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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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球技大会・チーム結成

 巡礼とスイーツツアーを終え、普通の生活に戻った。普通じゃないのは2年生が見学旅行に出掛けるくらいかな?ウチの住人は全員1年だし、ほぼ住人の小雪は3年なので、ほぼ影響はない。掃除当番が少し増えるだけだね。あとは月末予定の球技大会が、2学期の大きなイベントだね。ああ、そっと隠れて過ごした生徒会選挙。学校祭が終ってすぐにあったんだけど、姉達が上手い具合に手を廻したらしく、全員スルー出来ていた。来年は避け切れない気がするが、先の心配しても仕方が無い。新役員の殆どが姉達の元同級生なので、小雪達に協力していたスタンスと変わらない感じかも知れない。

 さて、球技大会はどうしよう?気の早いクラスは既にチームを決めて練習に励んでいる。種目はソフトボール、バスケ、卓球。本職のバスケ部に圧勝したチームで挑めば優勝間違いない。ウチのバスケ部、インターハイには届いていないけど、県大会では上位キープしている実力なので、あの実力差を考えると県代表もあり得る位だね。

「楽勝過ぎて面白く無いでしょ?」

バスケは消えて、ソフトボールか卓球の二択。クラスでの傾向を聞いてみたら卓球人気が高かったので、ソフトボールに決定。小学生の頃、男の子に混ざって野球をしていたコが2人と、テニス部のコがウチの6人に加わった。

 昔、母さんの会社で草野球をしていた頃の道具があった筈で倉庫を漁って見た。いつから開けていないのか解らない古い荷物からグローブが出て来たけど、カビが酷くて使えそうも無かった。学校の道具を借りられるのでそっちを使う事にした。

「一応お店覗いて見ようか?」

新創成のスポーツ用品店、プールに行った時に水着を買った店なんだけと、閉店セール中。他の掘り出し物もあるかもしれないので行って見ることになった。

 姉達が3人で見に行ったが、かなりの割引きになっていても、ちょっと手が出ない価格だったそうで、それはあきらめ、コスプレショップに寄ったそうだ。


 帰って来た3人は、大きな紙袋を抱えていた。

「女子高生野球のゲーム『7月の白雪姫』のコスプレユニフォーム、来週イベントに参加するバイト代の代わりに貰って来たんだ!12人分あるからの、もみじも着る?」

道具もソフトボール部が廃部になった会社から貰えるように店長さんが手配してくれたそうだ。

 話しをしているうちに、運送会社の軽トラックが来て、格好いい系のお姉さんが降りて来ると、

「私達のお古だけど、手入れはちゃんとしてあるから、使える筈だよ!」

ダンボール箱を2つ降ろしてくれた。早く持ってくれば、早く練習出来ると思っての即配だったそうだ。

「仕事の都合が付いたら応援に行くよ!」

ニッコリ笑って、再配達票の携帯番号にマークして渡してくれた。

 翌日、学校でコスプレユニフォームの話しを他のメンバーにも話した。来週のイベントも快く参加してくれるそうだ。話しを聞いていた帰宅部の2人も参加希望って言うか、単純にユニフォームが着たいとのことで、メンバーに加わった。

「これで丁度、11人ね!ユニフォームの分のメンバーが揃ったわ!」

芒が実質的な締め切り宣言をした。1着余ってるよね?やっぱ私のかな?知らんぷりしておこう。

 今回参加のメンバーは、野球経験者の二人が、キャッチャーの金井美羽、外野手の伊東琴音。テニス部の田辺彩花は、ボールの大きさが、テニスに1番近いから選んだそうだ。帰宅部の真田こころ、牧野楓。ゲームヲタクで、『7月の白雪姫(ななゆき)』の大ファンらしい。

 放課後、うちに集合して早速練習かと思ったら、ユニフォームの試着だった。サイズに問題無かったので、背番号会議。番号が決まるとメモを渡された。名前と背番号を貼り付けるミッションだろう。今回は、ヲタ2人が色とフォントを指定してくれたので少しラクだった。大会まで時間的にも余裕がある。ネットで手に入るので速攻手配をかけた。翌日、道具を運んでくれた軽トラのお姉さんが運んで来てくれた。選手達がボチボチ 練習を始めた頃、届いた背番号を貼り付けた。皆んな何とかキャッチボールは出来る様になったそうだ。カレンは腕をふた周りさせる本格的なフォームで豪速球を投げるそうだ。キャッチャーの美羽がいなければ宝の持ち腐れになっちゃうところだったと、ニコニコしていた。

