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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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ホームシアター

 移転の手続きは順調に進み、市役所のおじさん達も、うちに来なくなっていた。そういえば、どうして会社じゃなくこっちに来ていたのか不思議だったんだけど、今の社屋って、研究畑の倉庫だったプレハブに増築を重ねただけで、会社の移転手続きとか全くしていなかったせいらしい。申告漏れとか大丈夫か不安になったけど、同じ市内なので特に問題はないみたい。

 と言う訳で、移転騒動は一息ついた。母さんが帰ってくる事が多くなったと思ったら、新しい社屋の側に仮設住宅を建ててそっちに引っ越してしまった。いつも居ないのが普通なので、実質的には殆ど変わり無いんだけど、住民票が移ってしまうと感慨深い。ばあちゃんの部屋は居間にして、母さんの部屋は客間にする。取り敢えず、新居が出来るまでは、荷物置き場兼、母さんとばあちゃんの仮眠室。元のリビングをダイニングにくっつけてテレビを片付けちゃったのを不憫に思っていたようだった。スマホのワンセグとか、パソコンで観ているので不便と思った事は無かったけど、折角なので使わせて貰う。

 土曜日の朝、業者さんがやって来て、8畳位の部屋を2つ繋いで1つにする。元々後から仕切った壁なので、外しても強度の心配とかしなくても大丈夫。壁と天井が職人さんの手によって、半日で完成。天井から数ヶ所、照明用なのかな?配線が垂れ下がっていて、壁のコンセントとかが穴のままだった。ほぼ入れ替わりで到着した電気工事屋さんが照明、スイッチ、コンセントを付け、家電店さんがプロジェクター、スピーカー、ストーブを運び込んで設置すると、父さんが置いていったオーディオを移動して、繋いでくれた。ソファーとかは無かったので、適当に椅子やクッションを運んで、寛げるスペースにしてみた。

 壁に貼り付いた巨大なスクリーンは120インチもあって、父さんのオーディオスピーカーを左右に従えると、ちょっとしたホームシアターにも見えた。ばあちゃんが買ってくれた筈なんだけど、かゆいところに手が届く構成になっていてブルーレイから、ばあちゃん秘蔵のビデオテープまで観られるようになっているし、スーパーウーファーとか、部屋の周りグルリとサラウンドって言ったっけ?スピーカーが沢山配置してあって、しかもケーブルはきっちり天井裏や壁の中を通っていた。

「おばあちゃんがね、大きい液晶テレビ買ってくれるって言ってね、どんなのがいいって聞かれたから、映画館みたいのがいいって言ったの!」

犯人は雨だった。機器の選定は楓が担当して、内装のことは小雪が調整してくれたみたい。

「で、コレね!お兄ちゃん!」

雨はスケッチブックを広げると、ホームシアターの域を超えた青写真。ドリンクとポップコーンを置くスペースがあって、座面は座る時に下ろすようになっている。

「コレ、付けるの?」

「ううん、作るの!」

姉達が声を揃えた。落ち着いて見ると、腰板が途中から斜めになって、テレビと反対側は、1メートル位高くなっていた。測って見ると90センチ。スケッチブックは4列なんで、30センチずつの3段かな?皆んなピカピカなのに床だけ途中からそのままってそう言う事?色々聞いたら、閉館した映画館の座席を貰ったので、別の業者さんが明日来るそうだ。

 翌日、工事が終わった頃、母さんとばあちゃんがやって来て、僕らが赤ちゃんの頃のビデオがこけら落としだった。三つ子と妹ってサイズバランスで、皆んな、キャーキャー言って喜んでいた。少しすると、小さいいろはも登場。いろはもお姉ちゃんみたいで、いつも面倒を見てくれていた。4人のお姉ちゃんとちっちゃい妹って動画が続き、やっと雨が登場。小さな僕は一生懸命に可愛がっているつもりなんだろうけど、雨はかなり我慢しているようだった。ん?ビデオカメラ代わった?故障じゃないよね?急に手ブレが酷くなって、フレーミングも滅茶苦茶になった。指摘すると母さんは、

「その辺から私が撮ったのよ!離婚しちゃってね。ブレてないのがいいんならコッチ観る?」

母さんはDVDを入れ替えると、少し小さく戻った僕らはアメリカにいた。小さ過ぎて全く記憶にないけど、父さんの所に行った時のモノだろう。一緒に映っていたカレンはやっぱり大きくて、僕の事をティディベアとでも思ってるのかな?ハグしてキスして嬉しくてたまらない様子、可愛がられてる僕も満更でもなさそうだった。僕らが帰国してからも動画は続いたけど、やっぱりブレブレになった。

「ママも下手ね!」

カレンは珍しく、恥ずかしそうな顔をしていた。


 母さん達は泊まって行くと思ったけど、さっきと帰って行った。

「次はコレを試そうぞ!」

リモコンを操作すると、見覚えのある画像。えっ?あのゲーム?

「最初、誰でプレイするかが難題ですぞ!」

結局、『松太郎』と『もみじ』でスタートした。120インチの中の二人は、頻繁に実物大を超えていた、舞台は校舎の屋上。学園モノのストーリーには欠かせない重要ポイントだけど、今の高校も含め、カレン以外の全員の学校で屋上は立入禁止だった。

「雪のせいかな?それとも、首都圏の敷地事情で屋上を使わざるを得ないのかな?」

 呑気に眺めていると、本来モザイクが掛かるべきシーンがほぼ等身大で映し出された。

「松太郎は盛りすぎね!」

彩花の指摘は何を言っるのかは解ったので、聞こえないふりをしてキッチンに避難した。多少の防音対策はしているようで、外に聞こえちゃ不味い音声は、部屋の外では殆ど気にならないので、外には漏れないで済んでいるみたい。取り敢えず安心かな?


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