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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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ピザ窯

「ただいま!」

黒煙を上げる古いトラックで帰って来たのは母さんとばあちゃんだった。珍しいと驚いたけど、ピザ窯の煉瓦を貰いに行く約束をしていたんだった。ゲームの件ですっかり忘れていた。明日は柔道部の猛者達も来るんだった。


「カレンね?雅美と色違いでそっくりね!」

『雅美』とはカレンのお母さんで、父さんの今の奥さん。純日本人なんだけど、東欧風の彫りの深い顔立ちは黒髪黒目の西洋人だと思われるような容姿だ。ニューヨークに行ったときに会ったけど、アメリカ人に混ざって違和感が無いので、ハーフなのかと思っていた。

実父から金髪碧眼を受け継いでいるようだ。

「あなたは夢愛?ホントに柔道強いの?あら、こんなに華奢なのに筋肉凄いのね!」

「美月?彩花?楓?こころ?」

どうして解るんだ?

「いろははちょっと艶っぽくなった?」

いろはは真っ赤になっていた。

「小雪は3年ぶりかしら?若返った?」

抗議の為に尖らせた唇が、アヒルになって余計可愛らしかった。

「雨は人の特徴を話すの上手いね、皆んなひと目で解ったよ!」

大騒ぎしたかと思うと、

「おなか空いた!」

ハイハイ、支度しますよ。

「すぐ支度するけど、ビールは無いよ。」

「大丈夫、買って来たから!」

6缶パックを両手に掲げた。

海鮮焼きうどんの予定だったので、具をちょっと使っておつまみを先に出しておいた。

「もみじは、いいお嫁さんになれそうだね!」

ばあちゃんと酒盛りを始めた。


 夕食の時間も母さんは喋り続けた。

「私は、もっと産みたかっんだけどね、彼が研究ばっかりでね、受粉には興味津々だけど、受精には無頓着だったのよ。」

女子高生相手にシモネタはどうかと思うんだけど、かなり盛り上がっていた。松太郎(・・・)の異変についても筒抜けのようで、

「過保護にしないで今まで通りでいいんじゃない?ねえ、もみじ。取り敢えず、お風呂入ろ!雨もおいで。」

母さんに連れられ浴室に向かった。

 母さんとお風呂なんて何年ぶりだろう?今更ドキドキも何もないんだけど、今は松太郎でいるのに、雨と一緒なのはちょっと気が引ける。母さんの勢いに逆らう事も出来ずにお風呂に入った。

「ねえ、松太郎(・・・)中高生もなって兄妹でお風呂ってどんな気分?」

さっき迄ずっともみじ(・・・)だったのに、いきなり松太郎?回答に詰まっていると、

「雨もね、中学生でお兄ちゃんとお風呂って他で聞かないんじゃない?ここだって、小雪は軽く追い抜いてるでしょ?」

膨らみかけた所を突かれ赤くなっていた。落ち着いて考えると普通はあり得ない事で、ハダカを見たりするよりドキドキした。心臓の鼓動が鼓膜と共鳴して他の音が聞きづらい程だった。けれど、タオルで隠した松太郎は力無くぶら下がったままだった。反応ナシを母さんが確認すると、

「これでもダメなのね。雨、今夜はいろはを泊めてあげてね!」

お風呂を上がり、明日襲来予定の屈強な胃袋の対策を準備する。朝は食べて来るだろうから、お昼からでいいよね?特大おにぎり用にご飯を炊いておいた。

昼の下拵えも整え、煉瓦搬入作業に集中出来るようにしておいた。

「今夜は雨の所でお泊まりだよ、コレ牡丹さんから!」

受け取った紙袋を覗くと、『ウイルスチェック済』と書かれたDVDが数枚と、薬局の袋。

 DVDは本来なら僕の年齢では観ちゃイケナイ映像で、再生したがこの前のエロゲーのデートの方が過激だった。実写の女優さんなので別な意味での興奮材料にはなったけど、彼氏とか、将来の旦那さんとかどう思うんだろう?身近な人に知られたりして困らないのかな?余計な事を考えると落ち着いて楽しめなかった。

 薬の方は、もちろん精力剤。変化する部分に塗るタイプの物と、飲むタイプ。飲んで1時間、もう一度DVD、塗って見たら、いきなり反応した。以前は姉妹に気づかれないようコッソリしていた事を、気兼ね無く楽しもうと思ったが、あっと言う間に暴発してしまった。続きを楽しむ気にもなれず、布団を被った。


 外が明るくなって目が覚めた。普通なら朝の生理現象で昨夜薬を、ダブルで使った時の様な反応が有る筈なんだけど、今朝もパジャマの中の松太郎は落ち着き払っていた。

 朝ごはんを用意してダイニングに運んだ。キッチンを少し改装するので、お弁当も作っておく。皆んな起きて来て、腹拵え。猛者達とロゼさんも到着、トラックとワンボックスに分乗して煉瓦工場に向かった。僕と千葉とおばあちゃんは残って、キッチンの改装に取り掛かった。

