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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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売上と労力

 タピオカミルクティーは、予想以上の売れ行きで、朝空いた容器に浸けた分が間に合うか心配になって来た。『一晩浸ける』ってレシピにあったけど、一晩って何時間だろう?朝8時頃に浸けたタピオカが午後使えたら間に合うんだけどな。

 戦場のようなキッチンもお昼には少し楽になった。ヤキソバとか、食事になる物に流れてくれたようだ。交代でおにぎりに齧りついた。落ち着く間もなく午後の波が押し寄せて来た。中等部の生徒が目立つようになって来て、雨が友達をいっぱい引き連れてやって来たようだ。

フロアに居たいろはが、

「しょう君、雨ちゃんが来てくれたよ!」

既にタピオカは味わった後で、キッチンを見学しに来たらしい。

「夏休みに、渋谷で飲んだのより美味しかったです!」

友達の一人が感動していた。他のコも始めて飲んだらしいが、ずいぶん気に入ってくれたみたいだ。修羅場と化したキッチンを見て更に感動していたようだった。

「しょう君、コッチお願い!」

芒の声だった、普段なら『ショタ』なのにどうしたんだろう?樽のような大きな容器の水を捨てる作業で力仕事だった。『どっこいしょ!』雨達から、拍手が巻き起こった。どうやら、雨の為に、素敵なお兄さんを演出してくれたようだ。きっと『貸し』だと言って、あとから何か要求するんだろうな。

 朝浸しておいたタピオカが使い物になるのが解り、閉店までなんとか提供を続けられた。クタクタになりながら、明日の仕込みをして作業終了。用意していた300杯を大きく上回り、500を少しオーバーした。明日の分を使っているので、昼の時点で、容器や材料を追加発注していたので、明日も500オーバーを目指す。原価は150円程で売値が500円だから、350円の利益。2日で千杯なら35万!山分けかな?いや、学校に入るのかな?

「今年は震災基金に寄付するんだよ、お城の復興だって。年によっては、部活の活動費になる事もあったそうだよ。」

いつの間にか現れた委員長がタピオカを吸いながら解説してくれた。


 家に戻ってもクタクタのまま、シャワーだけで、ベッドに潜り込んだ。姉達も流石に疲れていたようで、早々にダウンしていたらしい。

 翌日も早く起きて、タピオカと闘う。昨日は黒服でフロアに居た男子も、キッチンに増員されていた。桜がやって来て、

「ショタ、今日はどっちがいい?」

千葉達も来るし、フロアもいいかな?いや、待てよ!フロアがいいって言ったら、黒服じゃなくて、メイド服の可能性が高いな。

「いや、仕事も慣れてきたし、あの2人即戦力じゃ無いでしょ?」

キッチン残留を宣言すると、姉達はガッカリ。案の定、用意してくれていたのはメイド服だった。


 休憩を交代で取って、他のクラスの展示や、文化部の展示を見てきた。部活の展示は、かなり本格的で、素人目では判断出来ないけど、素晴らしいって事は、なんとなく理解出来た。

 タピオカカフェに戻ると、柔道部の猛者達と夢愛がストローに吸い付いていた。なかなかの好評で、夢愛は自分達の学校祭で真似したいと言うので、山岸さんも誘ってキッチンを案内した。作業は大変たけど、難しい事はないので、きっと大丈夫だろう。

 閉店までしっかり働いて、用意した分をしっかり売り切った。2日合わせて1100杯、38万5千円の儲け。他の経費を差し引いても、かなりの黒字だろう。

 閉会式、委員長の挨拶を聞いてお開き。2日目で慣れたせいか、昨日よりは体力が残っていた。増員になった2人のお陰かな?

「打ち上げだよ!」

桜の号令で、取っておいた皆んなの分のタピオカミルクティーで乾杯した。

「私達、こんなに美味しい物を出していたんだ!」

まだ味見していなかったコもいたようで、またまた大盛況。ブームが過ぎていても、商売になりそうだと、来年もコレで行こうと随分と長い約束をして、それぞれ下校していった。


 教室の原状回復を終えて下校。芒が紙袋を押し付けてきた。袋を覗くとタピオカがゴッソリ入っていた。売れ残りのタピオカで、学校祭のスケールで考えると微々たる量に思えたが落ち着いて考えると、何十杯分にはなりそうだ。紅茶の茶葉は職員室に寄付して、牛乳はキチンと使い切ったそうだ。この紙袋が僕の手に渡ったと言うことは、ウチで作れって事だよね。勝手に貰っていいのかな?って思ったけど、企画から準備まで姉達がやっていたし、フロアはいろは、美月、カレンが仕切って、キッチンは僕等、姉弟で回していたので、まあそれ位の優遇は許されるかな?太いストローは別途仕入れる必要がありそうだ。


