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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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男子力

「エクレア、美味しかったね!今度皆んなの分も買って行こうね。」

強引に話題を変ようとした。上手く行って、

「ケーキもきっと美味しいよ!」

エクレアの生地なのか、チョコの部分なのか、サクサクカリカリの食感が新鮮だった。評判のケーキ屋さんらしいので、姉達やいろはも知ってるかもね。

なんて話をしていると、バス停付近の明るい道で、

「ねえねえ、君たち!」

男が2人、正面から寄って来た。ナンパ?

「な、なんだ、花田かよ!」

中学の同級生で、野球部だったバッテリーの2人だった。

「い、妹ちゃん?」

「そうだけど、普通、彼女かって思わない?」

「だって、秋野じゃ無いから!」

いろは推しの雨はご機嫌で、

「妹の雨です、兄がお世話になっております。」

「おおお、お世話なんてしてないけど、今、急に、お世話したくなったよ!」

2人とも、それなりに人気者で、彼女がいてもおかしくない筈なのに、雨に舞い上がっているのも不思議だな。

「お兄様!妹さんを紹介して下さい!」

2人は最敬礼。

「そんな、チープなナンパ野郎に妹紹介する兄がいるかよ!」

「そそそ、そんなあ、お兄様!」

多分、高校では野球して無いんだろうな、いつもは真っ黒だったのに、かなり薄くなっていた。

「甲子園行けたら考えようかな?チートな高校球児ならあり得るかも。」

すがり付きそうな2人を無視して、家に向かった。

彼女に見られなかった雨は、更に密着して来た。

「ねえ、お兄ちゃん、『チープ』と『チート』掛けたのに、二人とも気付かなかったね!」

「ウケなかったギャグを解説されると恥ずかしさが増すよ!」

「えー!褒めたのに。立派なオヤジギャグだったよ。男子力低いって言ったけど、ギャグは立派なオッサンだね!」

これも褒めてんのかな?

「ねえ、少しくっ付き過ぎじゃ無い?」

「妹の特権を皆んなに譲ったから、ご褒美なの!」

えっ?ちょっと、イヤメチャ嬉しいな!

「もみじ姉ちゃんの妹役は皆んなに貸してもいいけど、お兄ちゃんの妹は雨だけだからね!」

さっきの二人は論外としても、そのうち彼氏も出来るだろうし、いつかはお嫁さんになるんだよね。ちょっと不思議な気分になった。


「しょうくんお帰り!」

芒が玄関先まで出迎えてくれた。松太郎でいる時は『ショタ』なのに、なんか下心が有りそうだな。

「なんか、ヘンな虫がいるの!」

リビング行くと、桐といろはが新聞紙を丸めた武器で武装していた。

様子を聞くと、ゲジゲジらしい。ちなみに、普通は『ゲジゲジ』で通っているが、本名は『ゲジ』らしい、あっどうでもいいよね、そんなコト。ソファーを移動させると、モソモソ逃げ出した。結構高速なので、慌てて新聞紙の武器で成敗した。

「お兄ちゃん、頼りになるね!」

雨は、自慢げな表情で微笑んだ。


 一段落すると、桜は、

「これ、タンスみたいなスピーカーで聴ける?」

スマホを、昭和レトロの骨董オーディオに繋ぎたいそうだ。父さんの婿入り道具だったらしい。純粋なアナログ時代の物で、最上段には、レコードプレーヤーが鎮座している。針が無いので聴けないのが玉にキズ。当然、ブルートゥースなんて対応していない。

ブルートゥーススピーカーのトリセツとにらめっこ、『AUX出力』なる穴を発見、有線のイヤフォンを繋ぐと音楽が聴こえたので、アンプの入力端子に繋いでみた。いかにも後付けって感じのCDプレーヤーが繋がっていた隣の端子なので、切り換えのダイヤルをCDの隣、右に回し切ると、家具調のスピーカーから重低音が響いた。

「たまには、男手も必要ね!」

桜は嬉しそうにスマホを弄って、

「芒も松太郎(・・・)に用事あるみたいだよ!」

いつもの『もみじ』は家政婦で、『松太郎』は便利屋か用務員のおじさんってとこだな。

芒の部屋では、LED照明のリモコンが効かなくなっていた。電池を替えてもダメで壁のスイッチで我慢していたそうだ。試しに私の・・・イヤ、僕の部屋の同じ機種のリモコンを操作するとちゃんと反応した。またまたトリセツと格闘。チャンネルってなんだ?自分の部屋のリモコンはチャンネル1、他の部屋も1で、芒の部屋だけが、2だった。試しに1にしてみると、あっさり解決!