 窯の周囲の可燃物の仕切りとかを取っ払って、コンクリート剥き出しにして、補強と装飾の為に煉瓦の壁にしようと思っている。床は昔、母さんが煉瓦敷にしている。とってもオシャレなんだけど、お皿を落としたらほぼ絶命しちゃう。要らないロッカーが無くなった分と、仕切りを外した分でかなり広くなっているのでピザ窯と一緒にアイランドキッチンにする。以前はほとんど僕専用だったけど、朝当番は3人だし、手伝ってくれる事が多くなったから、ちょっと頑張ってみる。必要な部材とホームセンターで貰えるDIYの小冊子は姉達が、揃えていた。

 煉瓦の第一便が届いた時には、スタンバイ完了で、積み始める。貰った物なので、色んな種類が混ざっているので、敢えてミックスにしたように色合いを考えながら積んでいく。後で棚を付ける突起とかを作りながら、壁の3分の1から半分位を煉瓦にして残りを目地と一緒の白セメントで塗る。窯の台座の部分とアイランドキッチンの部分を積んで行った。水道管はさほど難しく無いが、排水パイプは傾斜を注意しないとならないので結構気を使う。ホームセンターで買って来た小振りのシンクを2つ付けて、元のシンクは洗い物専用にする。ガステーブルも2口の物から、ビルトインの3口に変更。食器棚も容量アップ。この辺りは、桐が算出した予算とは別に母さんが出してくれた。キッチンの目処が付いたので、千葉は第2便の折返しで工場に行ってもらった。第3便で窯で使う耐火煉瓦が届いたが、普通の煉瓦が想定外に届いた。

「キッチンがこんなに素敵になったから

ダイニングもお願いね!」

母さんはご機嫌で仕事を追加した。姉達が見当たらないと思ったら、ロゼさんと照明を買いに行ったそうだ。如何にも事務所とか会議室風の長い直管だったので天井はガッカリって感じだったけど、オシャレに仕上がりそうだ。

 お弁当を食べてからは、いよいよピザ窯。と言っても、ほとんど売れなかったキットをトリセツ通りに積めばいいので、自分達で設計した午前の作業と比べるとかなり気が楽だ。とは言っても作業量は多いので、夜迄掛かってやっと完成。ピザが食べられると期待していた猛者たちは、ガッカリして帰って行った。

 実用的な煉瓦で安定した会社だったが、オシャレな方向に手を伸ばし、大きく躓いていた所、雨達の学校祭での発表を営業プレゼンに使って、かなりの成果を挙げたそうだ。赤字は免れたが、オシャレ煉瓦からは手を引く事になり、今回処分品を格安でわけて貰える事になったそうだ。

「じゃあ、クラスのコにもピザご馳走しないとならないね!」

母さんは呑気に言うが、ゲスト40人って結構大変だよ。

「来週の土日、ピザ屋になったつもりでかわりばんこに来て貰ったら大丈夫でしょ?」

芒の提案で、臨時ピザ屋が決定した。3人から8人までのグループを作って、時間帯をズラして来て貰えば2日で大体捌けそうだ。両方とも都合の悪い人は別途調整って事にした。耐火セメントが固まって窯が使えるようになるのが24時間後なので、明日の夜から窯を使い熟せるように特訓が必要だ。

 母さんとばあちゃん、ロゼさんは、また仕事があると、会社に帰った。土曜の夜くらいゆっくり過ごせないんだろうか?


「ショタ、私の部屋にきてくれる?」

久しぶりに『?』(ぎもんぶん)の使い方を誤った桜の台詞が出てきた。部屋に行くと、桐と芒も来ていた。間違いなく昨夜の尋問だ。

「お風呂の件は雨から聞いたからいいわ、続きお願いね!」

誤魔化しの効かない状況なので、正直に話した。R18の動画でも反応せず、飲み薬と塗り薬で、やっと反応したけど、あっと言う間に暴発してほとんどたのしめなかったと告げた。

「その時はどんな映像だったの?」

桐がツッコむ。

「あ、うん、百合系ってヤツ?女の子同志の。」

「へえー、そっちなんだ!」

「なんか、他のだと、男の都合に合わせ過ぎでストーリーが滅茶苦茶だったり、嫌悪感しかないのもあったしね、女優さん身近な人に知られたりしたら大変だろうとか、彼氏とか旦那さんの事を考えたら、興奮するタイミング逃しちゃってさ、で、消去法でそれ見てたんだよ。」

「なんか、その選び方とか感想って、『ショタ』じゃ無く『もみじ』だよね!」

芒が大笑い。

「話しは解ったよ!じゃあ、お風呂行こ!」

部屋に寄ると、いろはがメンズのパジャマとトランクスを渡してくれた。姉達に引きずられているのに、当たり前のように見送った。

 お風呂では、特にサプライズもなく小さい頃のように4人でワイワイ想い出話に花を咲かせた。直ぐに雨も参加して、姉達は雨の説得を始めた。雨は渋々了承して松太郎(・・・)でも、いろはのお泊まりが解禁になった。

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