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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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変身

「ちょっと魅力的だけど、いろは姉ちゃんが法律上の義姉ほんとうのおねえちゃんになれなくなっちゃうから嫌よ!」

学校祭を終えてリビングで寛ぎながら芒と雨がスマホを弄りながら真剣な表情で話しをしていた。雨のが拒否したのは、芒が見つけたスマホのラノベで『バックトゥザ令和』を読んでの芒の感想についてだった。

令和の高校生が半世紀前の昭和にタイムスリップするお話で、主人公の英太くんは、昭和では女の子エイミーこと、英美ちゃんになっていた。

「もみじもキッチリこれ位変身するといいのにね!」

芒の呑気な言葉への雨の反応らしい。流石にそうはなりたく無いと思ったし、雨が反対意見なのは嬉しいけど、理由がいろはって所がちょっと微妙だな。ただ物語としては、先が気になってしまったので、自分のスマホにブックマークしておいた。具体的な地名が出てくるので、カレンが好きな聖地巡礼に丁度良いかもしれない。毎週水曜日の更新との事。

桐は芒に同意して、

「プールとか温泉とか困らなくなっていいと思うんだけどな。」

なんて言ってるけど、松太郎で居ればいい話しで、本来困る事でもない筈なんだけどな。変身のことはファンタジーなので、適当に話に乗って、

「じゃあ、いろはが男子に変身してくれる?」

そう言うと、いろはは真っ赤になって、金魚のようにパクパクしていた。『もみじの親友』設定になる前の、シャイないろはを久しぶりに見られた。

「私はきっと、ナイスガイね!」

カレンが力こぶを盛り上げるポーズで変身する気満々。

「私が、イケメンになって娶ってあげてもいいわよ!」

美月が対抗の名乗りをあげた。これってモテてるのかな?

会話が出来るまでに落ち着いたいろはに、

「いろは姉ちゃん、もちろん男の子になって、もみじ姉ちゃんのお婿さんよね?」

いろはが頷くと、雨はご機嫌な様子で、私の手を引いて、押入れ部屋に向かった。姉妹達の衣替え用の保管場所になっているスペースで、いつの間にか『松太郎』ラベルの衣装ケースが出来ていた。

お洋服いっぱいの姉妹達はオフシーズンの物をここに収納しているが、松太郎の着替えは、部屋の収納で充分だったので、ここは必要無かったが、いつの間にか消えていたメンズ服が発掘出来た。雨の頼みでリビングに運ぶと、

「イケメンコーデ対決!もみじ姉ちゃんとデートする時のコーデ考えてね!」

3人は着替えを選び、部屋に戻った。

「では、こちらも支度をしてましょうか。」

委員長の支持で、ホワイトボードを出して来た。元が会社なので、会議用だったのかな?小さい頃に落書きや、マグネットで遊んでいたヤツだ。

委員長は、皆んなにマグネットを3つずつ配ると、踏み台に乗って、『波太郎』『蓮次郎』『月三郎』と書いた。以呂波の波、カレンの蓮、美月の月だろう。着替えの済んだ3人にもマグネットを配り、ルールの説明が始まった。

「ひとりに3個でもいいし、2個1個でも、1個ずつでもいいから、気に入ったコーデに投票してね!ただし、出場者は、自分以外の2人に入れるんだよ。で、得票数で勝負が決まるんだけど、1位2位か、2位3位が同点の時は、夢四郎の優勝だよ!」

 変身した3人は、なかなかオシャレ少年だった。元々松太郎はオシャレに興味がある訳では無かったが、可笑しな格好は姉達が許さないし、洋服を選ぶ時は大抵雨がアドバイスしてくれたので、僕の衣装ケースは、普通の男子のタンスよりはかなり充実してるんじゃないかな?

