別に相手が誰かって気にしないわ!」

コツを掴み掛けた桐は提案を受け、本職の部員と戦う事になった。

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