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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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温泉

 車窓から巡礼ポイントを押さえていると、

「じゃあ、私のオススメの温泉行くよ!」

ロゼさんが船頭になり、ちょっと地味な温泉に到着。

「ここなら、ほとんど貸し切りだし、たまにお客さんがいてもお年寄りばかりだから、そのまま男湯行っても平気よ!」ロゼさんが耳打ちしてくれた。

 温泉はモール温泉と言って、褐色の不透明なお湯だった。美肌の湯らしく、塀の向こうで、楽しそうに肌を磨き上げる皆んなの様子が、想像出来た。

 ロゼ兄さんが先に入って浴槽の縁に座っていたので、

「ロゼ兄さん、背中流しましょうか?」

たくさん運転してくれたので、せめて疲れを流して貰おうと声を掛けたんだけど、ドボンとお湯に落下して、

「ゴメン、男湯だと思った!」

一目散に脱衣所に走り、一旦コケて、お爺さんが入ってきたのを見てフリーズしていた。追いかけて、松太郎の正体を明かし、改めてゆっくり温泉に、浸かった。

「いや、1男4女って記憶だったんだけど、実物見ちゃったら5人姉妹だと思って疑いもしなかったな、自分の記憶の方は気のせいだとしか思わななかったよ、留美(るみ)にも確かめなかったんだよね。」

ああ、ロゼさんって留美さんだったんだよね。

 温泉に落下してお湯を飲んだのか、鼻に入ったのか、苦しそうに咽ているし、コケた時に肘を打ったようで、紫に腫れ上がっていた。骨折はしていないようなので、帰りの運転に支障はないと言っていた。今までお風呂はどうしていたのか聞かれ、部屋風呂のある旅館に泊まったり、日帰り温泉の時は、一人で外で待っていた事を話すと、気の毒そうな表情で、

「どうしてその格好なの?」

「きっかけは、姉ちゃん達の身代わりデートかな?いや、ニューヨークに行った時トランクが迷子になって、カレンの服借りた時かな?それとも、小さい頃ずっと姉ちゃん達のお下がりで女の子の服着てたからかな?」

「歴史があるんだね、すっかり板に付いた感じだから、俺だけ騙された訳じゃ無さそうだな。」

「色々面倒な事があって、探偵ゴッコみたいな事やっていて、潜入捜査的にメイドカフェで働いたけど、疑われなかったし、続けて働くようにスカウトされましたから、皆んな騙しちゃうんです。女装していない時にナンパされた時は流石に凹みましたけどね。」

 昨夜の兄妹飲みの話しをして、

「留美に嵌められたな。」

何を言っているのか不思議に思っていたら、私達の中で誰がタイプなのか聞かれたそうだ。中高生の子供がいてもおかしくない年齢だから、そう言った対象じゃないって言っているが、私のことは『もみじちゃん』だけど、小雪は『フワフワ』、夢愛は『クリクリ』、美月は『ツンツン』、カレンは『金髪』、いろはは『黒髪』、雨は『末っ子ちゃん』、姉達に至っては『他の3人』と呼んでいた。自惚れかもしれないけど、私を選んだんじゃないかな?幸い、モール温泉なので、お湯に浸かっていると沈んだ身体の様子は解らないが、視線の逸し方がどうも身に覚えがある様子でずっと壁ばかり見ていた。落ち着きのない座りかたは、下半身が反応しているのを気にしている筈だ。こりゃ、私が早く上がった方がロゼ兄さんの回復の近道になりそうなので、急いで洗ってロゼ兄さんを解放した。

 脱衣所に行くと、お爺さんが服を脱いでいた。少し気になったけど、裸で出ていく訳にも行かないので、さっき着ていたコスプレセーラー服で、松太郎(だんし)からもみじ(じょし)に変身した。お爺さんは、少しも気に留めた様子も無く、淡々と脱いで、浴室に入っていった。

 女湯の皆んなは、まだまだ温泉を楽しむつもりだろう。ロゼ兄さんも私が邪魔したカタチになっちゃったので、しばらく出て来ないだろうし、ロビーで2人になるのも気まずいな。とりあえず、スマホを弄って時間を潰そうと思ったら、ロゼさんが上がってきた。