 相変わらず、マネージャーと言うか、便利屋をする事になっていたが、新しい5人がいるとちょっと良いことがあった。家に帰っても松太郎でいられて、いろはとも、松太郎のままお喋りする時間が持てた。5人が帰ればいつもの様に、もみじにならなくちゃいけないけど、少しの時間が、とても嬉しかった。


 休み時間は、ルールの勉強。美月が図書室で入門書を借りて来て一応、球技大会レベルなら問題無さそうになったようだ。放課後は、うちに集まってキャッチボールと素振り。美羽と琴音の指導でなんとなくサマになってきている。土曜日は、アニメとゲームのイベント。帰宅部の2人は、参加を拒んだが、芒が説き伏せ全員参加になった。

 金曜日、練習上がりの皆んなに、名前と背番号を縫い付けたユニフォームを渡した。

「12番は?サッカーじゃないんだから、12番無いと、可笑しいでしょ?」桐のツッコミは予想していたので『1』、『2』、『M』2個、『O』、『J』、『I』2個は用意しておいた。ただ、新しく来たコ達の前でもみじになるのってどうなんだ?まあ、いつものようになるようにしかならないかな?


 土曜日、新創成まで始発のバスで向かった。最寄りバス停からそれぞれ乗り込み、揃ってコスプレショップに着くと、店長さんが、イベントの概要を話してくれた。大人気ゲームの『7月の白雪姫』のアニメ化決定の記念イベントとの事。出演する声優さんと、『もし実写化されたら』の投票で選ばれたアイドル達のベストナインが来る筈だったところ、諸々の事情で来られなくなったらしい。代わりを探すには時間も予算も無く、私達をアテにするつもりだったそうだ。そこに丁度姉達が顔を出したので、トントン拍子で今に至る。想定外の大きなイベントで驚いて、

「こんな大きなイベントだったなんてびっくりだよ!」

姉達は知っていた様子で恐らく、詳細を聞いて二の足を踏ませない作戦だったのだろう。写真集の売上新記録とか、女子高生のカリスマとか、肩書き付きのアイドルの代役だなんて、少なくとも帰宅部の二人は、全力で拒否してただろう。ただ、来てしまって覚悟が出来たのか、ドーム球場の巨大スクリーンに映った自分達を見ても動揺の気配は感じられなかった。

 キャラクターのサイン入りボールを客席に投げ入れたり、チアリーダーのマネごとをしたりして、3時間弱のイベントは無事に終了。

「タレント事務所に支払う分と比べると2桁少なくて、申し訳無いんだけど、主催者の調整ミスで、違約金が発生したゃったりでギリギリらいしんで勘弁してね。」

済まなさそうな店長さんだったが、バイト代3000円、移動を考え無ければ、最低賃金は余裕で超えるし、ユニフォーム、スパイク、お弁当支給なので、割の良いバイトだった。

 忙しそうな店長さんに、

「新創成までシャトルバスが出ているから、自力で帰りますね」

「いや、無理だと思うよ。通用口覗いて見なよ!コッソリだよ。」

店長さんの不可解な説明?取りあえずアドバイス通りコッソリ通用口へ。廊下のブラインドの隙間を指で広げると、所謂『出待ち』、デジタル一眼の望遠レンズが、お日様に向かうヒマワリのように扉に向かっていた。

「ごめんね、夏休みのイベント位の反響は、想定してたんだけど、これのせいみたいなんだ。」

片付けも一段落した店長さんは、スマホを見せてくれた。

『阿房宮の常連らしい!』

阿房宮(あぼうきゅう)とは、コスプレショップの店名なんだけど、常連ってほどじゃないよね?

 夏休みのコスプレイベントの時の私達の画像が拡散して、身元調査の対象になっていたそうで、今日のイベントに来るかも知れないといった情報が拡散。ちょっと面倒な事になっちゃったようだ。

 送迎バスをカーテンで隠し、ダミーで待機、私達は荷物の搬入口からはトラックの荷室に隠れて逃して貰った。近くの倉庫でタクシーに分乗、地下鉄オーロララインの最寄り駅まで乗り、地下鉄で創成まで。そこからJRで帰った。なんとかパパラッチから逃れ、無事に帰宅出来た。


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