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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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2学期スタート

 一般的には、8月いっぱいまでが夏休みだけど、ここでは、お盆が終わるとすぐに2学期が始まってしまう。その代わり、冬休みが長いけれど、全国ニュースで『夏休み終盤』とか『宿題も追い込み』なんて話が出ると、凄く損をした気分になる。

 大騒ぎに明け暮れた1学期だったが、平和な夏休みを過ごして、リフレッシュ出来たような気がする。2学期のイベントと言えば、先ずは学校祭の準備かな?去年までは女子高だったので、セキュリティの関係で招待状が無ければ入られなかったそうだ。一応は共学になったものの、会長が犠牲になったあの事件や、()市長の孫が乗り込んできた件があるので、フリーでの来校は見送りになりそうだ。委員長は、ある程度ルールを緩めて、色んな人に観てもらう事を考えていたようだが、調整に難航しているようだ。

 カレンも一緒に登校、職員室に案内すると教頭先生が迎えてくれた。カレンを預けて教室へ。ホームルームの時間になって先生が登場。続いてカレンも登場した。うちにホームステイしているのは学校でも知っているので、同じクラスが便利だと気を使ってくれたんだろうな。地元では滅多に見ない金髪碧眼の美少女に女子もうっとりしていた。最近では外国人も珍しくは無いが、ほとんどがアジアからの観光客なので、カレンの存在感はかなり大きい。自己紹介で流暢な日本語を披露し、ヲタクをカミングアウト。背が高く、一見アスリート風の容姿から、『大型助っ人外国人選手』を期待した体育会系の部活のコは、ガッカリの様子を隠しきれていなかった。

 席替えをして出席番号順の姉妹弟(しまい)並びから解放された。『あきの』と『はなだ』では遠く離れていたが、クジ運次第で隣になれるかもしれない。ワクワクして発表を待った。結果は廊下側の1番前、さっき迄いろはが座っていた席だった。いろはの席は、窓側の真ん中あたり、距離としてはチョット離れた位だけど、普通にしていて視界に入れることが出来た元の席のほうが良かったな。隣はカレン、姉達も割と近くに集中していた。

「しょうくん!ねえ、しょうくん!」

あっ!呼ばれてた。カレンが不機嫌そうに机を人差し指でコツコツやっている。しばらく『もみじ』で過ごしていたから、松太郎でいる事を忘れていた。

「ゴメン、ボーっとしてた!」

「私が隣でガッカリされたら悲しいわ!好きなコが、同じクラスなだけでもラッキーでしょ?わたしなんか、太平洋挟んでたんだからね!」

そんなにガッカリしていた?ほぼ24時間一緒なんだから、それ以上望むのは欲張りって言われるのも理解出来るけど、その大部分は、『もみじ』でいる時なので、『松太郎』としては、それ程の高望みとは思えなかった。カレンが隣で不服な訳じゃないけど、いろはの隣と後が他に二人しかいない男子だった。そこにジェラシーってのも肝っ玉小さいかな?高校生になってからは、女子が飽和して麻痺してしまっているが、女子の香りとか、ポニーテールのうなじとかを楽しめる席を願って、席替えは大イベントだったっけ。そんな基準で第1希望の隣、第2希望の後が他の男子だって事がガッカリの原因だろうな。

ホームルームが終わると、カレンの周りに人垣が出来た。1学期の始まりの頃は、姉達の人垣に巻き込まれ、今度はカレンに巻き込まれている。人垣の隙間から見える窓側では、いろはが隣と後の男子と話をしていた。松太郎基準で言うと、彼等は今回のイベントの勝利者。人垣を強行突破出来ずに視界に入らないように、机に突っ伏した。


 休み時間が済んでテストが始まった。夏休みの宿題になっていた所が、そのまま出ているので、自力で宿題を片付けた人ならスラスラ解けるような問題だった。午前3つ、午後2つサクっと終了。どうやら、宿題をちゃんとやったかの確認だったらしい。