 家に帰ると、桐がエクセルで何か作っていた。プリントアウトしたのは、タピオカカフェの収支報告だった。

生徒会から支給の2万円、クラスの30人から3千円ずつ集めた9万円が元手。調理実習で使わないような巨大容器等のレンタル費用が3万弱、材料費がカップやストローも含め9万5千円、店舗の飾り付けに2万ちょっと、衣装代が2万ちょっと。ん?元手を超えてるけど大丈夫だったの?材料費の支払いが後払いだったので、間に合ったそうだ。あと不思議なのが、2万ちょっとで黒服2着とメイド服20着近くって安過ぎじゃ無い?

「ああ、黒服は新創成のコスプレショップで売れ残りを1着500円で買ってきたの!メイド服は生地とファスナーとかのパーツ代だけで、手芸部に頼んで仕立てて貰ったの、前に小雪先輩がフリフリのエプロン持って来てたでしょ?あれが手芸部の制作って判ったから頼んじゃったの!割烹着は、ゲキ部(えんげきぶ)に借りてきたし。」

自分達の展示とかで忙しかったんじゃないのかな?まあ、無事に完成してタピオカカフェも大盛況だったから、気にしないでおこう。クラスの皆んなに三千円返金、経費を引いた295,018円が寄付出来る。確か振込手数料もかからない筈だ。お城の瓦、何枚買えるかな?2日間あんなに頑張って、1人1万円弱って、商売って甘くないんだね。学校祭だから家賃も光熱費も人件費も掛かって無いからね。後で聞いた話、他のクラスは生徒会から支給された金額を割り込むのがほとんどで、ウチのクラスの稼ぎはダントツで、ベテランの先生の記憶では、クラスで集めたお金を返しても尚、黒字なのは過去に例がないそうだ。手芸部の協力も大きいと思うが、部員全部分のタピオカと、モデルを引き受けることでウィンウィンとの事。

「まさか、そのモデルって私じゃ無いよね?」

「あれ?モデルしたかったの?残念だけど、他校の生徒も来るイベントだから、もみじは遠慮してね。」

まるで私が出たいって言ったような回答だった。まあ、結果としてモデルは回避出来ていたので気にしないでおこう。


 玄関のチャイムがなった。ドアホンのモニターには、誰も映っていなかったので、外を覗くと、委員長が倒れていた。小さな身体の体力を使い果たしたようだ。ここより遠い自宅迄は持たなかったかもしれないので、ウチをチョイスしたのは大正解だろう。ソファー迄運ぼうと思ったら、しっかりクリンチされて、離れなくなった。

「幸せそうに眠っているから、ベッドに寝かせたら?」

いろはが心配そうに言うので、とりあえず、私達のベッドに運んだ。まだ離れてくれないので、一緒に横になった。

「小雪ちゃん、もみじ姉ちゃん、ご飯だよ!」

ん、朝?いや、晩ごはんらしい。私もかなりのハードワークだったので、布団を被った瞬間に熟睡だったらしい。1時間も寝たのかな?一晩グッスリ眠ったような満足感で目を覚ました。委員長はまだ眠っていたが、クリンチほ解けていたのでそっとベッドから抜け出ようとしたが、また委員長のハグに捕まった。

「・・・ゆ・・き・ち・・。」

委員長が家で飼っている犬の名前を、呼びながら、頭をグシャグシャに撫でた。

「ペロペロしないと、思ったら諭吉(いぬ)じゃなくてもみじだったのね!」

目を覚まして、隣に松太郎(おとこ)が寝ていて、びっくりしないのかな?まあ、信用されてるって事なのかな?もしくは、もみじだから気にならないのかな?

 他のクラスのヤキソバを食べに行けなかったのが残念だったとキッチン組の姉達かがリクエストしたのだろう、ソースが焦げるいい匂いが立ち込めていた。ホール組だったいろは達が、腕を振るってた。発泡スチロールの容器を貰って来ていたらしく、学校祭の二次会みたいに、ヤキソバを楽しんだ。

ワイワイしながら、バタバタと寝オチでリタイアして来たので、充実の学校祭に幕を引いた。 

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