「メンズ○□○□みたいね!ショタが着るより素敵じゃないかしら?」

桜が絶賛した。

白いレジ袋に投票されたマグネットを姉達が持って、玉入れの結果発表のように、一つずつ、ホワイトボードに貼っていく。

「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく、しーち、はーち!」

桜と桐がカラになったレジ袋を振った。

波太郎の袋を持っていた芒が11個目を貼った頃、チャイムが鳴った。特別ルールでタナボタ優勝した夢愛だった。

委員長がコーデ対決の経緯と特別ルールで夢四郎が優勝した事を伝え、優勝賞品を贈呈した。

「お風呂入って、これに着替えでおいで!」

お風呂から上がってきた夢四郎は優勝賞品の松太郎(メンズ)のパジャマを着ていた。ダブダブで一層幼く見えたが、優勝の副賞が『彼女の部屋にお泊り権』との事。大富豪が始まる気配が無い理由が理解出来た。終い湯を浴びて、風呂掃除をして出てくると、皆んな、部屋に戻っていてリビングは空っぽ。部屋に入ると、夢四郎は、既に寝息を立てていた。『ベッドで迫られたらどうしよう?』なんて心配していた事が恥ずかしくなって隣に潜り込んだ。眠ったままの夢四郎が抱き付いてきた。華奢な身体で何処にそんなパワーを宿しているのか解らないが、寝技の何とか固めなのか、身動きが取れない。まあ、眠るだけだから、拘束状態でも気にしなきゃいいかな?脱出をあきらめて目を閉じると、唇に柔らかな感触を覚えた。しばらく続いて、その感覚が耳元に移動した。

「ゴメン、寝たふりしてたよ。もう、ホントに寝るね、おやすみ。」

寝たふりなのかホントなのか解らないが、そのまま反応はなくなった。

 口の中の違和感で目を覚ました。瞼を開けると視界は夢四郎の顔で埋まっていた。昨夜は防いだ舌の侵入だったが、睡眠中の緩んだ顎の筋肉は、夢四郎の侵入を防ぐ気は無かったらしい。私が起きたのに気付くと、チュっと大きな音で離れて、

「ごちそうさま、おはよ、もみじ!」

嬉しそうに抱き付いた。

夢愛は、ずっと寝たふりで一睡もしていなかったらしく、振替でお休みなのでそのままベッド。私は朝食とお弁当の支度の時間だったので、キッチンに降りた。

珍しく、委員長がエプロン姿でおタマを持っていた。昨夜のうちに下ごしらえ済ませていたので、お弁当は詰めるだけだし、シャケの切り身は焼いてあるので、お味噌汁が委員長の制作だな。

「おはよ、委員長!」

「おはよ、もみじ!夢四郎のキスの味はどうだったの?」

「えっ?委員長知ってたの?」

「そうそう、もうすぐ任期終わるから、委員長は止めてね、小雪って呼んでよ!」

キスの話についてはスルーだった。

「じゃあ、小雪さん!」

「嫌、そうじゃなく、こ・ゆ・き!」

「小雪ちゃんじゃ駄目?」

全く聞こえないような素振りで、

「じゃあ、朝の挨拶からやり直しね!おはよ、もみじ!」

「おはよ、小雪!」

「夢四郎のキスの味はどうだったの?」

「・・・んと、」

返事に詰まっていると、

「おはよ、小雪、もみじ!」

「おはようございます、小雪さん、もみじ!」

ん?今、カレンは『小雪』、いろはは『小雪さん』って呼んだよね?振替休日でお寝坊の雨は、以前から『小雪ちゃん』だったし、夢愛は『後藤さん』から最近『小雪ちゃん』になってたよね。姉達の『小雪先輩』もそのまま。先輩を下の名前で呼ぶだけでも違和感があるのに、呼び捨てって抵抗があるよね。本人希望だから、まあ仕方がないか。雨の下にもう一人妹が出来たと思えば、気にならないかな?小雪と目が合うと、

「今、失礼な妄想しなかった?」

「いや、べ、別に・・・もう、着替えなきゃ!!」

松太郎に変身、じゃなく、松太郎に戻る為、部屋に戻った。

 ホントに眠った様子の夢愛を起こさないようそっと着替えると、カバンを取りにいろはが、帰って来た。

「おはよ、しょうくん!」

いつもと違う表情で近付いて来た。夢四郎のキスを知っていて怒っているんだろうか?ちょっと硬直しているといろはの閉じた目が、ピントが合わない位の距離に近付き、唇に柔らかな感触が伝わった。支度を済ませ、そっと部屋を出た。

松太郎でいる時でのファーストキス?ニューヨークでカレンがしてきたのは向こうのルールでの挨拶だからノーカンとすれば、松太郎としては初めてだった。

余韻に浸る間もなく、学校に行かなくてはならないのはちょっと残念だな。


こんにちは、グレープヒヤシンスです! 

『バックトゥザ令和』は毎週水曜日の更新です。

良かったら、そちらも宜しくお願いいたします。

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