 放課後、長身の(多分)2年生がやってきて、カレンを捕まえた。羽織ったジャージには『籠球部』。少し遅れて『排球部』も登場。カレンは5フィート9インチって言ってたから、計算が合っていたら、175センチ位かな?俺より結構高いからきっとそれ位だろう。スカウトに来たと思われる二人も同じ位だった。カレンは視線で救出を求めた。なんとか割って入ると、2人の圧力がズッシリのし掛かった。大きい女子に上から見降ろされたり、プレッシャーを掛けられるのは、姉達で慣れっこなので、反撃するスキルは無いが、耐性はしっかり身に付いている。上手く躱すと、バレー部はあきらめた様子だったが、バスケ部はターゲットを姉達に替えた。

「あなた達、髪型一緒にしたら、余計紛らわしいじゃない!」

中等部でバスケ部だった姉達は、一緒に汗を流したチームメイトらしく、かなり親密な関係に見えた。そう言えば、入学当初もスカウトに来て、かなり食い下がっていたっけ。今回も思い切り粘って、練習試合で手を打った。土曜日にバスケ部VS花田家?で練習試合をするそうだ。負けたら入部とかってルールでは無いようで、1度プレイして、楽しさを思い出させる作戦らしい。

「ハンデあげるわ、弟くん入っていいわよ!」

「いや、義妹候補で姉妹チームで受けて立つわ!」

桐は勝手にいろはをメンバーに編成済み。俺的には有り難い、本職のバスケ部とはいえ、女子にキリキリ舞させられるかもしれないのは、出来れば避けたいな。接触もあるスポーツだから、触っちゃ不味いってのもあったりして、プレイに集中できないしね。

「私、フリースローだけは自身あるの!」

いろはも、その気らしい。

桜は、放課後から練習を始めると盛り上がり、芒は体育館の解放を調べていた。

「カレンが観に行った体育館、明日バスケの練習出来るよ。」

カレンは、大好きなマンガの舞台でバスケが出来ると興奮、元々身近にゴールが有るのは当たり前の環境で育っているので、ある程度は出来るだろう。取り敢えず、うちに帰って、トレーニングだと言うことになり、教室を出ようとすると、

「あなた達、まだ付き合っていたの?」

ちょくちょく、ストレートな冷やかしをしてくる、若林(わかばやし)美月(みづき)がまた弄って来た。

「もちろん!ご覧の通り!」

いつもは、内気でハッキリモノを言わないタイプのいろはだが、VS若林さんの時は何故か強く出る。いつもはここでノーサイドだが、

「明日はバスケの練習、応援に行ってあげます(・・・・)!」

若林さんが謎の行動に出た。断るのもおかしいので、放っておく事にした。


「ねえ、いろは、若林さんの時だけ態度が違うように見えるんだけど、何かあるの?」

帰り道、いろはに尋ねた。中等部の3年間で何か嫌な事でもあったのかと思っていたが、

「あのコ、松太郎狙いだから!私が『ただの幼馴染み』なんて言ったら、すぐにコクって来るよ!」

不機嫌そうにいろはが答えると、

「気づいてたんだね!ライバルが多くて大変だね!」

芒は嬉しそうにいろはに抱きついた。

「カレンや夢愛には寛容なのに、あのコには厳しいのね?」

桜の指摘に、いろはは、家に帰ってから話すと答えを渋っていた。

帰宅後、ダイニングに集まって紅茶を飲みながらいろはの話を聞いた。

「きっと私への嫌がらせなのよ!」

去年、中等部の3年生でも同じクラスだったそうで、バレンタインの時に、『本命』だとチョコレートを渡されたそうだ、いろはは、冗談だと思っていたが、若林さんは本気らしく、男性には嫌悪感と恐怖心しか無いと力説、いろはが丁寧に断るとしばらく学校に来なかったそうだ。

「女の子が好きなら、いろはに、振られたなら姉ちゃん達の誰かに流れるのが普通じゃ無い?何で松太郎なの?」

不思議なので素直に聞いてみた。

「だから嫌がらせだと思うの。」

姉達もその読みに同意、

「カレンも夢愛も惨敗だから、新たなチャレンジャーで面白くなると思ったけど、そう言う事なら、応援()しないよ。」

桜の『応援()』がちょっと気になるけど、今のところ実害も無いので放っておこう。

姉達はカレンといろはを誘ってストレッチをして倉庫でボールを突いて、感触を取り戻していた。あんなに楽しそうにしているのなら、バスケ部に入ったらいいのにと思いながら、夕食の支度に取り掛かった。


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