「アニキ、ビビってたでしょ!きっともみじちゃんが、ここで暇潰してると思ったんだ!」

ロゼ兄さんが『嵌められた』って言っていたのは正解だったらしい。兄妹飲みの話しをロゼさんからも聞いた、想像通り、ロゼ兄さんのタイプは『もみじ』だったそうだ。それを知った上でお風呂で会うように仕向けたのは、ロゼさんのドッキリ大成功!因みに私には、ロゼ兄さんは松太郎(だんし)だと知っていると言っていた。結構強めの近視で裸眼の上、湯けむりの中では、もみじ(じょし)に見えたとしても仕方が無いかな?ただ、普通にメンズ服(しょうたろう)でナンパされた時より、男湯で全裸でいる時でさえ女子(もみじ)に見られたのはちょっぴりショックかな?まあ、決定的証拠になる部分はタオルで隠していたからって事で、納得しておこう。

 ドッキリ大成功でご機嫌のロゼさんとは対象的に、気まずい雰囲気でロゼ兄さんが上がってきた。

「ゴメン、ゴメン、驚かせちゃったね!」

謝罪の気持ち0パーセントでロゼさんが、一応謝る素振りを見せると、パチンとデコピンを喰らっていた。

「もみじちゃん見て反応した所が収まるまで、モール温泉に沈んでたんでしょ?いつもはカラスの行水なのに、私より遅かったんだからね!」

図星だろうけど、もう勘弁してあげたらいいんじゃないかな?話題を変えようとしたが、ロゼ兄さんの方から、

「ガソリン入れてくる。」

そう言って席を立った。

「ガソリン入れたら大変でしょ?軽油だよケ・イ・ユ!」

「知ってるよ!ううう」

反論を途中で飲み込んで、ロビーを後にした。

「ロゼさん、さっきの話題はこれ位にしようよ。」

ロゼさんは、もう充分楽しんだからと頷いたが、丁度そのタイミングで姉達が上がってきた。

「何?何?さっきの話題って何?」

喰い付いた芒に、ロゼさんは、ドッキリの説明を、昨夜の兄妹飲みから細かく説明した。フワフワ(こゆき)クリクリ(ゆあ)が中学生だと思っていた事や、ツンツン(みづき)が論外なのは上手に伏せていた。他の皆んなも上がってきて、ロゼさんの武勇伝に聴き入っていた。チラッと視線を時計に送ったロゼさんは、

「あっ!もう行かなきゃ!」

慌ててマイクロバスに走った。

特に何もないっていうか、どこからでも雄大な景色が楽しめるのに、わざわざピンポイントで乗り付けた河川敷。

「では、『ハイ』って言ったら一斉に振り返るのよ!」

ロゼさんに言われるがままに、『ハイ』をドキドキして待った。

「・・・ハイ!」

真っ赤な夕焼けに、巡礼で見た吊橋が逆光で黒く沈み込んでいた。幻想的な景色に一同は感動し、カレンは、涙を流してシャッターを切っていた。

 夕食は、贅沢料理じゃないけどソウルフードだからと言って、地元で有名なカレー屋さんに寄った。そこで食べるのかと思ったら、ロゼさんは、私だけ誘って店に入った。

「尾瀬さんですね、出来てますよ!」

そう言えば、今朝立ち寄って、大きな鍋を置いて来たお店だった。

ズシリとしたお鍋からカレーのいい香りが漂って来た。

「知り合いなの?」

「ううん、この辺じゃあお鍋持って買いに来るのって常識なの!今日は大量だから、先に頼んでおいたんだよ。」

ローカルカルチャー、ソウルフードなんかを紹介する番組にも取り上げられていたそうだが、残念ながらその回は観逃していた。先に観ていれば、アニメの聖地巡礼しているような感動を味わえたのかも知れない。

マイクロバスの中をカレーの香りで一杯にして、尾瀬食品に向かった。


 カレーを食べて、ロゼさんが中学生の頃にお年玉数年分を貯めて買ったと言う天体望遠鏡で、木星、土星を見せてくれた。秋の星座は明るい星が無いので地味だと言うが、自宅付近は大都市創成の灯りで見える星が少ないので、充分迫力があったし、神話の主神ゼウスの星、木星が鎮座する光景に威厳を感じるには丁度良かった気がした。のんびり星を眺めていると、少し冷えて来たので、部屋に入って明日に備えた。


 翌朝、聖地巡礼とスイーツ、グルメを堪能した私達はJRで家に帰る。充実したツアーだったけど、舌と胃袋が、往路を拒否していたが、明日から学校なので、あきらめて駅に送ってもらった。名残惜しいけど特急に揺られることにした。

こんにちは、グレープヒヤシンスです。

3作目に書いている『バックトゥザ令和』の主人公が、四月一日と、書いてワタヌキといいます。4月1日は、ワタヌキの日記念で、5人姉弟妹もコラボしてみます。金曜日じゃないけど、1話投稿予定です!

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