「あら、早く相談すれば良かったわ!」

明るさを調整して、ちょっと暗めになると、

「うん、いい感じ!」

のんびりボーっとするのに、全灯は明る過ぎて落ち着かないそうだ。このパターンなら桐も何か用事を抱えていそうなので、御用聞きに行った。

「やっと来たのね!扇風機が壊れたのよ。」

動かないのを確かめてから自分の部屋に持ち帰って試した。壊れていないようで、僕の部屋ではちゃんと回っていた。

桐の部屋に戻り、ベッドの下から伸びたテーブルタップに机の上にあったスマホの充電器を繋ぐとランプは点かなかった。テーブルタップを引っ張るとスルスルとなんの抵抗もなくプラグが現れた。

この家はかなり昔の造りなので、コンセントが少なく、各部屋1箇所ずつ。テーブルタップを2つずつで対応している。以前はしょっちゅうブレーカーを飛ばしていたが、数年前にアンペア数を上げてそれは解決していた。

 ベッドをズラしてコンセントを探ると、カレンが探していた漫画を発掘。次はピンクのハンカチかな?拾って見たらパンツだった。雨だってとっくに卒業した、いかにも『女児』ってタイプだった。

「何年埋もれてたんだ?てか、何年掃除してないんだよ!」

「イヤ、それ、こゆ・・・何でもない!」

おヘソの辺りのくまちゃんのプリントを見ながら、

「流石に穿かないでしょ?」

ゴミ箱行きと思ったが、桐が途中で言葉を飲み込んだ、その先が思い浮かんでしまった。

『こゆ・・・』って『小雪先輩』って言いそうになったんじゃ無いか?

「委員長がコレって、似合い過ぎでしょ!」

プっと吹き出すと、桐のビンタが飛んで来た、

「スケベ、ヘンタイ、ロリコン!」

委員長のパンツをひったくった。理不尽なお仕置きだけど、珍しく男として扱われたので、ちょっと嬉しかった。

「ビンタ喰らってニヤニヤってやっぱりヘンタイ?」

こうなっては手の付けようが無いので、急いでテーブルタップを繋いて、他の埋蔵品が無いか確認してベッドを戻して退散した。


 キッチンに逃げ込むと、いろはが晩ごはんの支度をしていた。

「あっ!しょうくん、片付けの時にね、換気扇のフィルターと羽根外してくれる?」

「いいけど、何で急に?」

「しょうくんが、うちに居るのって珍しいでしょ?もみじは、いつもミニ穿いてるから、そんな仕事頼めないしねえ。」

そのミニっていろはが選んでるんでしょ?


 食後、食器洗いと一緒に分解した換気扇のパーツも洗った。ピカピカのフィルターをセットしていると、桐が、

「今日は頑張ったから、お風呂、お先にどうぞ。」

お風呂洗い免除って事は、扇風機の件のご褒美と、女児パンツのヘンタイ事件を赦してくれた事だろうな。


 早速入浴。シャンプーしていると、

「お兄ちゃん、背中流して上げる!」

雨の声がして、振り返るとバスタオルを巻いた雨が立っていた。普段はもみじ姉と妹なので、フルオープン。すっかり慣れてしまったので全裸は見慣れていたのに、優愛や委員長は追い越した膨らみを包んだバスタオルを見ると改めて、兄、妹の関係を実感。妹に対しては相応しくない感情が湧き上がる。タオルで前を隠し、反応を気付かれないようにして、背中を預けた。いつもなら交代するところ、

「じゃあ、ごゆっくり!」

サッと出て行った。お湯に浸かって一息入れて平常心を取り戻してから上がった。

自分で用意したメンズのパジャマとトランスが消え、もみじ用のパジャマと下着になっていた。姉達の仕業だろう。まあ今更驚く事も無いな。意識して『僕』って言うより、『私』の方が楽だしね。

キッチンで麦茶を注いでいると、雨が背中からハグして来て、

「あのね、もみじ姉ちゃんが、お友達とお泊まりはいいけど、お兄ちゃんが彼女とお泊まりするのは、雨がまだ許しませんからね。」

耳元で囁いた。


 久しぶりに学校以外で、松太郎に変身した・・・イヤイヤ、松太郎に戻ったのは新鮮だったし、男手を感謝して貰えて、いい休日だったな。でも、もみじの時だって言ってくれてもいいのにな。

 リビングでは浮かない様子のカレンがいて、

「私、松太郎にお願いすること見つけられなかった。」

どう対処すべきか解らずにしていると、

「さあ、大富豪の時間だよ!」

桜の掛け声でカレンは一気に元気を、取り戻した。ルールは昨日と同じ。白熱の闘いの結果、大富豪は、雨。私は連日のド貧民で雨の部屋でお泊まり。

「こうなるんだったら、お兄ちゃんのままにしておけば良かったな。」

「それを聞いたら、松太郎きっと喜ぶけど、雨が大人に成りすぎて一緒のベッドはムリって言うんじゃ無いかな?」

松太郎とは別人ともみじとして答えた。

「寂しいけど嬉しい!」

更にハグをきつくして、程なく幸せそうな寝顔を見せてくれた。

こんにちは!グレープヒヤシンスです!

毎週金曜日に引っ越します!

今後ともよろしくお願いいたします。

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