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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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中間試験と遠足

 翌日登校すると、試験の範囲が発表された。昨日の予測でピッタリだった。『代々伝わる過去問』と言うのは各部に伝わっていて、先生方もお見通しらしい。ただ、5、6年分の過去問を理解して50点位になる様に出題しているみたい。過去問をマスターするだけでも、結構な学習量なので、意欲的に勉強させる作戦であれば、先生方の方が一枚上って事なのかな?

 一週間みっちり勉強。土日は柔道部の猛者達が、数学の教科書を持ってやって来た。試験範囲は大体一緒だったので千葉は私達と一緒に頑張り、斉藤さんは、桜がマンツーマン、山岸さんは、小雪と夢愛に教わっていた。1学期の期末の時には、赤点を恐れていたどころか、追試の後の補習迄視野に入れていた3人だったけど、前回の勉強でコツを掴んたのか、ヒヤヒヤするほど心配しなくても良さそうだった。

 試験当日はサラリと熟しまあまあの手応えでだった。3日間試験が終了して、ザックリ答え合わせをしてみると、ほとんどが90点台は堅いかな?夢愛達からも景気の良さそうなスタンプ付きでメッセージが飛んで来ていた。姉達は相変わらず、パーフェクトだろうし、他の住人達も弱点を克服してなかなかの成果みたいだった。

 木曜日は試験休みで金曜日は遠足。夏休み、聖地巡礼の時に寄ったダムを見に行くそうだ。私服での参加なので、皆んなは何を着ていくかで盛り上がっていた。流石に、学校行事なので松太郎としての参加だから、悩む程の選択肢は無いので、お弁当の方に思考のリソースを充てた。

 普段もお弁当なので、別にいつも通りなんだけど、遠足らしい物がいいと、難しい注文が入っているので、ちょっと悩んでいた。ネットで調べてもピンと来るメニューは無く、本屋で立ち読み。やっぱり収穫なし。

 雑貨屋さんに寄ると、竹皮が置いてあった。シンプルなおにぎりを竹皮で包んだら遠足っぽいかな?手抜きって言われそうだけど、大体オーダーが無茶なんだからこれで行こう。

 さて、遠足当日。真夏でもひんやりしていたところなので、羽織る物も用意して行く。駐車場でバスを降り、えっ?歩くの?そうだった、夏休みの時は、『歩く』か『電気自動車』の2択で電気自動車を選んだんだった。生徒全員乗れる訳ないから、今回は『歩く』の1択だよね。

 遠()なんだから仕方がないか。実際歩くと結構な傾斜だった。夏ヒンヤリだったトンネルは、秋だと寒いんじゃないかと思ったけど、息を切らしていると丁度いいクールダウンだった。

 展望ポイント迄登ってお弁当。姉達の反応が気になったけど、ここでキレられるのも嫌なので、鈴木君、佐藤君と一緒に行動していた。遠目で確かめると、意外と好評の様だった。安心してオレンジに染まった紅葉を堪能した。


 駐車場に降りた時から、なんとなく胡散臭い5、6人のグループがやたらとキョロキョロしていた。景色を楽しんでいる感じてはなく、観光客をチェックしているみたいで、ビュースポットで写真を撮ることもなくバラバラに歩いていた。気になって仕方がないのでチェックし続けた。

 紅一点のお姉さんが、ひとりに目配せすると、

「止めないで!」

柵を乗り換えて、身投げを試みる。どうやら演技らしく、目配せの男性がしっかりサポートして、ギリギリ安全な所で大騒ぎを始めた。別れ話が縺れた内容で周りに人垣が出来た。人垣の背後には、胡散臭いグループの残りの4 人が近寄っていた。

身投げを止めに走ってきた係のおじさんからメガホンを奪い、

「スリに気を付けて下さい!」

フルボリュームで叫び続けた。人垣に迫っていた4人は不自然な方向転換をしてその場を離れて行った。身投げ騒ぎの二人は、管理事務所に連れて行かれ警察の事情聴取を受けるらしい。係のおじさんに駐車場からの経緯を話した。

 事務所のおじさん達が、スリの被害を確かめると、サイフがなくなっている人が3人。降り口付近のゴミ箱で札だけ抜かれて発見された。

「不愉快でござる!」

楓はクラスの皆んなに、ここで撮った画像を自分のサーバーにアップするように言って柵で演技していた二人の画像もアップすると、画像認識写り込んだ人の中で二人と接触がある人を抽出して4人の不審者を合成した。

「AI殿の仕業でござる!」

「あっこれ!」

演技役の二人を含めた6人が、ワンボックスからの降りているシーンが写っていた。ナンバーもしっかり読めた。既に通報していた警察に連絡。どんなに急いでもパトカーのほうが早く着く筈なのであとはプロに任せよう。


 帰り道、桜に呼び止められた。自分のリュックの他にもう一つリュックを持っていて、僕のリュックも剥ぎ取ると、鈴木君と佐藤君に渡した。

「松太郎殿、こちらでござる。」

楓の声に振り返ると、こころがベンチに座っていた。転んで脚を挫いたらしい。

 僕の背中のリュックが無くなっているって事は、おんぶって事だよね?まあ頑張るか。でも、電気自動車は乗れないのかな?たまたま、スリ騒ぎで急遽運休していたのでアテに出来ないらしい。

 ややぽっちゃりに見えるけど、丸顔がそう思わせるだけのようで、小柄なこころは楽におんぶ出来た。おんぶの密着度だと、楓が通訳しなくても会話が成立した。

「ごめんね、しょうくん。」

「平気、平気、痛くない?」

「うん、芒が冷やしてくれたから。」

夏に来た時の話をしたりして慎重に坂を降りた。途中小さく聞こえていた声が、聞こえなくなった。気のせいか、急に重くなった様に思えた。声の代わりに聞こえて来たのは、スースーと気持ち良さそうな寝息だった。

 駐車場からはタクシーで温泉街の病院迄運び、レントゲンで骨に異常が無いことを確認して湿布を貼って診察終了。すぐに冷やした事と、歩かないで来れたので最小限のダメージで済んだと先生が、褒めてくれた。松葉杖を貸してくれると言われたけど、返しに来るのが大変なので、おんぶを継続することにした。学校の貸切バスはもう行ってしまったので、創成駅までのバスに乗って、JRで帰るのが、乗り換え1回で済む。楓がスマホで調べてくれた。湿布と痛み止めを処方されたので隣の薬局に寄って出て来ると、ウチの住人達が皆んな揃っていた。創成の駅ビルのショップでちょこっとお買い物したいらしい。こころと二人、先に改札を通ってホームのベンチで待っていた。

 美月が大好きなキャラクターグッズが、本日発売になったそうで明日買いに来る予定だったけど、少しでも早いほうが安心だとどさくさに紛れて、別行動を認めてもらったそうだ。30分程の待ち時間のうちにお目当てをゲットして来ていた。列車に揺られ、最寄り駅からはまたおんぶで帰宅。ちょっとハードな遠足を終了出来た。

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